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【トランス島奇譚】  作者: 石田ヨネ
第二章 女体のヒトガタ建築の中で

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10 世界はそれを、二日酔いと呼ぶんだぜ



          (2)




 そういうわけで、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりだが、下へ降りて、カジノのほうへと来ていた。

 楽園の、カジノを思わせる、ラグジュアリーな凱旋門のエントランス。

 ただ、そこから入った中には、何故にか――? フジツボのついた奇岩と、竹。 

 それから、流れ落ちるような藤と、赤・黄・青の鮮やかな原色の装花が添えられた、大きなモニュメントが佇んでいるという。

 そして、また相変わらず、


 ――ゆらぁっ……


 と動く、生命工学機械じみた作品だったり、インテリアが、ところどころにあるという。

 まあ、“これ”は毎回、何なのか――?

 つっこむところを、スルーしつつ、

「は、ぇぇ……」

 まず、ドン・ヨンファが、感嘆とも何とも言えない声を漏らす。

 また、その横では、 

「ふぁ、ぁっ……」

 と、パク・ソユンが、少し虚ろな目で、欠伸あくびなどしていた。

「何だい? 眠たいのかい? ソユン?」

「う、ん……? たぶん」

「何だよ? たぶん、って……、その、曖昧な答えは」

 どちらともつかない答えのパク・ソユンに、ドン・ヨンファが、「やれやれ」と言う。

 ちなみに、カジノへ行こうと誘った当の本人は、このパク・ソユンであるにも関わらず、このローテンションっぷりである。

 それならば、部屋で、すこし昼寝でもしていたほうが良かったのかもしれない。


 そう考えていると、

「はぁ、ぁ……」

 と、ドン・ヨンファも“つられて”しまったのか、少し欠伸が出そうになる。

 これは、眠気なのだろうか――? 

 眠気といわれれば、それに近いような感覚なのかもしれない。

 ただ、どこか、すこしだけ妙な感覚がするような気もしていた。

 それが何なのか――? ここでは、それ以上は気にもとめず、そのままカジノ内の散策を続ける。

「しかし、改めて考えると……、こんな謎の、どこか分からぬ島だ」

「……」

 眠そうな目のパク・ソユンの横、ドン・ヨンファがふたたび話す。

「謎の、趣味の悪いヒトガタ建築と――、その内部の、およそ、趣味は良いとは思えないインテリアや作品群、と――」

「……」

「ただ、それ以外は、ね? ちゃんと、一流ホテルや国内外のカジノと、それほど変わりないというね」

「ああ? パ〇ダイスシティと、そんな変わらないかも」

 とここで、ようやくパク・ソユンが口を開き、相槌する。


 また、ドン・ヨンファが続けて、

「でも、ね――? 何か、現実と夢が、半々に混じっているような……、その、何て、言うべきなのかな? まるで、頭と身体が、ね? 白昼夢に、半分溶け込んでいるかのような、奇妙な感覚がするんだけど……」

「ああ? その感覚なら、私なんか、しょっちゅう味わってるんだけど? 飲んだ次の日に」

「うん。世界はそれを、二日酔いと呼ぶんだぜ。てか? 飲みすぎなんだよ、ソユンは」

「そう?」

「うん。そう」

 と、会話はそこで終わる。

 ただ、何か、その“白昼夢に似た違和感”があること――

 本来なら、“それ”が何であるのか――? そこで、すこし、考えるべきなのだろう。

 ただ、そうはせずに、ふたりは変わらずにカジノ内の散策を続ける。

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