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プロローグ

 

 本当はかわいい子じゃないだろうか。


 新しい子が入ってきたと、教育員さんが連れてきた子は、いかくするように大きい目を尖らせるから、怖い顔になっていた。きっと不安に違いない。世界から切り離された山奥の箱庭に入れられて、わたしたちも、不安だ。


 みんなはその子を見るばかりで、こんな時に一目散に話し始めるフリージアは今日は風邪気味で元気がない。


「初めまして、わたしはしおん」


 手を出すと、その意味がわからないのか、のばらと紹介された女の子は、わたしの手をただ見ていた。


「手をつなぐんだよ」


 わたしは教育員さんと手をつないだ。それを見たのばらは、それの意味などわからないけど、しないと罰を受けるとでも言うように、恐る恐るわたしの指先に触れた。


 触れた手を握り返した。緊張からか、とても硬い。でもみずみずしく、柔らかい人間の子供の手だ。


「ねぇ、仲よくしよう。あなたはわたしたちの仲間だから」


 わたしたちにどんな力があるというのか。何もできない子どもで、見た目も外の世界の人と変わらないのに。どうしてこんな施設に入れられないといけないのか。わたしたちが魔女だなんて、そんなはずないのに。


 それでも、この施設で生まれた子、家族から引き裂かれてここにいる子、元いた場所から逃げるようにここに来た子、みんな境遇は違えど、ここがどんな場所でも、わたしたちが何であっても、わたしたちは仲間だ。


 のばらが握った手をおびえたように見るので手を離した。

 わたしは自分の髪から赤いリボンを外した。のばらの髪に触れる。体をびくりと震わせて、のばらはあきらかにおびえた顔をした。できるだけ彼女におびえられないように微笑んで、丁寧に、痛くならないようにそっと、彼女の髪にリボンを結んだ。


 赤いリボンはわたしの黒い髪よりものばらの金髪の方が似合ってる。この金髪も今はざりざりと汚れてかたまってるけど、きっと本当はさらさらと輝きながらながれるに違いない。

「かわいい」

ほろりと言葉がこぼれる。


 のばらはおそるおそるリボンに触れた。ようやく少しだけ怖い顔が和らいだ気がした。


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