10 世界はそれを、二日酔いと呼ぶんだぜ
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そういうわけで、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりだが、下へ降りて、カジノのほうへと来ていた。
楽園の、カジノを思わせる凱旋門のような、エントランス。
ただ、そこから入った中には、何故にか――? フジツボのついた奇岩と、竹。
それから、流れ落ちるような藤と、赤・黄・青の鮮やかな原色の装花が添えられた、大きなモニュメントが佇んでいた。
そして、また相変わらず、
――ゆらぁっ……
と動く、生命工学機械じみた作品だったり、インテリアが、ところどころにあるのという。
「は、ぇぇ……」
まず、ドン・ヨンファが、何とも言えない声を漏らす。
その横で、
「ふぁ、ぁっ……」
と、パク・ソユンが、少し虚ろな目で、欠伸をする。
「何だい? 眠たいのかい? ソユン?」
「う、ん……? たぶん」
「何だよ? その、曖昧な答えは」
どちらともつかない答えのパク・ソユンに、ドン・ヨンファが、「やれやれ」と言ってみせる。
ちなみに、カジノへ行こうと誘ったのはパク・ソユンにも関わらず、このローテンションっぷりである。
それならば、部屋で、すこし昼寝でもしていたほうが良かったのかもしれない。
そう考えていると、
「はぁ、ぁ……」
と、ドン・ヨンファも“つられて”しまったのか、少し欠伸が出そうになる。
これは、眠気なのだろうか――?
眠気といわれれば、それに近いような感覚なのかもしれぬが、どこか、少し妙な感覚がするような気もしていた。
ただ、それ以上は気にもとめず、そのままカジノ内の散策を続ける。
「しかし、改めて考えると……、こんな謎の、どこか分からぬ島だ」
「……」
薄い反応のパク・ソユンの横、ドン・ヨンファがふたたび話す。
「謎の、趣味の悪いヒトガタ建築と――、その内部の、おおよそ趣味は良いとは思えないインテリアや作品群、と――」
「……」
「ただ、それ以外はね? ちゃんと、一流ホテルや国内外のカジノと、それほど変わりないというね」
「ああ? パ〇ダイスシティと、そんな変わらないかも」
とここで、ようやくパク・ソユンが口を開き、相槌する。
また、続けて、
「でもね、何か、現実と夢が半々に混じっているような……、その、何て、言うべきなのかな? まるで、頭と身体が、ね? 白昼夢に、半分溶け込んでいるかのような、奇妙な感覚がするんだけど……」
「ああ? その感覚なら、私なんか、しょっちゅう味わってるんだけど? 飲んだ次の日に」
「うん。世界はそれを、二日酔いと呼ぶんだぜ。てか? 飲みすぎなんだよ、ソユンは」
「そう?」
「うん。そう」
と、会話はそこで終わる。
ただ、何か、その“白昼夢に似た違和感”があることには違いなかった。
本来なら、“それ”が何であるか――? そこで、すこし考えるべきなのだろう。
ただ、そうはせずに、ふたりは変わらずにカジノ内の散策を続ける。