幸運の適量
幸せに満ちていても足りなく感じるのだから、人間と言うものは、何処かに穴が空いているのだろう。
朝昼晩に祈りを捧げると、食事が出てくる。
衣服だって、高価ではないが、綺麗なものが出てきたり、清潔になって置かれている。
身体を綺麗にするお湯だってある。
贅沢なものだと思う。
「贅沢だと感じるのは、心が卑屈になっていることもあるものさアサギ、よく言うだろ幸運とは受け入れ過ぎず、拒み過ぎずとね、まぁ、そんな言葉通りに生きてたって、それで幸せになれるとは限らないのも人生だ」
そう言うと、紙の体をヒラヒラとさせながら、慰めているのか、どうかあやしいものだ。
しかし、流されるまま、頼りきっているが、よくよく考えたら、何一つ理解できてないまま、ここに居るのはおかしなものだけれど、他に行くところもないのだ。
今はそう言うものだと、お言葉に甘えさせてもらおう。
そう思ったのだか、やはり、ざらざらと心が落ち着かずどうしたものかと、もう一度ミサカに相談をしてみる。
「甘えさせてもらおうと思うようにしたのに、心苦しいと、お酒でも飲んだら良いよ、アサギのおかげで、お酒には困っていないから」
ちゃぶ台に用意したお酒を、くいっと指し示す。
「いや、そう言うのではなくて、自堕落な方向性ではないというか」
「まぁ、概ね理解はしているよアサギ、自分のやっている事と待遇が不一致で、それによって不安を抱えていると言うことだろう、それを解決するには、やっている事を増やすか、待遇を減らすかだけど、増やした方が、自堕落性はないと思うからね」
「ありがとうございます」
「自堕落的な方向性の方が、こちらとしては、楽だったけれどしょうがない、じゃあ明日辺り、街にいくから心の準備をしておいてね」
「 あぁ はい わかりました 」
顔の筋肉が、強ばったせいか、喉が押し潰されるような違和感をかんじたからか、声を出すのが少しだけ、つらい。
「そんな顔されてもね」
言葉につまった、私を見てヒラヒラと舞い上がり頭の上に乗ってきた。
不思議なもので、少しざらざらとした不安は消えていた。
「まぁ悪い様にならない為に、こっちも用意があるから大丈夫」
「わかりました、ところで街に何をしにいくんですか?」
「お酒を売るにあたって、許可をとりに行くんだよ、黙って売ったらカドがたつからね」
自堕落的な方向性ではないけれど、何処かしら不安はあるにせよ、ざらざらとした不安は小さくなり、消えてしまいそうなぐらいに、それは小さくなった頃に、ミサカはまたヒラヒラと、頭から舞い降りてお酒を飲もうとしていた。
「景気付けに一杯だけ飲むといい、一緒に飲もうか」
私はミサカの為に祈り、そして私も一杯だけお酒を飲んだ。




