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在りしの自尊心

どうしようもない。


クラスに馴染めないのは、そいつのコミュニケーション能力によるものだ。


小学校四年生なら知っていて当然の事だと思う。


僕が、知っているのだから、僕より二十歳以上も年上の教師が知らないはずがないのだけど。


「サナエ君も友達いないでしょ、家もそれなりに近いし、ちょうどいいじゃない」


わざわざ、放課後の職員室に、呼び出されて、ディスられるとは思わなかったし、そもそもの話、その友達がいないから、仲良くなれ理論は、不良の温床にだってなり得るのだけれど。


誰もつるまないから、悪いやつらと手を取りましたといったら、主に頭とか精神とかそういった類いで心配になる。


そんな事を思っていたら、ため息をつかれて

しまった。


こっちが、ため息をつきたいぐらいなのに、その辺の機微と言うものがわかっていないのに、厄介者を押し付けた先生は、他のデスクワークにうつるからと話を打ち切った。



「文句が顔から出ているよ、行ってらっしゃい」


その一言を添えて。



風邪で、長期間休んでいる分のプリントを届けるついでに仲良くなれとか、無茶苦茶だよ。


最近の情勢と言うものが分かってない。


自分で頼んだ宅配便にすら、居留守をつかう時代において、そんな事が可能なはずない。


いつまでもプリント届ける子供が、友達と言う概念を持たないでほしい。


風邪じゃなくて不登校かもしれない。

そんな噂が出来上がるクラスであり、堕落している世の中だからさ。



というか考えたら郵送にしたらいい。

どのみち、ポストにまとめて突っ込むんだからさ。



そんな事を考えながら、律儀に届けた可愛い小学生時代。


仲良くなったわけでもないけど、細々と会話ぐらいはするようにはなった。



中学、高校に入ると、そいつは人気者になった。


学校のアイドルから、マジもののアイドルになったからだと思う。


コミュニケーション能力はなくとも、顔のよさやスタイルの良さという見てくれは、その頃になれば、大いなる武器になるようだ。


それに比べて、コミュニケーション能力と思っていたものは、キズの舐めあいのようなものだった。


一人一人離れていくのは当たり前だった。


ただの屁理屈ばかりの賢いと思って並べた言葉を身に纏い笑っていたのだ。


武器などもたず、どこかの輪に入る事をよしとしなかったのだ。


「上っ面だけだね 本当」


「サナエ 強がってない? 苦しくない?」



そう言われる度にめんどくさいものだった。



空気になりたいと思っていた。


他人の役にたちそうもない僕が、その場にいるのが、申し訳なく思うから、空気になりたいと自棄のような思いでいた。


空気はなくてはならないものと、そこまでの価値観を見いだせるかと自問自答したこともあったが、そんな大層な意味で、使ってなどいないと、割りきる事にした。


それなりにその他大勢の中にいながら、読書やゲームに居場所を求めながら、進路に焦りながら、バイトを転々とするような半歩ずれれば、ニートと呼ばれるようなものだ。


そんな大人だ。


時折アイドルになったやつから、電話がかかってくるのは、残された自尊心のようにも思えるが、こんなものが、自尊心とも思えるはずもない。


「変わらないね 羨ましいぐらい」



何かができるはずで、何も出来ないはずだ。


ちっぽけな事はできる。

大成することはない。


可愛いげのない大人だった。


「今さらだ、天下のアイドルだろうが、神様にだって変えられないよ凡人の僕だって意地があるもんだ」



そんな事を事あるごとに言っていたからだろうか。


だからだろうか。



月日とやらは流れて、僕は畳の目を数えている。


人の形をとった小さな紙となって、在りしの自分を思い出していた。


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