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ⅩⅠ うまく行かない

 ガーベラとかきつばたの文字の横に、不明と書いた。

「ひなげしが、寝室でフリージアが魔法使ってるって話してたよ」

「フリージアは私が花壇で話してた時も挙動不審だっだから、使ってたのかもしれないわ」

 普段から我慢がきかないフリージアだ。使い勝手がいい見栄えもいい魔法なら使いたくて仕方ないだろう。さすがに時と場所を選んではいるみたいだけど。

「いいの?」

「寝室なら、ばれないでしょう。花壇にいるときはジャスミンと一緒だし、ジャスミンは日ごろからなでしこを見ているだけあって、細かいところに気づくから、フリージアも注意してくれているとは思う。自然の事だから、多少の変化は気づかれにくいしね。どこかで、ガス抜きしないと、余計に危なっかしい気もするし。フリージアは素直すぎるから」

「むずかしいね」

 わたしは自分が聞いた魔法を書き込んでいく。


「なにか気になることはあった?」

「すみれは出て魔法を使いたくて、ひなげしは出られなくてもいいから大人に話たいって言ってて、すでに前途多難」

「わかっていはいたことだけど、だからってみんなが自由に動かれるのは困るわ。この施設がどう動くのはまったくわからないうちは、反抗するのも告白するのも、得策とは思えない。だから私は情報がもう少しわかるまで静観。わたしの意見も合わないし本当に前途多難ね」

「わたしもいちおう静観だよ」


わたしはみんなの意見がくいのないようにそろうなら動いてもいいとも思ってるけど、だから、詳しく言うと、話し合って意見をそろえるまでは静観だ。のばらと私、客観的にも主観的にも仲が良い私たちでも意見はぴったり合わないんだから、みんながなんてもしかしてこないんだろうか。


「あと、フリージアとひなげしも意見が違ってギスギスしてるみたい。二人はすごく仲がいいってわけじゃないんだなと思った」

「最初からこの施設にいるからって、私たちが勝手に枠組みを作っているのかもね。外からそれぞれ来た私たちから見たら、外を知らないあの二人は価値観が違って特殊だって。むしろ、私たちはあの子たちがうらやましかったのかも。同じ条件の仲間がいるって。今となってはかわいそうだけど」

 あの二人にとって、生まれたのはここで、ここ以外を知らないのに、ここが得体のしれない場所になったんだから、わたしたちよりも何倍もしんどいだろう。

「フリージアとひなげしに、ガーベラとすみれ、これだけ意見が違うと、話し合いをしたら、よけい荒れちゃうかな」

「どうかしら、やってみないとわからない。元からみんながみんなすごい仲がいいわけじゃなかったけど、それなりにやってきたわ。これ以上、荒れないことを信じましょう」


 たしかにやってみないことにはわからない。今日は話したそれぞれの顔を思い浮かべる。そうだみんな仲間だ。

「うん。そうだね。のばらのほうはみんなどうだった?」

「良くも悪くも、いつも通りね。なでしことジャスミンは二人の世界を作ってるし、かきつばたもわれ関せず。この三人はみんな捨てられてここに入った子たちだから、どうしようもないとでも思ってるのかもしれないわ。あとフリージアが、やっぱり魔法を使いたくて仕方ないみたい」


のばらは聞いてきた魔法を書き入れている。

「ジャスミンの透視と遠視はつかえるかな。なでしこのテレポートとアポートも。でも、どうしてもほかの部屋には続かないか」

 みんなで輪になって話すことはやっぱり出来そうにないけど、三つの部屋の線をつなげることもすら難しい。

「みんなテレパシーが使えたらいいのに、忌々しいわ」

「テレパシーって魔女はみんな使えるんだと思ってた」

 あまり外の常識を知らずに育ったわたしでも知っているくらいテレパシーはメジャーな魔法だ。

「念魔法系の人は使えた人が多くいたらしいわ。もともとの自分の魔法と近い魔法は修業すれば使えるようになるらしいし。ほら、ひなげしのテレパシーは一定の距離以内なら壁を越えて届く。なでしこのテレパシーはもっとたどたどしくて、自分が見えてるか、知ってる範囲だけ。これはテレパシーというより、自分と人の意識をアポートとテレポートで移動させてるんだと思う」

 わかるようなわからないような。

魔法について話すのばらは楽しそうで、魔女たちは未知の力をこうして探求して修行していたんだろう。


 しばらく二人でペンを宙に回しながら話しつくしたけど、どうにもならない議論が続いた。

「無理ね。全然上手くいかないわ」

 のばらが大きくため息をついた。

 お手上げだ。そもそもわたしたち二人に通信手段がないと言うのが致命的だった。

「わたしはいいから、アポートでのばらだけでも」

「それだと意味ない。それに人間なんて複雑なものいきなり移動させるのは怖すぎるわ。魔法になれてないし、万が一戻れなかったらその時点でおてあげよ」

 魔法は使えるけど、監視の目があるから使いなれず、力量も加減もわからない。

「もう今日はだめね」

 のばらはあくびをかみしめた。

「ガーベラの魔法が聞けたらワンちゃんあるかもしれない。明日もう一回アタックしてみるよ」

「そうね。私も、もうちょっと考えるわ」



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