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第2話 異世界に飛ばされて

風景が戻ったら知らない街中にた。


この風景どこかで見たことがあるような……


あ~ ヨーロッパの有名な観光地にこんなところがあったような気がする……


ちょっと現実逃避。


うん、きっと夢だな。


っぺたをつねると痛い。


遠くのお城まで見える街中、ちょっとくさい路地、肌に触れる風、石畳の感覚。


とても夢とは……


いや、寝ているうちにどこかのテーマパークに連れてこられたとか。


そう言い当てると、質素なチュニックを着た白人のおじさんがこちらをにらみながら通り過ぎた。


このテーマパークにサービス精神はないようだ。


分かった! 拉致らちされて海外に来ちゃったとか。


今度は上半身が人間で下半身が馬のケンタウロスがく馬車が目の前を通りすぎた。


…… あ、ここ地球じゃない……




異世界の物語はもちろん読んだことがあるし、勇者にあこがれを持ってはいた。


なので、街中で叫んでしまった。


「ステータス・オープン!」


うん、何も起きない。そして恥ずかしい……


…… こういうのは普通、何か事件が起こって特別な出会いがあるものだよね。


とりあえず街中を歩き回った。


見たこともない物が多くて始めはテンションが上がった。


変な目で見られながらも街中をキョロキョロと見回しながら探索し、珍しいものをペタペタと触りまくる。


でも、楽しかったのはそこまでで日がれかけて初めて気が付いた。


…… もしも、言葉も文化も解らない異国、それも紛争をしているような国に無一文で放り出されたら、どうなるのかを……


「お腹空いた……」


空腹を訴えてるお腹をさすりながら、日が沈み真っ暗になった細い路地に腰を落とした。


暗くなる前に人通りは徐々に少なくなっていき、今の時間帯で街中を歩いている者はほとんどいない。


いるのは酔っ払いくらいだろうか、小さくせこけたオジサンがブツブツと言いながら千鳥足ちどりあしで進んでくる。


目が座っていてちょっと怖い。嫌な予感がするので僕は息を殺して路地の隅っこに座りなおした。


ゴッ!


オジサンは僕を見るなり殴りかかってきた。何が気にさわったのか知らないけど。


殴られたことなんてなかったので、必死に丸まって顔やお腹をかばい暴力が止むのを待つしかできなかった。




朝日を浴びながら、身体を起こす。


殴られた脇腹わきばらや手足がひどく痛い。


昨日から何も食べていないお腹がグゥグゥと鳴って仕方がない。


いずるように歩き回り、食べ物を探し歩いた。


木の実一つっておらず、露店ろてんは出ているがお金がないのでもちろん買うことができない。


何度か露天商に話し掛けてみるけど、まったく言葉が通じず最後には追い払われる始末……


唯一、幸運だったのが井戸を見つけて水を飲むことができたことだ。


少し茶色い水で飲むのに勇気が必要だったが背に腹は代えられない。


「…… お腹痛い……」


まあ、思った通りだった。


お腹が痛く力が出ないので露店が出ている大通りに座り込んでいたら、皮鎧かわよろいに槍を持った二人組の衛兵えいへいに追い出された。


結局、元の細い路地に座り込む。


もう、動く気力もなかった。


夜になると、昨日のオジサンがフラフラと近づいてくる。


ここはオジサン危険地帯なのだろうか…… また、訳のわからない叫びを聞きながら殴られる。


もう、抵抗する気力も身を守るために丸くなる力もなかった。




自慢にもならないが僕がやった一番悪いことといえば、お菓子の袋をポイ捨てしたことだろうか?


それも後になってから気になって、結局けっきょくひろって帰ってきたぐらいの小心者だ。


それなのに、お腹が減って、目が回って、気が付いたら露店からリンゴのような果物をって走っていた。


「doak aro!」


小柄で年老いた店主が棒を持って追いかけてくる。


言葉はまったく解らないが、おそらく「待て、泥棒どろぼう!」とでも叫んでいるのだろう。


泣きながら走って、走りながら盗んだ果物をかじる。


二日間何も食べていなかったからか、今まで生きてきて一番ではないかと思うほど美味しかった。


一口食べたことで脳に栄養が行ったのか、ふと我に返り猛烈もうれつ後悔こうかいねんが浮かぶ。


あんなにせた小柄なお爺さんから僕はなんてことをしてしまったのだろう。


「ごめんなさい!」


足を止め石畳の上に座り込む。


こちらの文化は解らないけれど、土下座した方が良いかもしれない?


「dao dksoakobao」


お爺さんは息を切らせながら近づいてくると、心配そうな顔で僕の頭をなでた。


もしかして許してくれるのだろうか?


次の瞬間、「fun!」 ドッ! 「うっ!」


大声を上げながら棒を突き出すお爺さんと鳩尾みぞおちにクリーンヒットをもらい意識が遠くなっていく僕。


「そんな~」


やっぱり世間はそんなに優しくはなかった。




◇◆◇◆◇◆


わしはゴッズ、街近郊まちきんこうで農家をしておる。


今日は収穫した野菜や採取した薬草などをいつもの路地で販売しておった。


最近は戦争が長引いておるからか食べ物は高値で早くに売り切ることが出来る。


ホクホクじゃ! まぁ、何か買うにしても高いから世の中そんなに上手く行く訳ではないがな。


早々に野菜が売れてしまったので、後は傷や熱に効く薬草や毒矢などに使う毒草などを置いてゆっくりしておった。


フラフラとした足取りでうつろな目をした少年がこちらに向かってくる。


戦争になって以来、ああいう子をよく見るようになった。


大方おおかた、村を焼かれたか人減らしで捨てられでもしたんだろう。


こちらをジーっと見つめられても、食べ物は持っとらん。


あっても分けてやれるほど余裕のある人間ではないしの。


あっ!


こやつ、一番毒性の強い猛毒リンゴを盗って行きおった!


その果汁かじゅう一滴いってきでイノシシを倒せるほどの物じゃぞ。


わっ、バカ! 食べるやつがおるか! わしの売っている物で自殺などされたら目覚めが悪いわ。


「待て! 小僧」


急に止まって、地面にうずくまりおった。


これはまずい早く吐き出させなければ。


「早よ、吐き出すんじゃ」


「ふん!」


わしは持っていた棒でおもいっきり鳩尾みぞおちを叩いた。


これで吐き出してくれれば良いのじゃが……


おお、町の衛兵が来おった。


丁度よい早くこやつに適切な処置を。

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