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Ⅹ 連なるくすぶり


 二人とも感情が高ぶっていて、少し疲れた。そんな自分の頬をたたき気合を入れた。

 あとは、ガーベラとフリージアだと思っていたら、のばらが、ジャスミンとなでしこのついでにフリージアにも聞けたと言ってきた。さすがのばらだ。


 残りはガーベラひとりになった。どう聞き出すのが、いいんだろう。さっきみたいに外に連れ出してきけたらいいけど、日に何度もはさすがに不自然だ。聞けるとしたらお風呂くらいか。お風呂は五人五人で時間が分けられていて、脱衣所には、女の観察員がいるけど、お風呂の中にはいない。ただ声は響きやすいので秘密話をするには向かない。のばらに相談して、出入口のそばで声隠しに雑談してもらうことにした。



 夜、時間になったので、お風呂場に出向いた。ガーベラは長風呂なので、時間のはじめからいるだろうと早くにお風呂に入ったけど、まだ来ていない。

洗い場でこっそりとすみれに話しかけた。

「ガーベラってまだかな?」

「なんでわたしに聞くの?」

「なんでって、ガーベラと一番仲がいいのはすみれでしょう?」

すみれは言葉に詰まる。


「何の話?」

ガーベラの強気な声が響いた。ガーベラはわたしをにらみつけるように見る。

ちょうどいいと、ガーベラに話し合いのことを話した。

「あぁ、だから、あいつら、あんなところで長々と話してるのね」

 洗い場でのばらとかきつばたがシャワーを流しながらしゃべっている。二人とも表情がないけど、会話は止まらない。きっといつもの、外の哲学とか本とか地域とかそういう小難しい話だ。あれにわたしは、ついていけないけど、かきつばたをうらやましいと思うのは、なぜだろう。


「それをして意味あるの? どうせ、何もせずに過ごすに票が集まって終わりじゃない」

「そうかもしれない。でも、みんなに意見を言う機会があった方がいい。もしかしたら、意見が変わるかもしれないし、みんな、みんながどう思ってるか知りたいと思うの」

ガーベラはすみれをみる。すみれはあからさまに顔をゆがめる。


「みんな、どう思ってるか、ね? その子、もしここから戻ったら、こそっと使おうと思ってみたいよ?」

ガーベラは鬼の形相で、すみれをにらむ。


「信じられる? そんなのもしバレたら、みんな殺される」

「ばれない! わたしの故郷はみんなでわたしを守ってくれるんだから」

 すみれは自分の手を握っている。普段おとなしい、つねにガーベラの金魚の糞のこの子が自分の意見を言うのは珍しい。いや、ガーベラとはたまに喧嘩してるから、すみれのガーベラにはみせている顔なのかもしれない。


「うるさいわ、なんのさわぎ? 外の人が来ちゃうでしょ」

のばらが仲裁に入ってきた。かきつばたはもう出たらしい。

「わざとらしい」

ガーベラは小さい声でささやくのをわたしの耳だけがひろう。

「ねぇ、どうせ、あんたが取り仕切るんでしょ? いい子のしおん使ってみんなを懐柔して、頭がいいかきつばたを参謀にして、自分の思い通りにするんでしょ?」

日頃からガーベラは成績で負け続けているのばらを目の敵にしてるけど、言いすぎだ。

「ガーベラ」

「バカらしい」


 ガラリとお風呂の戸が開いた。

「静かにしなさい」


 観察員が、浴室にまで入ってきて注意した。初めてのことだ。どの観察員も、わたしたちに注意するだけで、こちらの事情を知ろうとはしない。どういう命令なのか、わたしたちとは徹底的になれ合わない。わたしたちとはわかりあえないと鼻から決めつけるような。

「すみませーん。なにせ、出られると思ってたのに、ずっと監禁されて、いらいらがとまらないんですー」

 ガーベラは観察員の横を通る。

「すみません、少し言い争っただけです。もうそろそろ時間ですね。出よう?」

わたしはすみれの肩に手を置いたけど、すみれは無視してお風呂を出た。




 寝室に戻り一息ついた。いつからか外には雨が降っている。はめ殺しの厚い窓では、雨音は聞こえず、外に出るのもかぎられた時間しかないから、いつも雨に気づくのが遅い。


「ごめん、ガーベラの魔法聞けなかった」

こんなにも手こずるとは。ガーベラはなにか言ってくるとは思ってたけど。

「こっちも、ごめんなさい。かきつばたの魔法が聞けなかったわ」

「そうなの?」

意外だ。二人は仲がいいし、二人だけのわからない話をよくしてる。

「本人は、素質がないから、魔法が使えないと話していたわ。何となく変わったというか、身体が軽い感じはするけど、過去の自分にできなかったことが出来るようになってはないって」

「聞けてるじゃん」

「そうなんだけど、それも、よくわからないというか。私を納得させるための嘘のような気もして」

「しょうがないね。とりあえず、いまわかる子たちの魔法で考えよう?」


 のばらといっしょに紙に書き出す。この紙はのばらがあとでトイレで燃やす。この個室には監視の人はいないけど、わたしたちが入れない時間は掃除が入り、その間に調べられていると思った方がいいと前にのばらが話したからだ。


 この部屋の監視はいつからされてるんだろう。いままで意識しなかったのに監視の目は張り巡らさている。わたしたちは本当に籠の中の鳥だ。


 

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