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ⅩⅦ 遊びの予定と準備


 そこから、もうすこし話を詰めて、今後どうしたいのかみんなの意見を募ることになった。意見をのばらが集めて、部屋ごとに伝言をまわして、はないちもんめでそれを元に話し合いを行う。


「意見もはないちもんめの時にすればいいじゃない」

 多目的室の隅で、声を極力抑えているのに不機嫌とわかる声でガーベラが言った。

「みんなではないちもんめをするのに、おかしくないのは体育の自習時間でしょ。そんな長々とやれないと思うし。みんなではやっぱり無理だったから、意見を聞いておいた方が話し合いがしやすいし」


 体育の授業は魔女になってから先生が競技を決めて、簡単で楽しいあそびみたいな試合をみんなが自由に参加している。力が上がっているから本気になれないし、地道な練習も意味がないけど、からだは動かしたいというわたしたちに、先生が迎合してそういう風になった。その以前から体育には自由時間が授業の終わりに取られていたので、今回はその時間を使う。


「そうじゃなくても、普通に伝言もできるでしょ」

「口伝えだとどこかで意見が間違うかもしれないし、不透明でしょ。うまくいけば、そこからなにか思いつくこともあるかもしれないってことになったの」

 もうのばらのもとにみんな意見を言って部屋ごとに意見を回す段取りは組み終わっている。


「で、かべを壊せと」

 ガーベラは少しいらだってそう言った。


 彼女の魔法は身体強化系で物理的に肉体がとても強くなる。

 意見を回す段取りはC号室ののばらが意見を紙に書きそれをアポートでA号室のなでしこが取り寄せる。A号室とB号室の壁をガーベラが壁を壊し、紙を受け取り、すみれの魔法で壁を治す。紙は最終的にのばらが燃やして終わりだ。


「うん、上手くいくかは、ガーベラにかかってる」

 ぎっと睨まれる。まあ、仕方ない。彼女が魔法をいままでつかわなかったのも、言いたくなかったのもうなずける。


「のばらから珍しい魔法だって聞いたよ」

「うるさい。まぁ、いいわ、協力するって言ったのは私だから」

 ガーベラは嫌味にため息をついて眉間にしわを寄せながらそう言った。

「どうせ、みんな何もしないって意見だって目に見えてるけど。だとしても、意見を言えば考える。ついてきてくれる子も、もしかしたらいるかもしれない。私は、私を信じる」

「ガーベラ、たとえ、みんながついて行かなくても、ガーベラの意見が全部おかしいとは思ってないから」

「全然うれしくないけど」

ガーベラはもういいと言う風にわたしに手をふって追い払った。



 紙が自分たちの手元から消えて一時間ほどたったけど、おとさたはない。

「なんにも起きないね」

「たよりのないのはいいことよ。音もなかったしね」

「確かにしなかったね」

ガーベラは壁を壊したはずだけど静かだった。


「一応、昨日、音と治癒の検証はしたって聞いてるわ。それも知らなかったでしょ。よっぽど防音性が高いのよこの部屋。壁も厚いし機密性も高い」

「この寝室は特にがんじょうだよね」

壁もそうだけど扉もすごく重い。

「なにかあったらここに閉じ込めるつもりだったんでしょう。唯一のプライベートは、守られているけど、あっちからわからないってことは、こっちからもわからないってことだわ」

 この堅牢な部屋にはもう何年も住んでるのに、魔女になった日からひりひりとするような圧迫感がある。この圧迫感が解ける日は来るんだろうか。


「すみれの治癒魔法すごいよね。すみれが傷がついたって認識して、破損部分が少なければ、なんでも治癒できる。でもそれって治癒って言うより、修復、もっというと、時間を戻しているって感じじゃない?」

 国に戻っても魔法を使いたいとすみれは言っていたけど、確かにそんな魔法なら使いたいだろう。彼女は小さい村の権力者の孫だったときいている。医療機関がとぼしかったんだろう。

「修復はそうかもね。単純に優しい子だからなんでも感情移入しちゃって、治してあげたいって思うんでしょう。魔法の素質は本人の資質や適正って言うけど、もっと根本的には本人の願いだっていう話よ。……だから、時間は戻してない。時間に関する魔法は、大きくて使えないわ」


「大きくて使えない?」

「神様も人間には許さないレベルの魔法ってこと。神話やおとぎ話ではあるけどね。かきつばたならもっと詳しいのでしょうけど」

 以前のかきつばたのことを思い出した。かきつばたは、わたしになにを言いたかったんだろう。


「かきつばたってどう思う?」

「どう思うって、あぁ、聞いた? 彼女はないちもんめには参加しないって」

「それは知らなかった」

「柄じゃないし参加する方が不自然だからって、そもそも興味がなさそうだったけどね。たぶんジャスミンも足が悪いから、参加しないでしょう。しかたないわ。他に何か話があった?」


「かきつばたが自分は魔女じゃないって思われてもいいって言ってて。ほんとに魔女じゃないのかな?」

 本当に聞きたかったことはそんなことじゃないけど、自分でも何が聞きたかったかわからない。


「魔女でも、魔女でなくても証明できない。その主張に意味がないと思うわ」


 もし、魔女じゃなければとても気の毒な話だ。わたしたちは魔女じゃないことを、証明できない。もしそれが簡単にできるなら、わたしたちは一瞬で運命がきまってたし、それがごまかせるものなら、わたしたちの目標はそれになっていただろう。もし魔女じゃなくここに入れられたなら、わたしたちの心持ちはどうなっていたんだろう。もっと単純に施設や、親、いろんなもののせいにして、不遇をなげいて、その運命を呪ったに違いない。


「かきつばたって本当に魔女について詳しいよね」

「そういうふうに育てられたらしいから」

 みんなのここに入った境遇はみんなが知ってる。小さい子供は秘密が難しいものだし、こんな狭い空間でよく知らない人物っていうのはみんなが警戒するので、話すのが暗黙のルールみたいになっていた。


「魔女の産みの親だった人だっけ? 父親のいない子供を魔女の弟子にする土地で、無理やり子供と引き裂かれて、人間との戦争でその子供は亡くなって……。かきつばたは魔女かもしれないから殺されそうになったところをその女の人が誘拐したみたいな」

 口の重いかきつばたの境遇はたぶん一度聞いたきりだけど、記憶力がないわたしにしては意外と覚えていた。


「そうよ。しおんにしてはめずらしく覚えてたのね。ずっと逃げながら、かきつばたをつかってこの国に復讐するって魔女の事を勉強させられたって聞いたけど」

「復讐するつもりなのかな」

「まさか。かきつばたは頭がいいもの。そんな非現実的なことは考えないわ。それに、ここに来る時に魔女をかくまってたことで捕まりそうになって捨てられたって、あまりその母親代わりの人のことは好きじゃなかったみたい。そんな人の代わりに復讐はしないでしょう」

 どうだろうか、よくわからない。


「あの子は、悪い子じゃないとおもう」

「そうだね」

悪い子がいるなんてかんがえたくない。みんな仲間で友たちだ。わたしは、そういう意地の悪い考え方もしてしまうけど、のばらはもっと、本当に信じてる。


「かきつばたは仕方ないけど、頑張りましょう。しおんには頼りっぱなしになるけど」

「まかせて」

こんな魔法でも役に立つなら光栄だ。


「大人数の方が楽しい遊びみたいだし、フリージアからみんなに誘ってもらうことにしたわ。フリージアったらあれで、演技が上手かったでしょう?」

「なんか楽しそうだね」

「やったことがないからかしら。もう私が来た頃にはみんなおませさんだったからみんながするような遊びって新鮮」


 のばらは入る時期が遅くてもうグループがてきていたし、みんなで遊ぶというのを卒業していたから、全員で騒ぐようなことがなかった。

「そうだね、少しでも楽しもう」


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