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ため息をつかせたの。

 望まぬものは、望まぬほどに集まる。

 望んだものは、望んだ分より足りない。


 この言葉の要約は、世の中思い通りにならないんだから、現状に不満がたまる一方だが我慢しろ、足りないからと言って欲するな我慢しろ。


 そういう教訓と言うか、精神論だ。


 我慢というよりは、諦めろと言う方が近く、正解なのかもしれない。


 我慢、諦めという言葉が都合のいい、器量、潔さと随分と耳障りのいい、納得しやすい言葉にかえる。


 そんな言葉に埋め尽くされるのが、人間。


 とりわけ、立場の弱い、お人好し、素直な人間が、言葉が、積もって、埋め尽くされて、動けなくなる。


 手遅れになる前に、そんな言葉なんて、周りにぶちまければ、まだすこしばかりは、楽になる。


 楽になった後に、面倒な事にまた積もるのだからキリがない。



 そんな感じの事を、ミサカは言っていた。


 まぁ、数時間も前の事だ。


 そして、現在の事でもある。


 後ろから人の集まる足音が、ざわめきを大きくし、密かな声も重なり、耳にきちんと悪口

 らしく聞こえる。


「注目されたくて、騒ぎを起こしている」

「泥を塗って平然と顔をだせたものだ」


「商売の種なんてないだろうに」

「身体を売るのに商売ギルドの申請が必要だと思っているのさ」

「買い叩けば、それなりに益はでるんじゃないか?」



「家なし令嬢」

「能無し令嬢」

「名無し令嬢」





 好き勝手に、価値を決められ、見下され、正直帰りたい。

 嫌悪と好奇の目や声が、気持ち悪くなってくる。


 目の前にいる職員にだって、何でわからないのかとあからさまな、態度をとられている。


 先程から、くしゃくしゃと頭をかきむしる男性職員は、随分と怪訝な表す情でこちらを見てくる。


 書類の手続きだけ、こちらに不備などはないが、ミサカが喧嘩腰で説明しだしたのが、気味悪くおもったのかもしれず、それが拍車をかけて、心証がわるくなり、上級貴族の紹介など、今の私には無理な事を言ってくる。


 そうなるとさらに、ミサカは喧嘩腰になって職員も横柄になってというのをら繰り返している。



「ふむ、巫女としての身分があると、教会の証明書も出している、無用な騒ぎを起こしたくないなら、さっさと登録することが出来るだろう」


「その証明書など偽物の可能性もありますから」



「ふむ、わかった、黙って売ったらカドがたつだろうと配慮したが、そちらに取ってそこら辺の気遣いも無用だと言うことだろう、今後そちらの取り決めや騒動など、こちらは一切関与などしないという事でよろしいか?」


「あぁどうぞご自由に」


「アサギ良かったなぁ、この商業ギルドさんが、場所代も、上納金も商業ギルドの許可もいらないと言ってくれた、後から嫌がらせなどしてみろ相応の罰をくだす」


 こちらに話を振らないで欲しい。


「ご自由にどうぞ」


「具体的には、お前のところのギルドが3年前にミージア商会から領主への上納金をすこしばかり懐に入れたことや、5ヵ月前にある貴族に役員が賄賂をするため、上納金未払いの嘘の報告書を作ったりしたことを、公にする覚悟も証拠もある。」


 後ろから、ざわざわと騒ぎが、陰口とはまた違ったうねりを持ち始めていた、悪意と好奇が、職員あるいは、その商会の関係者へと、標的がうつった。


 それも気味が悪いほどに、素早く。


「皆様 そのような事実はございません」


 否定した声よりも、大きくミサカが、暴露する。


「関わった役員は、ナガレと言って、お前の親戚筋にあたる、お前の給与にも反映してたよな、いつもより多めだったろ、まぁ、これ以上は、黙っておいてやってもいいけどね」


 そのミサカの声よりも大きく、、疑いの声が怒号へと、かわりはじめている。



「この怪しい連中の言うことなど、真に受けませんようにお願いします、腹いせに適当な事を言っているだけなのです」


 後ろから、ジリジリとにじりよりそうな集団に気圧されそうになりながらも、目の前の職員は弁明を続ける。


「おう、2ヶ月前のロービン商会の件や、7ヶ月前から続けている、同期のアレンとのちょろまかしとか、まだまだ出てくるなぁ、それを証明する書面もあるから、まともに役人に訴えれば、いやいやすまん、帰るぞアサギ、関わったらロクな事になりそうもない」


 その言葉を聞くやいなや、もう帰りたいと願うほどに待っていた私はむんずり、ミサカを握りしめて、商業ギルドから、一目散に逃げ出した。


 あちらこちらから、職員に詰めったり、あるいは、数十人で、一人を取り囲もうとしている姿を見て、さらに私は足を早めた。



 元凶に近いミサカは事も無げに、あっけらかんとしていた。



「まぁ勝手に売ればいいと、わかっただけでも大収穫と思う事にしようか」



 疲れからか、そうだねと答える代わりに、ため息をついた。



 望まぬものは、望まぬほどに集まる。

 望んだものは、望んだ分より足りない。


 その言葉が、心から口を通って、ため息をつかせたのだろう。

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