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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第三章 夜半の目醒めに

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21 アイツら、ふざけたコンビには、お似合い




          (3)




「――な、何だって?」


 と、怪訝な顔で声をあげたのは、キム・テヤンだった。

 同時に、


 ――ジュ、ワァァッ……!!


 と、鉄板から、香ばしい音がした。

 場面は、変わってのこと――

 時間は少しさかのぼるのが、ソウル市内の、キム・テヤンの屋台にて。

 困難の渦中にあるパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりとは違い、同じSPY探偵団のカン・ロウンとキム・テヤンたちは、呑気なことに、屋台で酒などを飲んでいた。

 説明はさておき、先のキム・テヤンの言葉に、

「ああ……? ちょっと、その、【Xパラダイス】っていうのを、調べようとしたんだがね……、それが、何ひとつとして、情報が、引っかかる気配がないんだ」

 と、リーダーことカン・ロウンが、丸サングラスに、焼酎の入ったグラスを浮かべながら答えた。

「何だ? わざわざ、調べてみたのかよ? アイツらが、行った場所の、」

「まあ、少し、気になってな……。そもそも、『どこにあるのか分からない島に行く』って時点で、本来は、めておくべきだったんだろうが……」

「けっ……!! 別に、アイツら、ふざけたコンビには、お似合いじゃねぇか」

「まあ、そう、言ってやるなよ」

 舌打ちするキム・テヤンに、カン・ロウンが言う。


 次に、キム・テヤンが、何か屋台の作業をしながら、

「それで? 心配でも、してやってんのか? アイツらを」

「そういうわけでも、ないが……、まあ、いちおう……、仲間のことは気にかけておくべきだろう。リーダーとして」

「けっ、」

 と、舌打ちを相づちにして、

「それに……、その、【どこにあるのか分からない謎の島】なんていうのは……、本来、我々が興味を持つべき対象でもあるしな」

「まあ、なぁ……」

 と、カン・ロウンの答えに、キム・テヤンが手を止めた。


 少しの、間をおいて。

 キム・テヤンは、酒の入ったグラスを手にして、

「そうすると? 俺も、気になることがあるんだが? ロウン」

「何だい?」

 と、カン・ロウンも聞き返しながら、グラスを手にする。

 それに合わせるようにして、キム・テヤンが話を続けるに、

「“アイツら”が――、変態趣味のソユンのヤツと、鈍感なヨンファのガキが、よぅ? 所在不明の、訳の分からん島に行くことに、抵抗が無いのは分かる」

「うむ……」

 と、カン・ロウンが、器に口をつけながら相槌して、続きを聞く。

「だが、な……? “あいつら”の他にも、招待された人間ってのは……、何人も、いるんだろ? そいつらは、何か怪しいとかも、思わなかった――、ってことになんのか?」

 との、キム・テヤンの問いに、

「……」

 と、丸サングラスの、カン・ロウンが沈黙した。


 まあ、普通に考えても、そうだろう。

 “詳細はおろか、場所すら不明”などといった島に招待されるとは、普通の人間であれば、少しくらいは、何かしら怪しむだろう。

 しかしながら、現に、この【Xパラダイス】なる島には、パク・ソユンとドン・ヨンファたちの他にも、ゆうに100人か200人を超える人間が招待されていた。

 そして、その全ての者たちが、とくに何かを怪しむ様子もなく、島を訪れていたのだという。

 まるで、リゾートにでも行くかのように。


 そんなふうに思考しながら、カン・ロウンが、

「それ、とも……? ソユンから見せてもらったものの他に、関係者以外には……、何か、秘匿されている情報があるのか?」

「何だ? 会員制の、秘密の社交クラブ的なヤツか?」

「まあ、そういう感じの」

「はぁ? それで、アイツらも、俺たちに必要最低限の情報しか、教えてくれなかったってわけか?」

「まあ、そういう“可能性““が、あるんじゃないか――? という程度の話だ。半分は、適当に、聞いてみただけだが」

「けっ、適当なら、聞いてくんなよ。それに、もし、何か秘匿されているような情報があるとしても、よ? アイツら、ロクデナシどもが、律儀にそれを守るか?」

「確かに……。まあ、それはそれで、問題だが……」

 キム・テヤンが、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりをディスりつつ、カン・ロウンも、そこには納得してしまう。

 つまり、いま島にいるパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、口が軽い人間というわけである。


 また、キム・テヤンが話す。

「そういうわけで、だ――、この謎の島に、【何か秘匿されている情報】ってのがあると仮定して……、その、【何か俺たちが調査すべき事件の匂いがするもの】があるとなれば……、“アイツら”は、それを、包み隠さず、その情報を話してくるだろ?」

「まあ、そう、だろうな……」

 と、カン・ロウンの丸サングラスが、光る。

 キム・テヤンが続けて、

「――だが、今回、“それ”はなかったわけだ」

「うむ」

 と、カン・ロウンが、頷きながら続けて、

「――と、いうことは? “招待客が知り得る情報”ってのは、やはり、【あれ】だけなのか?」

「そうだろうな。【謎の島】の、ままだ……」

「う、む……? そう、すると……? あんな、限定的な情報にもかかわらず、【正体不明の謎の島への招待】に、誰もが疑うことなく訪れた――、その、【謎】だけが、残るわけか……」

 と、整理しながら話した。


 また、そこへ、

「もしかすると、よぅ? ロウン、」

 と、キム・テヤンが切り出す。

「う、ん――?」

 少し首を傾げながら、丸サングラスのカン・ロウンが聞くと、

「何か、サブリミナルか、催眠的なナニカ――、という可能性は、ないか?」

「【催眠的なナニカ】、か……。まあ、その可能性も、無いとは言えないな」

 と、ここで、【サブリミナル】や【催眠】との、やや胡散くさい言葉が並んだ。

 まあ、彼らが今まで調べてきた案件の中には、【そのような力】が利用されたケースも珍しくなかったからなのだろう。


 キム・テヤンが、その仮説で続けて、

「まあ、あくまで、可能性なんだが……、この招待状に、【サブリミナルや催眠的なナニカの力】があるとすれば……、ソユンとヨンファのヤツらや、他の招待された連中ってが、何も疑うことなく……、その、【Xパラダイス】ってとこにノコノコと行ったってこととも……、説明が、つかねぇか?」

「まあ、そうだな……」

 カン・ロウンが頷く。

 どこか、【何か】が、“引っかかる”ような気がしながら。

 こんどは、そのカン・ロウンが、

「しかし、そうすると……? テヤン?」

「ああ?」

「もし、その、【サブリミナルや催眠的な力】が、招待客に“かけられている”とすると……、この、【Xパラダイス】に招待した【主催者】というのは……、いったい? 何が、【目的】なんだろうな?」

 と、問いを投げかけた。

 催眠的な力で、少なくない招待客を島へと招いた目的――

 今回の、核心的な【謎】のひとつだろう。


「……」

 キム・テヤンが無言になって、少し考えこむ。

 少しの間を置くものの、

「さ、あ……?」

 と、キム・テヤンは、“何かそれらしい答え”が思い浮かばない。

 そのまま、キム・テヤンは続けて、

「そんなもん、俺に聞かれても、分かるわけねぇだろ……」

「確かに……、そうだな」

 と、カン・ロウンが納得しつつ、

「とりあえず、だ――、テヤン? この、【Xパラダイス】に関しては、何か調べてみないか? こっちでも」

「ああ”ん? また、調べるのかよ?」

「ああ……。まあ、何も起きてはいないだろう――、とは思うが……、念のため」

「はぁ、仕方ねぇな」

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