第45話 予期せぬ再会
僕と半兵衛さん、それに密偵の風魔さんの3人で大きめの街に入った。
侯爵領に続く道にある街で、サターキ伯爵の部下である子爵が治めているらしい。
神経質そうなおじさんにサターキ伯爵のお城を落としたことを報告する途中なんだけど、急ぐ必要もないので、この街で一泊することにした。
もちろん半兵衛さんの提案。
もしかするとサターキ伯爵が逃げ込んでいるかもしれないからだって。
でも、僕達3人だとサターキ伯爵を見つけても何もできないと思う。
ミュアが居れば、僕も多少は戦力になるんだけど、魔道具制作のためと官兵衛に捕まちゃったからな……
官兵衛が子猫姿のミュア相手に交渉している姿が微笑ましかった。
「――― 魔石2つでどうでしょう?」
「むむむ、魔石3つは欲しいにゃ」
「分かりました。瘴気たっぷりの魔石を3つ用意しましょう」
「おおお、お主も悪なのにゃ」
・・・・・・・ よく考えたら、会話内容が全然微笑ましくなかった……
ミュアがいないと魔気による防御ができないから、気をつけないと。
そうそう、秘書官のケニーは今後の方針を決めた後に風魔さん達に囲まれて、長い長い話し合いをしていた。
何を話し合っていたかはよく分からなかったけど、最後には風魔さんと秘書官のケニーがガッチリと握手をしていたから、上手くまとまったのだと思う。
まとまったよね? また、グフグフ言ってたから心配なんだけど……
宿屋の2階で休んでいると、外が騒がしくなった。
格子の嵌った窓から外を見ると、大通りに人が集まっている。
「戦場で敵と内通していた犯罪者共が通るぞ! 道を開けろ!」
先ぶれが大声で叫びながら野次馬達を脇に追いやる。
しばらくすると荷車に鉄格子を付けた馬車が路地に入ってくる。
俄かに周りが騒がしくなった。
怒声も聞こえてちょっと怖い。
鉄格子の中に居る人に向かって石も投げられている。
鉄格子の中にいる十数人の犯罪者達は身動きもせず、石を受けている。
うわ、すごい大きい石も投げられている。
いくら犯罪者でもあれじゃ死んじゃうよ。
「犯罪者の市中引き回しは民衆のストレス発散も兼ねていますからね……」
小さい窓なので、一緒に見ている半兵衛さんがすごく近い。
後で聞いた話だけど、普通の宿屋だと宿泊者が泊まり逃げできないように小さく格子の嵌った窓にするのが定番らしい。
犯罪者の顔が見えるまで馬車が近づいてきたときに気が付いた。
あ、あれ? あの人って
「ナポレオンさん!」、「オールソン殿!」
◇◆◇◆◇◆
……
…………
………………
我の名はクゥマ……
本名ではない、密偵を輩出する里の長に受け継がれている名だ。
サターキ伯爵の城を落とすのは上手く行った。
いや、上手く行き過ぎたか……
この成果は、ハーヴェンお嬢様の作戦や、優秀な里の者を10人付けたことだけでは説明がつかん。
やはり、アロの悪魔レモンの効果を認めざるをえない。
いや、我はハーヴェンお嬢様の相手としてアロのことは認めておる。
里の優秀な者達は当初認めておらんかったが、今回のアロの活躍で見る目を変えたようだ。
…… 認めているというよりかは、化物を見ているよう目をしていることが気になるが……
あのハーヴェンお嬢様の伴侶が、普通であるわけあるまい。
すごく納得された……
…… 言っておいてなんだが、そこで納得されるとハーヴェンお嬢様に申し訳なく感じるではないか。
ケニーとかいう秘書官、あれは隣の里の者じゃないのか?
我の里も隣の里も痩せた土地で作物が取れない過酷な環境にある。
なので生きるために密偵を生業にしている。
同じ密偵を輩出する里だが、仲は悪い。
昔からお互いの少ない作物を奪い合う仲だったからな、仲が良くなるわけがない。
何を企んでいるか知らんが、ハーヴェンお嬢様に害を及ぼすのなら切る!
幸いにして、密偵としての技量は低いと見える。
里の者と連携して見張っていることにも気づいていない様子。
しばらくは泳がしておこう。
ハトゥ-リは代替わりしてから、質が落ちたと聞いていたが……
想像以上に質が悪い。
調べていると、新しい里の長であるハトゥーリ、そのハトゥーリが仕えているガレトン王国の子爵にも繋がった。
あまりにあっさりと分かったことから罠を疑ったが……
里の者と連携して裏取りをしても何も出てこない。
それに罠にもならない情報だから、単に筒抜けなだけだと感じる。
仲の悪い隣人ではあるが、同じ密偵としては質の低下を嘆くしかない。
サターキ伯爵の城に入り込み、短剣を渡したら一緒に戦ってくれた。
助かるが、秘書官として戦えることを隠さなくて良かったのだろうか?
それでいて、密偵だとバレていないと思っているところが愚かしいというか……
ここまでくると、ハトゥーリの者どもをまとめて説教してやりたくなるわ。
城を占拠した後の会議にケニーも参加させる。
「そういえば、神経質そうなおじさん…… ええっと子爵様の上司にどうやって手紙を書かせるの?」
アロが疑問に思ったようだが、ケニーにさせるに決まっている。
ハーヴェンお嬢様とカーヴェイ様にもケニーの正体は伝えてある。
まあ、ハーヴェンお嬢様は気付いておられたようであったがな。
クゥマの里の者で固め、ケニーに詰め寄る。
「お前がハトゥーリの部下でガレトン王国の子爵と繋がっているのは分かっている」
「な、えっ?、や」
明らかな狼狽。そんなに顔に出ていては認めているのと一緒であろう。
同じ密偵として嘆かわしい。
情報を聞き出すのを忘れて、小一時間ほど説教してしまったではないか。
「子爵と繋がっているということはアロ少年の監視か? アロはハーヴェン様の大切なお方、害させはせぬぞ!」
「おお、やっぱり大切なんですね!」
「うん? うむ、大切に決まっておろう。我もアロ少年のことは認めておる」
何か急に元気になったな。我がクゥマの首領と知ったときには死にそうな目をしておったくせに。
「私はお二人のことが大好きなんです。陰から見守ることができれば、任務は関係ありません」
2人に魅入られたからケニーはこんなに密偵らしくないのか?
ということはハーヴェンお嬢様の何かの策か。
それならば見方を変えねばならぬが……
「ふむ、二人を見守るというのであれば、害はないか」
「見守りますとも、お二人はすごくお似合いだと思ってます!!」
む! ハーヴェンお嬢様が女性ということは里の上部しか知られていない情報。
カーヴェイ様にも言っていない極秘情報を掴んでいるとは実は優秀なのか?
「声を抑えよ、それは誰にも言うてはならん。だが、それは我らも同意である」
「おおおお、まさか男性に同好の士がいるとは!」
同好? 何の話だ?
「もちろん、秘するのです。それが美というもの」
よく分からないが、ハトゥーリを裏切って我々に付くというのであれば願ったりだ。
口は軽そうだが、二人に関しては害はなかろう。
「必ず二人を幸せにしましょう」
おお! 分かっておるではないか。
その目に嘘はないようだ。
二人の仲を進めるのに苦労しておったのだ。
そういう方面で女性の協力者はありがたい。
「よろしく頼む」
ケニーとガッチリと握手をした。
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