第44話 トリックスター
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皆さん、読んで頂きありがとうございます。
こんにちは。美しいと評判の三女神の末っ子スクルドです。
私は今、ニッカポッカと呼ばれるダボっとしたズボンを穿いて、ヴァルハラの天井に貼られている盾を修復しています。
所謂、鳶職スタイルです。
このダボっと感…… 私の美しい姿が台無しです。
「足の太さがバレなくて良かったですね」と言ったワルキューレにはスパナを投げておきました。
簡単に避けられましたが、不快さを表現するのは大切です。
英雄達を異世界に逃がしてしまったことは怒られませんでしたが、ヴァルハラが枯山水になっていることはさすがに怒られました……
オーディン様は怒ると怖いんですよね。
私のせいではないですが、ウルド、ワルキューレ達と共に頑張って修復していきす。
この足場は誰が立ててくれたんでしょう?
ずいぶんと本格的な建築現場になっています。
「ウルド、この角度で合ってる?」
ウルドはブツブツ言いながら床で長椅子を修理しています。
「ウルドじゃない」
「えっ? なんて? 聞こえないけど」
「ウルドじゃない、親方と呼べ!」
同じく鳶職の恰好をしているウルドが空に向かって吠えました。
こういう肉体労働は苦手でしたね。
天井付近で動き回る体力がないから、長椅子の修理をお願いしたのですが、今度は釘を真っ直ぐ叩くことができなくってイライラしているようです。
本当は神気を注いで修復を行っているので、釘を打つ必要はないのですが……
うん、雰囲気です。雰囲気!
部屋の真ん中で延々と神気を流す作業は気が滅入のだからしょうがありません。
まあ、こんなに本格的に工事中を装うとは思っていませんでしたが……
「で、ヴァルハラがこんなことになった原因は分かったの?」
「オーディン様とヴェルダンディがヴァルキリーから聞いた話によるとロキ様が怪しいみたいよ」
「ロキ様か…… いつもの悪戯かな?」
「悪戯ね…… ロキ様は無駄に悪戯はしないのよね。過去の悪戯には必ず意味があったし……」
悪戯に意味って、それは悪戯に見せかけた策略なんじゃないの?
「嫌な予感がするわね。スクルド、ちょっと未来を見てみてよ」
未来を司る私には未来を見る力があります。
だけど神力不足なのか、あまり精度が良くないのですよね。
色々な確率の未来が同時並行で見えるから、100個くらい混ざった映像を一気に見て気持ち悪くなることもありますし……
まあ、今回は私も嫌な予感がしますから、苦手ですけどやってみましょう。
不安定なところではできないので、天井の足場から飛び降りて、衣を神衣に素早く替えます。
旦那様が見ていたら、白いキトンを着た女神が降臨したように見えたことでしょう。
「スクルド様、女神みたい」
ワルキューレ達が騒いでくれますが、私はれっきとした女神です。今まで何だと思っていたのですか?
神気を膨らませ、世界樹に意識を接続します。
これで未来が―――
「ヴェルダンディお姉様が危ない!」
ハッキリ見えました! ヴェルダンディお姉様がヴァルハラに落ちて来るのを……
ドォーン
未来が見えた瞬間にすごい音とともに落ちて来ました。煙まで上がっています。
「う、う…… ここは?」
さすがヴェルダンディお姉様、亜空からすごい勢いで落ちて来たのに、着衣の乱れがありません。
「わ、私が直した長椅子が~~」
騒いでいるウルドは無視しましょう。
せっかく直した長椅子が木端微塵になっているのは哀れですが……
「お姉様、どうされたのですか?」
「スクルド!? ここはヴァルハラですか?」
「はい、ウルドとヴァルハラの修理に、それよりもお姉様は?」
「スクルドが開けた地球と異世界の穴を塞いでいるところだったのですが……」
さすがヴェルダンディお姉様。地球から穴を塞ぐ作業をしてくださっていたのですね。
あれ? でも、その穴から落ちてきたということは……
恐る恐る、お姉様の落ちた付近を確認します。
あ、ああああああああ! せっかく塞いだ異世界への穴も開いちゃってるじゃないですか!?
「あらあら、困りましたね」
お姉様! 困りましたじゃ済みません!
◇◆◇◆◇◆
やっほー みんな大好き、トリックスターのロキ様だよ。
オーディンの義兄弟だけど、敵対している巨人族の生まれだ。
まあ、世界の始まりはユミルという巨人族だから、オーディンや他の神々も元をたどれば巨人族さ。
僕は楽しくて、ゆるい世界が大好きなのに……
神界、魔界、冥界に人間界。
アース神族、ヴァン神族に巨人族。
みんな適当に仲良くしたら良いじゃないか。
領土が欲しい? 覇権を握りたい?
みんな欲が深いね。それでも神様かい?
巨人族は野蛮で知性が低く醜悪だと言って敵対するけど、オーディンに知識を与えたのは巨人族だし、多くのアース神族の子を成したのは美しい巨人族の女達だ。
それなのに、親殺し、子殺し、師殺し……
相手のことをよく野蛮だと言えるね。
仲間として見てきたから分かるけど、君達の方が野心が強く野蛮で傲慢、プライドが高いくせに怠惰ときている。
ずっと一緒にいるからそりゃあ君達に情も湧くさ。
オーディンやトールとはよく一緒に旅に出たし、気の合う神も何人かはいるよ。
でも、そろそろ僕は我慢の限界のようだ。
僕の子供は化け物だからって、海に投げ捨てられ、北の地に封印され、冥界に落とされた。
子供を害されて怒らない親がいるとでも?
君達は全知全能に近いから、僕が多少のことをしても大丈夫だと思っているのは分かっている。
その傲慢さで足元を掬われないといいね。
スクルドが男神に悩んでいるようだったから、源氏物語をこっそりと置いてあげたら、上手い具合に人間世界と神界に穴を開けてくれた。
オーディンは怒るだろうけど、僕は褒めてあげるよ。
人間に神への試練を課すのかい? 良いね!
君の加護だけだと頼りないから、僕の加護も付けてあげる。
う~ん、二人の加護でも不安だな……
僕の子供、ヨルムンガンドの欠片も入れておこう。
最強の毒蛇の力だ異世界で何を食べてもお腹を壊すことはないよ。
そのうち毒霧攻撃もできるようになると思うな。
ついでにヴァルハラの英雄達もお供に付けてあげたらいいよ。
戦士以外も混ざっているからきっと役に立つだろう―――
おっとっと、ヴァルキリーに僕の配下がやられてしまったようだ。
さすがに戦闘特化の天使は強いね。
僕も強いけど、あんまり正面から戦うのは好きじゃないから許してよ。
配下の顔を僕そっくりに作り変えておいたから、それを倒したことで満足しておいて欲しいな。
それにしてもノルンの姉妹は愉快だね。
僕は何もしていないのに、地球と異世界の穴をまた開けちゃったよ。
女神のように振舞っているけど、君達は黄金時代の終わりを告げる巨人族の娘達。
僕の復讐のために上手く利用させてもらうよ。
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