アサギは希望を抱いて眠る
溺れているものは、滑稽なダンスを踊っているようなものだから、笑うのが正しく、一緒に、ダンスをするのは、間抜けのすることだ。
この言葉を残した人は、きっと世間一般の上級貴族の悪い部分で出来ていて、お酒をグラスに注ぎながら、そんな言葉を平然と喋り出すような人物だろう。
そんな言葉に共感したくはない。
当たり前と言えば、当たり前の事だ。
もし、そんな状況に出くわしたとして、そんな言葉を口に出すことなんてないだろうと。
それに、誰だって溺れているような状況になりたいなんて思うはずもない。
何もわからない子供じゃあるまいし、悪意だらけのこの言葉に共感しようと思うはずもない。、
だけれども、こんな言葉が残るように、社会とは、溺れている人を沈めようとする輩は確実にいるという事を、忘れてはならないという戒めでもある。
自分の事を棚にあげているのか、そう言う世界だと自覚しているからこそなのか、上級貴族への縁組みが、決まって過ごした時期に、そういうものだからと、片手の指では足りぬほど、数えるのも億劫になるほど、言われたような気がしていた。
まぁ、実際に笑われ、沈められた身として、何かの幸運で、ミサカにあって、どこか助かったと感じている、今の心身としては、なるほどと思った。
ヒリヒリとボコボコと音をたてる。
ジリジリとジワジワと感じることができる。
ぐらつくような、沸き立つような思いで、なるほどと思った。
なるほどと思うどこかで、この感情はどこかへと行ってしまえ、もしくは隠れてしまえと思う。
そのような感情の捌け口など、何処にも有りはしないのだから。
用意されていた、毛布を身に引き寄せ、体を縮め丸め、目を閉じる。
毛布を、はなさぬように、ぎゅっと握り混むときに熱を感じた。
手のひらの、王子の結婚相手の条件。
赤い渦巻き模様の、一時は神の印と持て囃された幼年期の終わりには消えるはずの痣。
今となっては、神の印なんなかではなく、只の成長していない、何も役にはたちはしないと揶揄されただけの痣が、今は怖く思えた。
ぐらつくような思いが、痣が、嫌なことを沸き立たせる。
溺れ、笑われる。
深く深く眠るために息をすっては、吐き、目をつぶり、祈るように、理不尽を嘆き、丸まり、いつしか痣からの熱はなくなり、そのうち眠りについた。
そして朝になると、私は毛布を抱いて寝てはなかった。
抱いて寝てたのは、大きめの赤いガラスの酒瓶だった。
「いや 何で?」
婚約破棄されたときとは、別の、実に間抜けな声が漏れていた。




