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ⅩⅥ ひそひそとかしましく


 ふらふらと歩いていた。かきつばたのあれはどういうことなんだろう。のばらに相談したい。でものばらはただでさえみんなのために精一杯で、仲がいいかきつばたの事を悪く言うのも気が引ける。


 魔女が魔法を使うために使うエネルギーである魔力は総量があると聞いたことがある。なにか、有名なおとぎ話でみたけど、子供向けであまり詳細には書かれてなかった。


 教室に戻ってきて次の授業を思い出そうとして、どうせ自習だときづいた。ぼーっとしている。

 自習の時間になって散っていたみんなが教室に入ってきた。だからと言ってじっとしてない子が多いのだけど。

 音楽の授業だったのか、前の方でフリージアが歌を歌っている。ここで習う歌はみんな歌詞が古代語で意味がよく分からない。意味がない方がいいと先生が思っているのかもしれない。


「フリージアはかわいいわね」

 声をかけてきたのはのばらだった。

「そうだね。こんな時にも、あんなに明るくいてくれる」

「今のわたしたちにとってとてもありがたい才能だわ」


 フリージアにつられるように何人かが歌い出して、それに耳を傾けた。

「進展はあった?」

「あまりないわ。あんなことがあった後だし、もう少し輪になって話したいのだけど」


「なんか、いろいろ画策してるらしいの?」

 フリージアと歌い出してなでしこにふられたらしいジャスミンが声をかけてきた。

「そうなの。でもいい案が出なくて困ってるところよ。他にも動いてくれる人がいるといいのだけど。みんなが役割を持ってしまうと、それはそれであやしくみられそうで」

 のばらは淡々と話す。確かに、裏でこそこそするのには向かない子もいる。今は観察員に不振の目を向けられるのが一番怖い。

「頭がいいと頼られて大変じゃ」

 ジャスミンはどこか他人事のように話してスケッチブックを開いた。ぱらぱらとめくられたページはだいたいなでしこだ。どれもとても上手くて、いきいきとしている。


「私、困ってるのよ。なにかないかしら」

「われに言われてもなあ……半分ぐらいなら、なんとかなりそうなきもせんが」


 なかなか話し合いなんてこんな箱庭では難しい。中庭なら観察員には聞こえないだろうけど、さすがに勢ぞろいすると観察員も出てくるだろう。

「半分ね」


「何話してるの?」

フリージアが走ってやってきた。

「これ、なでしこ? ジャスミンうまいね!」

「ありがとう」

ジャスミンはニコニコとフリージアの頭をなでる。

「のばらが困っておるから助けてやってくれ」


 ジャスミンは小さくスケッチブックにみんなで話し合いたいとメモを書き出す。

「なでしこ、ひなげし! これ見て!」

フリージアは声を上げて二人を呼び込んだ。

「どうしたら、もっとよくなると思う?」

 フリージアがにこにこと指すそれはさっきのメモだ。フリージアのことを幼い幼いと思っていたのにこんなに鮮やかに人数をふやすとは。わたしの顔をみたフリージアはいたずらが成功したみたいにわらった。


「むずかしいねー。まず場所がないし。教室で伝言ゲームみたいにしていく?」

「それは、できるけど、もっとちゃんした形式をとれないかなと思って」

 なでしこの意見にのばらが答えた。


 みんなでひそひそとうなりながら考える。

 みんなが勢ぞろいして意見を言いあっても、それが外から見てもおかしくないようなこと。

「あの、あそびは? 昔やってた、なんだったっけ? 一列になってから円になる遊び」

フリージアがはじけるように言った。


「はないちもんめ?」

 ずっとだまっていたひなげしが答えた。

「そう、それ! ひなげしが好きで昔、よくやった」

「そっかあれなら円陣になってる間は話し合える」


 フリージアがなつかしい歌を歌い出す。一時期よくしていた遊びだ。その時の教育員さんの故郷では古くからある遊びだったらしい。


「はないちもんめって?」

のばらがそう聞いてきたので答えた。

「のばらが来た頃にはしてなかったのかな。ふたチームにわかれて、じゃんけんをして負けた方が勝ったチームの仲間になる。どの子をじゃんけんに指名するかを円陣になって相談するってかんじの遊び」

「半分ぐらいの人数での話し合いはできるし、しおんが聞き取れば全員に意見を言うことはできるよ」

「そうそう」

「できそうかな?」

フリージアがのばらに問う。


「やってみないとわからないわね」

「なでしこは悪くないと思う。人数も半分より多くできるし。意見のない子は聞くだけで、片方チームつくって言いたくなったら移動みたいにして!」

 なでしこがフリージアに微笑みながら言った。

「でも、そんなに長くは話せないじゃないかえ?」

「先に話し合うテーマとか、話したい人を聞いといて……とか?」

 一度思いついたらはやいのかみんなのおしゃべりが止まらない。


 のばらがふいに笑った。


「どうしたの?」

「もっと、みんなにはやく、相談しとけばよかったと思って」

「うん、頼って」

フリージアがのばらの手を取って振り上げる。

「そうね、ありがと」

 ジャスミンがみんながそうやって話す姿をさっきのメモをつぶすように描いていた。


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