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第07話 帰還

「ギョエー! こっち来んな!!」

「ミミ右へ避けろ!」

 半分ミミを押しのけるようにした俺は、ミミがいた場所に向かって、鋭い角を前面にして体当たりしてきた『角ウサギ』を、左手に付けている楯で弾く。それは、パリーとシールドバッシュが合わさった形になったため、弾かれた『角ウサギ』は俺の頭上を越え、後方にいたティアの足下へと落ちた。

「シェーラ!」

「任せろ!」

 一瞬焦った俺だったが、シェーラが直ぐにフォローに入り『角ウサギ』を仕留めた。

 念のためだが、『パリー』は楯で敵の攻撃をそらす技術で、『シールドバッシュ』は楯で敵を弾き飛ばす技術だ。今回は、『角ウサギ』の突進に対して、こちらも全力で突っ込み、金属である程度補強されているとはいえ木製の楯で鋭い角を真正面から受けないように反らしたつもりが、その相対速度ゆえにこう言う結果となった訳だ。

「何よあれ! 角ウサギって、もっと、こう、弱々なキャラでしょ!! 初心者のエサ的な!! 全然違うじゃない! めっさ早いし! あの角! 刺さったら死ぬるっつうの!! 100パー!! 100パー死ぬる!!」

 この世界の『角ウサギ』は、普通のウサギの額に20センチ~25センチ程の角が生えているだけの小型モンスターだ。だが、その突進速度は速く、その角の鋭さ、太さは十分に槍に匹敵する。要は、地面を高速で移動して跳び掛かってくる槍だと言える。スライムなどより、よほど危険なモンスターだと言える。

 今回のこれは、西外門へと向かって帰りがけ、俺の『気配察知』スキルが地中に『角ウサギ』と思われる反応を見つけた事に端を発する。

 当然のごとく、ミミのヤツが「肉!! 狩るよ!!」と言う訳で、シェーラの『地裂斬』を使って巣穴から追い出したのだが…、どうも複数の出入り口があったらしく、思わぬ所、つまりミミのそばから飛び出てきて、と言う訳だ。

 まあ、すったもんだはあったが、今の『角ウサギ』で丁度俺たちのレベルが『4』に上がった事だし、良しとしよう。「肉も手に入ったしね~」…と言う事だし。

 今回のレベルアップは、補正値がゼロだった項目にも、三回に一回だけ『+1』される回だ。ある意味、最も大きな変化が起こるレベルアップだと言える。

 そして、今回のSPだが、俺は予定通り『運』へ、ミミとシェーラは『MP』へ、ティアは前回に引き続き『素早さ』を引き上げた。ミミとシェーラが『MP』を上げたのは、スキルレベルを上げるための『MP値』の底上げのためだ。

 ティアの場合は、自身に『歌唱』スキルによる付与効果が掛からないため、他の者に迷惑を掛けないように、と言う事らしい。確かに、回避をある程度やってくれるだけで、守る側も大分楽になる。

 現在のステータスは以下の通りだ。

 

 

  ロウ  15歳

  盗賊  Lv.4

  MP   54

  力    1

  スタミナ 1

  素早さ  10

  器用さ  10

  精神   1

  運    3

  SP   ─

   スキル

    スティール Lv.1

    気配察知  Lv.1

    隠密    Lv.1


  ティア  15歳

  歌姫   Lv.4

  MP   100

  力    1

  スタミナ 5

  素早さ  4

  器用さ  1

  精神   15

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    歌唱   Lv.1


  ミミ   15歳

  炎魔術師 Lv.4

  MP   130

  力    1

  スタミナ 3

  素早さ  5

  器用さ  1

  精神   15

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    ファイヤーボール  Lv.1

    ファイヤーアロー  Lv.1

    ファイヤーストーム Lv.1


  シェーラ 15歳

  大剣士  Lv.4

  MP   58

  力    10 +2

  スタミナ 10

  素早さ  3

  器用さ  1

  精神   1

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    強力(ごうりき)   Lv.1

    加重   Lv.1

    地裂斬  Lv.1 

 

 

 所で、ティアのMPだが、事実上ほぼ無駄になっている。なぜなら、彼女の『歌唱』スキルは、一分間に1のMPを消費するので、そのままでも100分間は発揮させ続ける事が出来る訳だが、実際は、MPの自然回復が30秒に1有るため、200分間歌い続けることが出来ることになる。まあ、さすがに、そういう状況はあり得ないが。

 そして『MP』は、150、200、300、500…と、一定の値に達すると、自然回復速度が少しずつ上がってくる。そうなれば、もう……。と、言う訳で、ティアはほぼMPを気にする必要がないって事だ。

 ただ、良い事ばかりではない。ステータスの各スキル名の下に、現在の『スキル経験値』を表すバーが小さく表示されているのだが、彼女の『歌唱』は、このバーの伸びが俺たちのスキルに比べて遅い。つまり、スキルレベルが上がりにくいって事だ。良い面、悪い面、色々ある。


 SPの振り分けが終わった俺達は、また西外門を目指す。

 途中、もう一匹『角ウサギ』の反応を見つけ、ミミの「ヤル!!」の宣言で、前回同様の方法で狩った。今回は前もって、全ての出入り口を確認した上で、一カ所だけを残し埋める事で前回の二の舞を演じる事はなかった。そして、俺も『スティール』を実行する余裕があった。ただ、残念ながら、魔石だったけどな……ホント、残念。

 結局、最後に狩った『角ウサギ』は、血抜きをしながら俺が持った。最初の『角ウサギ』はシェーラがずっと持っていてくれている。

 さて、今回の、と言うか、初めての俺達の成果はかなり上々だと思う。そうなった最大の理由は、先輩冒険者達が低レベルモンスターだけ残してくれていた事だが、もう一つは、この西外門から今日最初に出た新成人冒険者は俺達が最初だったという事だ。つまり、先輩冒険者達が準備してくれていた最適な狩り場を、真っ先に荒らし回る事が出来た、と言う事である。

 当然、明日からは今日のように行くはずがない。ただ、その分、俺達の『レベル』は上がっており、経験も積んでいるので、その分はプラス条件となる。

 まあ、何とかするしかないんだよな。ってか、何とかしなくちゃいけない。命と生活が掛かってるからな。

 そんな決意を胸に、俺達は西外門をくぐった。門の衛士達は笑顔で迎えてくれた。

「ホントはさ~、時間があれば、門のそばでスキルのレベル上げすっかな~って思っちょったんよね~。ま、無理だろうとも思っちょったけどさ」

 ミミやシェーラのような攻撃系『スキル』の場合、安全にレベル上げできる場所は限られている。その場所の一つが、外門のそばって事だ。

 魔法をぶっ放しても問題なく、モンスターに襲われる可能性も低く、仮にMPがゼロの状態で襲われても直ぐに門内へ逃げ込める。

「あと、二、三日は難しいだろう。それまでは戦闘中に使用して、少しずつでも上げるしか無いな」

「だやね~、私とシェーラはそうするきっやないか。あ、一応、ロウもスティールは同じだやね~」

 シェーラの意見にミミも同意する。あと、ついでに思いだしてくれて、ありがとさん。

「俺のスティールは空打ちできないから、二人以上に面倒だけどな」

「うん、そこは何とか頑張れ!」

 はいはい、適当な応援、ありがとさん。

 ちなみに、現在ティアは、保育園や幼稚園で子供達が移動する時唄われる、森の妖精だが妖怪だかのアニメ映画の曲を歌って、『歌唱』スキルのレベル上げを実施中だ。ステータスを見ると、『素早さ』『器用さ』『スタミナ』に『+2』が入っている。トータル『+6』の補正値だ。レベルが4に上がって『精神』の補正値が3上がって15に成ったとはいえ、この値はかなり大きい。彼女に、何らかの思い入れがある曲なのかもしれない。

 そして、その後、ジプシーの歌を唄ったんだが、『力』と『精神』に『+1』しか入らなかった。ティア的には、ジプシー=旅=移動と言うイメージで唄ったらしいのだが、思ったような付与が掛からなかったようだ。まあ、彼女が唄ったそのジプシーを題とする歌は、歌詞的にはジプシーの生活や感情が中心で、旅や移動については入ってないしな。何でも古い時空融合系ロボットアニメのエンディングらしい。

 この失敗を見て、ミミが「それ唄うなら、それじゃなくって、一個前のヤツのエンディングの方っしょ!」とか言って唄わせていたのだが、これは『スタミナ』『素早さ』に『+2』の補正値が入っていた。その後、今日最初に唄った同名の曲を唄うと、『スタミナ』『素早さ』に『+3』の補正値が入った。『歌唱』スキルは思ったようにはいかない……

 

 往路同様に、復路も俺達は目立っていた。言うまでもなく、ティアの歌及び伴奏のためだ。往路と違うのは、ちらほらと俺達と同じ新成人がおり、「あの娘、王子の……」などと言う呟きが漏れ聞こえる点だ。新成人以外の者たちには、歌に聴き惚れていて彼らのそんな呟きは耳に入ってはいない。

 一応、ティアの『歌唱』は内門までで止めさせた。さすがに街中まではまずい。

 逆に俺は、『気配察知』をMPの限り使い続けているがな。この当たりは、スキルの表面上の特性差故だ。

 そして、俺とシェーラが持っていた『角ウサギ』だが、西内門をくぐって3分と歩かない位置にあった屋台のおっさんが買い取ってくれた。二匹で16ダリ。悪くない額だと思う。13匹狩れば、四人分の宿代+食事代がでる計算だ。持てれば、だが……。

 その後、身軽になった俺達は、西の冒険者ギルドまで急ぎ足で向かった。

 その時間のギルドは、午前中に来た時と打って変わって人で溢れていた。それは、建物の中だけで無く、外も同様だ。基本的にパーティー単位で行動する冒険者だが、換金等に全員が立ち会う必要は無く、そう言ったメンバーがギルド前で換金を待っている訳だ。

 俺達もそうするべきなのだが、今回は初回という事と別件も有り、全員で入っていく。

 人で溢れかえっているギルド内に入ると、ミミのヤツが、ボソリと「人がゴミのようだ」なぞと、意味不明な事をほざいている。

 俺達四人が入っていくと、直ぐに、入り口そばにある一般受付窓口からロミナスさんが声を掛けてきた。

「おおっ、あんたら無事に帰ってこれたようだね。良かったよ。毎回、この日は、帰ってこない子が幾人かいるからね。で、成果はどうだい? 普通は向こうで精算するんだけどね、しばらくあんたらはここでやのさね。雑魚寝できる位には稼げたのかい?」

 ロミナスさんの言葉づかいはともかく、俺達を見た時の表情は、本当にほっとしたのがはっハッキリ分かるものだった。本当に心配してくれていたようだ。

「心配をおかけし──」

「ニョホホォ~、雑魚寝ですとぉ~? これを見るが良い!!」

 俺が礼を言おうとするのに被せて、ミミのヤツがアホな事を言いながら、小汚い小袋を受付カウンターへ置いた。魔石を入れた袋だ。

「ほう、これは、また、お見それいたしました、だね。そう言えば、今朝もいったかね」

 ロミナスさんは、ミミの失礼な物言いに気にした様子も無く笑って答え、袋の中から魔石を取り出すと数値ごとに分けていく。まあ、八割は1ポイントの魔石なんだけどね。

「あー、残念だったね。74ポイント、74ダリさね。新人割引がきく宿でも、個室は四人なら80ダリさね。6ダリ足りないね。まあ、80ダリじゃ食事代が足りないから、もっと足りなんんだけどね」

 苦笑いしながらそう言ってくるロミナスさんの前に、再度ミミがもう一つの小汚い小袋を置く。ニヤニヤしながら……。

 その小袋を見たロミナスさんは、その外側の膨らみ方を見て、「魔石じゃなさそうだね」と言いながら、袋を開けて10本の小瓶を取り出した。

 その小瓶を見たロミナスさんは、2秒ほど考え込んだ後、俺の方を見た。

「ひょっとして、これは、盗賊の坊やのスキルで手に入れたものかい?」

 ロミナスさんは、今朝の会話で俺達のスキルを覚えていたようだ。

「はい、そうです。あと、魔石の1/4位もスティールで手に入れたものです」

 俺の返事を聞いたロミナスさんは、「チョット待っときなね」と言って、一本の小瓶を持ってバックヤードへと入っていった。そして、一分程して戻ってくる。

「鑑定持ちに確認させたよ。こいつは、正真正銘間違いなく低級回復薬さね。質に関しては、市販品より若干良い位さね。買い取りなら、一本7ダリで買うけど、どうす…」

「売ったー!!」

 また、ミミのヤツが被せて…… 全く……。

「ロミナスさん、すみません。うちのアホが。 一応、10本中6本を売ります。そして、この4本はお返しします」

 俺は、ミミの失礼な行為を謝罪した上で、今朝『支援品』としてもらった4本の『低級回復薬』を返品した。

 これは、帰りがけ全員で決めた事だ。支援用のポーションを持ったまま、ドロップ品のポーションを売却するのは、やはり問題があるだろう、って事だ。幸い、4本のドロップ品を売らずとも、金銭的には問題が無い事も分かっていたしな。

 ロミナスさんは、若干驚いた表情をしながらも、微笑んで受け取ってくれた。

「律儀だね。分かったさね。この4本は受け取るよ。6本の買い取りだね、魔石と合計で116ダリ、受け取りなね」

「ニョホホォ~、角ウサギ代も入れて132ダリ! 一人当たり33ダリ!!」

「やったね、ミミちゃん。少しだけど、貯金も出来るね!」

 ティアとミミが、両手を握り合って飛び跳ねながら喜び合っている。

 この33ダリを日本円にすれば、3300円~6600円ほどとなる。命をかけて、これ、と考えれば、あまりにも安い金額だろう。だが、この世界の命の代金がそれだけ安いという事でもある。

 飛び跳ねる二人を見ながら、そんな事を考えていると、シェーラが目で俺を促して来た。そうだった、まだ要件は終わってなかったんだ。

「あ、ロミナスさん、これもスティールで出てきたんですが、売れますか?」

 そう言って出したのは、あの『ボーンナイフ(仮)』だ。

「ボーンナイフのようだね。どのモンスターから出たんだい?」

「痩せ狼です」

 ロミナスさんは、しばらく刃の部分などを確認した後、先ほど同様「ちょっと待っときなよ」と言ってバックヤードへ内へと消えていった。

「売れるかな?」

「5~10ダリで売れればラッキーでないかい?」

 ティアとミミは、ロミナスさんが消えたバックヤードを見ながら、期待を込めた会話をしている。

 俺としても、高く売れるに超した事はないのは当然だが、『痩せ狼』からだからな~、と言う思いがあるため、あまり期待はしないようにしている。

 そしてロミナスさんは、今度も一分程で帰ってきて、彼女から出た言葉は意外なものだった。

「牙狼ナイフと言うらしいね」

「牙狼ナイフ?」

「おっ! 骨じゃ無くって牙だったんかい!」

「名前はかっこいいね」

「そぉかな? ヤムチャっぽくって微妙くないかい?」

「あれって、牙狼じゃなくって、狼牙じゃなかったっけ?」

 そんなミミとティアの会話を無視して、「売れますか?」と確認する。

「買い取るとしたら35ダリさね」

「エーッ!! マジ!? 売る! 売る!!」

 俺達に一切の相談無く、売ると言うミミをシェーラが止め、ロミナスさんに尋ねる。

「思ったより買い取り価格が高く思えるのだが、理由をお聞きしても?」

「ああ、性能はともかく、一応マジックアイテムだからさね。これ位には成るさね」

「「「「マジックアイテム!?」」」」

 俺達四人の声が初めてハモった瞬間だった。そんな俺達の様子に笑いながら、ロミナスさんは説明してくれた。

「切りつけた相手から、少量のMPを吸い取って使用者に与えるそうさね。と、言っても、多分、一刺しで1ポイント位だろうって事さね」

「微妙~」

 ミミの意見に、今回ばかりは他の三人も同意だった。

「一応、この手のマジックアイテムは、刺している時間が長ければ吸収するMPが多くなるのが定番だからね、それほど捨てたものじゃないさね。どうするね、売るかい?」

 ロミナスさんの説明を受けて、四人で話し合った結果、売却する事にした。その理由は、シェーラの「痩せ狼なら、また手に入る可能性は高いのでは無いか?」と言う話に納得したからだ。

 そんな訳で、俺達の個人収入は、一人当たり41ダリで3ダリ余り。ミミはホクホク顔だ。まあ、俺もそうだが。

 そして最後に、ロミナスさんにお願いして、『回復草』など王都周辺で採取できる植物の実物を見せてもらった。ロミナスさんは、ついでに、と、初心者がよく間違って採取してくる植物も見せてくれる。そして、それは正に今日他の新成人冒険者が間違って採ってきた物だった。

「ミミちゃん! やっぱりアレ違ってたよ!」

「ヤバ! メッサ、ヤバ! ティア、グッジョブ!!」

 午前中、二人が言い合っていた『回復草(?)』が正にその『よく似た違う植物』だったようだ。

「まあ、新人の誰もが一度は通る道さね」

「イーヤーダー! 絶対、そんな道、通ら~ん!!」

 俺も、そんな道は通りたくない。気をつけよう。

 

 ギルドを出た俺達が向かったのは、ロミナスさんに紹介された宿へだ。新成人冒険者向けにギルドと提携する宿で、新成人限定で通常より安く泊まる事が出来る。価格差は3ダリ程度なのだが、新成人冒険者にはその3ダリの差が大きい。そして価格だけで無く、何より一定の安心感があるのも大きい。一定の質、そして安全度をギルドが保証していると言う事だから。女性冒険者のいるパーティーには、特に大事なところだろう。

「あのー、ね、シェーラ、どうする?」

 その宿へと向かう道すがら、ティアがシェーラに若干恐る恐るといった感じで話しかける。だが、シェーラはティアの言った意味を理解していなかったようだ。

「どうする、とは?」

「パーティーの事。明日以降、どうするのかな、って思って……」

 そう、シェーラとは、今日パーティーを組むに当たって、今日の結果で明日以降どうするかを決める、と言う事になっていた。

「ああ、その事か。そちらに問題が無いのなら、こちらからお願いしたい」

無問題(もうまんたい)!! よっしゃー! これで、オスカル完全Getだぜ!!」

「もうまんたい? おすかる?」

 思いっきりハテナ状態のシェーラの肩に手を置き、俺はクビを横に振る。

「いつものアレだ。気にするな。まあ、要は、大歓迎って事だよ。なあ」

 そう言って、ティアの方を見ると、彼女は今日一の満面の笑顔で「もちろん!」と答えた。

 その後、なぜかGetが歌詞や題名に入っている曲をメドレーで唄いだした。ブルータス、お前もか……。ヅカ系恐るべし。

 ってか、それはともかく、歌詞にGetが入っている曲と言っても、現状に合っていない曲が大半なんだが……。アメリカでは『男のズボンから飛び出しているモノ』を表す題名のアニメ主題歌はまだともかく、もっこり男のエンディングは特に……。

 そんな益体もない事を考えていると、日本語(?)の疑問から解放されたシェーラが復活したようだ。

「そうか、感謝する。実際、今日の事で色々思い知った。スライムは無論、角ウサギですらアレだ。最悪一人でも…などと考えていた自分がどれ程思い上がってたか、今更ながら分かる。何より、戦闘面もだが金銭面に関しては、自分だけでは絶対にこの金額は無理だっただろう。良くて雑魚寝だな。……そう言う事で、こちらこそよろしくお願いする」

 彼女的にも、思う所が有ったようだ。そして彼女にも、俺達と組む事にメリットがあると言う事か。

 一方的に支える関係は長持ちしない。互いに支え合う関係で無くては。

 まだ一日しか過ごしてはいないが、彼女が信頼できる人間だという事は分かる。自身の役割を理解しており、即座にティア達の前に出てくれた。そして、ティア、綾乃の事を知っていて、その事に全く言及しない点が、その人間性を表していると思う。

 多分だが、孤児院で一緒に育ってきたトルト達と組むより、彼女と組めた方が良かったと思う。そう思える程に、能力・性格共に信頼できるって事だ。まあ、アリオスとトルトに関しては、あの場での言動と行動で大きく幻滅した、って事が大きなマイナスになっているんだけどな。

 そういえば、あいつらどうなったんだ? 状況は俺達と全く同じだからな……。奴らの前世が誰で、天川との関係がどの程度か、によるとは思うが、天川の…ロムンの支援を受けられたのだろうか?

 中学一年から三年間以上恋人同士だった立花すら、あっさり切り捨てるヤツが、今世でただの孤児でしかない二人に、必要以上に肩入れするとは思えない。多分二人は、ヤツから無視されて、同様に無視された元同級生とパーティーを組む事になったんじゃ無いかと思う。

 それとも、他の転生者に大商人や貴族がいて、その庇護下に入れたのか? いや、そう言う連中は、多分、天川と組むはずだから、やはりハブにされでいる可能性が高い。

 そういえば、同じ転生者とはいえ、立場が俺達のような孤児のように冒険者にならざるを得ないような者ばかりとは限らないな。そうなれば、転生者で冒険者になる者の数は少なくなる訳で、パーティーメンバーを得られなかった可能性すら有る、か……。 まあ、貧富比率的に考えて、その可能性は低いとは思うけど。

 アリオスとトルトについてはともかく、俺達は、再度パーティー結成を誓い合い、喜び合った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >実際は、MPの自然回復が30秒に1有るため、200分間歌い続けることが出来ることになる。  歌っていないときは、1分でMPが2回復。 歌っているときは1分で、消費が1の回復2で、差…
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