ⅩⅤ 魔法の素質
--「〇」--
「話し合い協力するわ」
とガーベラから彼女の魔法とともに言われたのでのばらと相談した。
「いけそうじゃない?」
目の前の紙を二人で見て確認をする。
「やっぱりみんなでいっしょに話し合いは出来そうにないけど、とりあえずみんなの意見を部屋ごとに回してみよう。このままだと、ピリピリしそうだし、言いたいこと言って吐き出した方が良いと思う」
話し合いをするのは無理があるけど、事前に取った意見をこの部屋から全部の部屋に回していくことは出来そうだ。
「意見を回すなら連絡網を回せば良いけど。でも、そうね、なにか次にむけて思い浮かぶこともあるかもしれない。やってみるだけやってみましょうか」
のばらは紙に矢印を書き記していく。
「うまくいくかな?」
「わからないわ。何もかも。もうちょっと考えみるわ。何も浮かばなければ明日には、意見を回してみましょう」
「なにか手伝えることある?」
「大丈夫」
話し合いをするためにのばらはいっぱい考えてるけど、わたしにはもう手伝うことはないみたいだ。もう少しここに来る前に勉強しておけばよかったと思っても、ずっと逃げ隠れていたあの田舎過ぎるぐらいの田舎では勉強できることもない。ここは確かに檻だけど外の世界にいたって、魔女かもしれないと生きたわたしたちは、みんなそれぞれの檻の中で生きてきたんじゃないかと思う。
ここでは教育を受けれるし、友だちもいる。どちらも元の生活の中ではできなかった。
「ちょっといい?」
かきつばたが目の前にいた。
いつの間にか休み時間になっていた。自習ばかりだから、垣根がわかりづらい。かきつばたに話しかけられるのは珍しい。
「なに?」
「のばらの事で、外に出よう」
中庭に出ると今日はめずらしく誰もいない。雲が厚くほの暗く雨が降りそうだからだろうか。いつもならくっきりとしているネットの影がわかりづらい。
「のばらの事って?」
「別に、のばらのことって言って連れ出すのが一番自然だと思ったから」
「他に理由が?」
「明日なにか、話すみたいだけど、僕は一番多い意見に賛成する。それ以外の意見はない」
かきつばたはわたしをじっと見る。この子のことが実は少し怖い。無表情なのはのばらとかわらないけど、のばらはたまに笑うし、嬉しそうにする。あのリボンを上げた時、目を輝かさせたのばらの顔をわたしはきっと一生忘れない。
かきつばたには表情がない。最近、特にそうだ。
「なんでわたしに?」
「のばらは、あぁ見えて、みんなを大事にする。本当に話し合おうと思ってる。それがめんどくさいから」
引き止められるのが嫌ということだろうか。確かに最終的に折れるとしても、のばらはやや頑固ではある。
「なんで一緒に話し合わないの?」
「無駄だから。納得いかないなら、僕は魔女じゃないから輪に入らない、とでも。とにかく、のばらにそう伝えて」
かきつばたのこの眼力は少し苦手だ。修羅場をくぐってきたというような、のばらにもあるオーラだ。
「魔女じゃないなんてどうでもいいよ。わたしだってたいした魔法がつかえないし。ここに一緒に住んできたんだから、仲間だよ」
かきつばたは、ため息をついた。
「ほんとにそう思ってる?」
「思ってる」
わたしたちはわたしたちの第二の家族だ。
「しおんは、これからどうできると思ってる?」
かきつばたは質問した、その意図がいまいちわからにけど、いつものことだ。
「どうできるとか、わからない。人間には戻れないから、魔女のままで、この施設を出られたらいい。みんなそれを望んでると思う」
「それは、無理。魔女のままみすみす逃がすなんて、こんなおおげさな施設作った必要がない。この施設は、国は、魔女を殺しつくしたい。だから疑わしいものを集めるための施設を作った。後は殺すだけ」
かきつばたは強い口調で言いきった。
「わたしは難しいことはわからないど、せめて、みんなで無事に生きたい」
「ここに閉じ込められたままでも?」
「それは、よくないけど」
自分がきれいごとばかりで、言ってることが無茶だと咎められているみたいだ。でも、希望を少しでも夢見ないと、これからさき、どう生きていけばいいのか。ふと自分が黒いところに落ちていきそうで考えるのをやめた。
「僕ののぞみは、僕が生きること。僕はみんなのことなんて考えてない。ねぇ、すごい魔法が使えたらここから逃れる方法もあるとは思わないか?」
「そんな魔法があるの?」
「魔法には素質がある。最後の一人の魔女は飛行が得意な魔女だった。そんな素質じゃ、対人間とは渡り合えない。でも僕の素質が今の魔力だけではつかえない魔法で、魔法をつかうための魔力がもっと手にはいったら?」
「何の話をしてるの?」
「魔力の簡単な上げ方をしってるかい?」
「なに?」
「殺すこと。魔女を」