第26話 祝☆奴隷解放
やった~
戦場奴隷から解放されたよ!
嬉しさのあまり踊りだしたいけど、脇腹の傷に障るので自重する。
昨日は黒ずくめの男に殺されそうだった。
無事だったのは半兵衛さんの密偵である風魔さんのお蔭みたい。
みたいと言うのは槍を突いた覚えはあるのだけど、そこで意識を無くしてしまったから。
なんと僕は脇腹に毒の付いた投げナイフを2本も受けていた。
攻撃に集中し過ぎていたので、まったく気付かなかったよ……
目を覚ましたのはお城の一室。
関羽に張飛、半兵衛さんが心配そうに見つめるなか起きたけど、体に異常はないみたい。
というか、むしろ好調。
麻痺か睡眠の毒でも塗ってあったのかな?
起きるとすぐに神経質そうなおじさんのところに向かった。
今日のおじさんはニコニコ顔。
ずっと、その顔だと印象が良いと思う。
上機嫌で出世が決まったことを教えてくれた。
僕は会話が分からないフリを続けているけど、作戦通り辺境伯補佐の首を挙げたみたい。
いつも通り、4人で奴隷紋を一つ消してもらう。
それで終わりかと思ったら、これから呂布の論功行賞が行われるらしい。
行くのはおじさんと騎士6名と奴隷管理人と…… 僕!?
城の謁見室に入る。
大きさは中学の体育館くらいかな?
建物の一部だと考えると大きい部屋だ。
大きい部屋なのに足の踏み場もないほど人で溢れている。
床が抜けないか心配だ。
これでも、辺境伯領攻略で活躍した人だけしか集まっていないはずだから授賞式も大変だ。
小さな賞から始まるみたいで、ずっと拍手をしている。
こちらの拍手は独特で足を踏み鳴らしてから拍手して、4拍くらいで足をもう一度踏み鳴らして終わる。
ダラダラ拍手を続けないための工夫かな?
軍隊流で一般とは違うかもしれないけど。
それでも人数が多いので手が痛い……
――― やっと、おじさんの番が来た。
これで最後みたい。
良かった、いいかげん手も赤くなってきたし、足も痛い。
呂布も欠伸をし始めている。
おじさんは大将首を挙げたということで2階級上がって男爵から準子爵への昇爵が言い渡された。
今回の受賞の中では一番の昇爵だ。
ちなみに2階級なのに爵位が1つしか上がらなかったのは、爵位の中に順位があるから。
男爵の中に1位から5位まで順位があるので、男爵2位から2つ上がって、子爵の5位になった。
本来は王様しか昇爵の言い渡しが出来ないんだけど、戦時中の臨時昇爵だからそこに準が付く。
余程のことがなければ後で王様から正式な昇爵を言い渡されて、準が取れるとのことだ。
この辺は散々、他の人の受賞を見聞きしていたので嫌でも覚えた。
おじさんが騎士のみんなに自慢している。
子爵になると街を一つ任せてもらえるらしい。
僕が奴隷になった街の子爵に無理難題ばかり言われてたみたいで、そこから離れられるとすごく喜んでいる。
部隊としての功績なので他の騎士と奴隷管理人も同じく2つ位が上がってニコニコしている。
さあ帰ろうと思ったら、みんなが僕を見ている。
ええっと、何?
僕の名前が呼ばれた。
僕は何もしていないはずなんだけど……
呂布が演台で待っている。
なんだろう、行きたくないな。
行きたくないけど、機嫌の良い奴隷管理人に優しく押し出されて演台に登る。
「よう、一騎駆けとは派手なことやってくれるじゃねぇか」
喰われそうな怖い笑顔で呂布が近づいてくる。
「ほれ、褒美だ」
呂布に腕を掴まれ、焼き印を目一杯押し付けられた。
痛い、痛い!
パキン
10個目の焼き印で奴隷紋が音を立てて崩れた。
刺青みたいに痕は残ったけど、瘴気である黒いモヤが霧散していく。
「「「「「「おおおおお!」」」」」」
みんなの驚きの声が謁見室に響いた。
「戦場奴隷が解放されるなんて、伝説でしか知らんぞ」
「少なくとも我が国では初めてのこと……」
ざわざわが収まらない。
そんなにすごいことだったんだ。
関羽に張飛、半兵衛さん、奴隷仲間のみんなにも感謝しないと。
「で、てめぇは今日から準騎士爵の5位だ。せいぜい俺様の役に立つんだな」
ビュッ! 「うわ」
呂布が剣を僕の肩に振り下ろすと、口の端を上げた。
ギリギリで止まったけど、剣筋が鋭過ぎて切られるかと思った。
跪いて受けると騎士っぽいんだろうけど、僕と呂布だと脅されているようにしか見えない。
ええっと、準騎士爵……
それって一番下だけど一応貴族だよね?
奴隷から貴族!?
「「「「「「おおおおおおおおおお!」」」」」」
謁見室に大音声が響いた。
みんなビックリしている。
僕もビックリだよ。
◇◆◇◆◇◆
俺の名なんてどうでもいい。どうせ、どれも偽名だ。
俺は今、無性にムカムカしている。
そりゃそうだ、あのガキが奴隷から解放だと!
しかも準騎士爵って、今日からお貴族様じゃねぇか。
謁見室の天井から覗くと、司令官や兵士が歴史的な出来事に沸き立っている。
「あんなガキ、すぐに死ぬと思っていたんだがなぁ……」
…… でも一つだけ認めてやる。
暗殺部隊の長官を殺してくれたことだ。
長官には弱みを握られていて逆らうことが出来なかった。
暗殺者としても密偵としても一流の男で、裏をかくことも戦うことも不可能。
あのガキはよく倒したものだ。
長官が自慢していた特別調合の猛毒付きの投げナイフを喰らって、生きているのはお前ぐらいだよ。
しかしこれで俺は自由だ。
任務を放棄してもよかったが、ここまできて今更だ……
…… 待てよ、俺をこんな目に合わせたやつらに一泡吹かせるチャンスじゃねぇか。
「くくくく……」
ガキに対する万感の拍手の中、大声で笑った。
論功行賞が終わって一人で休憩しているギレッドの部屋へ忍び込む。
辺境伯の私室だった場所だ。
ギレッドはつまらなそうに磁器の壺を眺めると槍の穂先でクルクルと回し始めた。
危ねえな、高価な美術品だぞ落としたら大損害だ。
柱の陰から見ていたら、壺がこちらに飛んで来た。
別に壊れても良かったが、柱から出て受け止める。
…… ちっ、気付かれていたか……
「つまらなそうにされていますな。面白い話があるんですがねぇ」
おどけて言ったら、すごい殺気を飛ばしてきやがった。
やはり無謀だったか?
「話しな。面白くなかったらすぐに殺してやる」
ギレッドは座ったままで、俺との距離もある。
だが、やる気になれば俺なんかすぐに殺せるのだろう。
「あんたは軍の司令官なんかで終わるタマじゃないだろう。どうせなら王位を狙ってみねぇか?」
「――― ほう」
くくく、乗ってきやがった。
長官からの指令は侯爵位と領地を餌にギレッドを裏切らせることだった。
それじゃあ、ギレッドも俺も面白くない。
新王と交渉して公爵の娘との結婚も条件に入れる。
公爵は王の親戚筋だ、条件が通ればギレッドに王位継承権が手に入る。
王位継承権さえあれば、長官亡き今は簡単だ。
俺とギレッドならば恐怖で新王を従えることもできるし、従わなければ暗殺なりなんなりすりゃあいい。
くくく、楽しくなってきやがった。
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