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「いや、そこは『馬鹿ねぇ』とかって軽く流してくれないと困るのですが…?」
ついつい照れ隠しも兼ねて、苦笑いしつつそんなことを言ってしまいましたが、これは裏目ですね、ハイ。
「…困る?何で?」
「あ、いや、その、エリーさんみたいな美人さんに、こんな冴えない男の戯言を真に受けられると居た堪れないと言いますか何と言いますか…」
なんで俺は言い訳してるんでしょうね、良く分かりません。多分テンパるってこういうことなんでしょう。
「ねえ、困るって言うのは、その、彼女とか居るの?」
俺の話聞いてましたかエリーさん、聞いてねーですね。
「いやそれは無いです」
「えっ、何故に即答?」
エリーさんが胡散臭そうな目で俺を見てきます。一体何で俺は胡散臭がられてるのかさっぱり分かりません。鈍感系主人公が降臨したのでしょうか。
「まあ、まあいいわ」
一転、ちょっと流し目気味に俺を見てきます。何が起こるんだ、オラワクワク、しませんね流石に。
「じゃあ、わ、私が、その、あ、あなたの、か、彼女になったら、本当に教えてくれるの?」
流し目じゃなかった、単にキョドってただけでした。でもねエリーさん、知的探求心にしても、やり過ぎだよそれ。
こっちに来てから、アドレナリン出まくりな血生臭い仕事しつつも、御無沙汰だったんですよ。分かりますかね?闘いは本能を呼び覚ます、つまりは滾ってくるわけですよ、イロイロと。
空気読んでるのか何だか知らんがBGMも盛り上げてくるし、こんなイイ女に迫られて?幾らおっさんでも我慢できるわけないわ!!
◇◇◇
ベッドの上で腕枕をしながら、俺はエリーに秘密を教えた。
「俺には、ずっとBGMが聞こえているんだ」
「ビージーエム?」
「DQとか、FFとかね」
「ドラ?エフ??」
もしやと思っていたのだが、エリーは生粋の現地人のようだ。まあ、別にそれは良いんだけどね。
「まあ、そういう種類の音楽が聞こえていると思ってくれれば。そのBGMが、俺に色んなことを教えてくれるんだ」
「音楽が?」
「そう、例えば迷宮に入ったとき、敵意を持つ者と出会ったとき、状況に応じてBGMが切り替わるんだ。それを聞いて、俺は判断するわけだ」
「…それって、ずっと聞こえてるの?」
「宿で休むとき以外は、ずっと」
「今は?」
「…エリーの声しか聞こえてないよ」
そう言うと、俺はエリーの頭を撫でた。彼女は気持ち良さそうに、俺の胸に顔を摺り寄せた。俺は、彼女の頭からする何とも良い香りに酔いながら、心底思っていた。
…良かった、洋物化してなくて。
キングオブ俗物とは俺のことよ!
※やりたかったことはほぼ出来た(笑)