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思い付いたので、書いてみた。
多分10話以内で終わるはず…。
チャラララララ~、ダッタッタッタッタッタッタ~ラ~ラ~~~~
独特のイントロの後、戦闘時の音楽が流れ始めた。どうやら敵とエンカウントしたようだ。
「来るぞ!」
今回は通常の戦闘音楽だから、そう慌てなくても大丈夫そうだ。探索メンバーが瞬時に戦闘態勢に入る。ゲームで言うところの戦闘シーンに突入したわけだ。
ティラリラリ~ン、ターラーラーラララッタ~
出てきた敵を倒すと、戦闘終了の音楽が流れて、マップ移動時の音楽に切り替わる。今は迷宮探索中だから、ダンジョン用の音楽だけどね。
「もう大丈夫だ」
「はー、しかしまあ、戦闘の開始と終了が分かるだけで、こんなに疲労感が違うもんだとはなぁ」
「まあ、普段どんだけ気を張ってるか、ってことだね」
前衛を務める剣士と斥候が会話をしている。メリハリは大事だよね、如何に命掛かってるとは言え、延々と緊張し続けるのは辛いものがある。
「仕掛けや罠の類は分からないから、あんまり過信しないでね」
「応よ、勿論分かってるさ。でもな、不意打ちで襲われないのが分かるだけでも大助かりだぜ」
「そうか、そう言って貰えるとありがたいよ」
「礼を言うのはこっちさ」
俺の言葉を素直に受け止めてくれる、このメンバーは当たりだな。そんなことを考えながら、俺は通路の先を眺めていた。
◇◇◇
俺は、異世界にやってきた。
いやー、最近流行りの異世界転移?だっけか。こっちにやってきた直後は、俺もチートだひゃっほう、ケモミミにエロフいらっしゃい、とか思ってたわけだが、まあ残念系主人公のありがちなパターンとして、特にチートも無し、知識無双も人脈無双も出来ないし、ということで、非常にハードモードだったのだ。何度死ぬと思ったことか。
ちなみに、俺は結構長い時間、ゲーム世界に転生というか、転移したのだと思い込んでいた。まあ、今でもそう思わないこともないけどね。夢じゃない、っていうのは、頬をつねったら普通に痛かったので、まあ理解はした。とはいえ、仮想現実でも痛覚をある程度再現することも出来るだろうしなぁ、まあそんな技術SFの世界だけど、とも思ったが。
基本的にチキンな俺は、命大事にがデフォである。幾らゲームや仮想現実の世界だとしても、こんなリアルな感覚の世界で、痛い目になんて会いたくないわけである。
どうするかなぁ、と考えていると、程なく記憶にあるイントロが流れ、さっきまで流れていたフィールド音楽から、戦闘シーンの音楽に切り替わった。うわ、やっぱり懐かしいな、DQとかFFとか、学生時代にやったなぁ、と現実逃避気味の感傷に浸っていると、目の前にとんでもなく獰猛な顔をした狼っぽい生き物が2匹現れた。反射的に逃げようとしたが、俺の遅い足では絶対に逃げられないので、必死になって最寄りの木に登った。どうやら背後にもいたようで、後から追加で2匹やってきて、4匹で吼えまくっていたが、俺に届かないのが分かったのか、振り返りつつ去っていった。
逃げるのには成功したらしく、音楽が戦闘シーンからフィールドに切り替わった。まずは命拾いしたらしい。もうね、泣きそう。丸腰だし、どうやって木登りなんてしたのか覚えてないし、腕とか手とか傷だらけで痛い。これどうやって降りるの?というか、降りたとして、行く場所あるの?と。
俺は、大して高くもない木の上で、途方に暮れていた。