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金魚『母の気持ち、この気持ち』

作者: 物語のあるリボン作家 / いろいと

物語のあるリボン作家『いろいと』です

私の作るリボンには、1つずつ名前と物語があります

手にとって下さった方が、楽しく笑顔で物語の続きを作っていってもらえるような、わくわくするリボンを作っています


関西を中心に、百貨店や各地マルシェイベントへ出店しております



小説は毎朝6時に投稿いたします

ぜひ、ご覧下さい♡



Instagramで、リボンの紹介や出店情報を載せておりますので、ご覧下さい

hhtps://www.instagram.com/iroit0

帰り道は、楽しくてしょうがない

それもそのはず、学校の授業が終わり帰れるのだから

寄り道はダメだって言うけれど、通り道にあるのだから仕方ない

大学生になった私は電車通学をしているのだが、世間で言う街の中心地を抜けて通っている

美味しそうなお店や、流行りのお店、洋服を見に行こうと思えば、ちょっと歩けば見に行ける

誘惑だらけの帰り道は、私にとって楽園のようなものだった



このまま家に帰らずに、ずっと遊んでいたい

そんな気持ちのまま、夜も遅くまで遊ぶことも多かった

『今日は、どこに行く?』

『カラオケ行こうよ♪』

駅に着くなり私達が向かったのはカラオケ

『とりあえず3時間!』

『いいねぇ♪』



毎日話す友達との会話も飽きることなく、今日も遅くまで遊びまくる

そんな事をして過ごす毎日は、今となってはいい思い出になっていると思う

しかし、目の前にいる娘を見ながら、そうはならないで欲しいなと思う私は、自分の母にごめんね、と言いに行かなければいけないかもしれない





学校から帰って来るなり、遊びに出掛けようとする娘

もちろん手には携帯電話

『ママ?何時まで遊んできてもいい?』

『そうねぇ。18時には帰ってきてくれると嬉しいな?』

『じゃあ、18時に帰ってくるね』

『何かあれば電話してよ?』

『分かってる!』

そう言って、中学2年生になる娘は遊びに出掛ける

携帯電話を手にするなんて、私が中学の頃には考えられない

時代は変わっていくものである



『さっ。買い物でも行くか』

夕飯の支度をするべく、私は車で買い物へと出掛ける

車の中では自分の好きな曲を聴いて、歌いながらスーパーへ向かう

『ママうるさい』

先日、娘に言われた言葉が頭をよぎる

娘を習い事に送る道中、ちょっとテンションを上げていたら、厳しい一言を頂いたのだった

とかいう娘もノリノリで聴いてたのは言わないでおこう



最近、ところどころ娘に自分を重ねて見てしまう

大きくなったなぁ。

しみじみと思う私は、自分の母を思い出す

母も同じように感じていたのだろうか

母になってみて分かることも多いのは確かだ

ふぅ。と一息ついた私は、右にハンドルを切っていく



·

夕飯の支度を終え、後は娘の帰りを待つばかり

ふと時計を見ると18時を回っている

どうしたのだろう。いつもなら、もう帰ってきていてもいいはず

いつもより遅いと感じる私は、娘の安否を気にするようになっていた

心配性の私は、良からぬ事態が起こるのではないか、今か今かと帰りを待つ

20分過ぎても帰ってこないし連絡がない



私は、居ても立っても居られず自転車で近くを探し回る

どこ?もしかして事故に巻き込まれた?

最悪の事を考えながら走る私は、目の前に見たことのある影に気が付く

近くに行くと聞き慣れた声がする



『あれ?ママどしたの?』

『どしたのじゃないよ!ママ心配して探してたの』

そう言って溢れる涙を拭う

『なんで泣くの』

『だって、ちゃんと元気で見つかったから良かったなって』

『・・・ごめん』

頬を伝う涙を拭きながら、私は娘を抱き締めた

娘を抱き締めながら私は思い出す

私の帰りが遅いと、鬼の形相で怒り狂う母の事を



『ふっ』

『笑ってんの?ママ』

『笑ってないよ。ふふ。ママもね、帰りが遅かった事があったんだけど、その時は、いつもおばあちゃん鬼になってたなぁって事を思い出してた』

『おばあちゃん怒るの?』

『めっちゃ怒ってた』

『ママは私には怒らないの?』

『んー。そうだなぁ。ママは怒るよりも心配で泣いちゃうもん』

そう言って娘の目を見ながら私はにっこり笑う

『でも、おばあちゃんが怒る理由も、ママになって分かったよ』

『え?じゃあ怒るの?』

『はは。ママは心配して泣いちゃうから、ちゃんと帰って来てね?』

『ごめんなさい』

『金魚』を付けている娘の頭をポンポンを軽く叩き、ゆっくりと家路へと帰る



·

きっと母も同じ気持ちだったのだろう

不安で心配で、しょうがなかったのだと

気持ちが抑えられず、ありったけの想いを私にぶつけていたのだろう

私の場合は、泣いてしまうくらい心配なのだが、母は怒りになって私に届けていたのだろう

その時は分からなくても、自分が母になって気が付く

昔の私に反省もしつつ、待ってくれていた母の気持ちを静かに受け入れた

今度会う時に〈ごめん〉て言ってみようかな、と

·

最後まで読んで下さり、ありがとうございます


色々なお話を書いておりますので、どうぞごゆっくりとしていってもらえると嬉しいです


また明日、6時にお会いしましょう♪

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