表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/50

第30話 カーリー

 今回は、カルトさん達の馬車で一緒に王都まで帰った。この一帯の『転生者』は既にリストアップ済みだったからだ。

 そして、王都に帰ってきた俺達を待ち構えていたように、アンデッド出現が伝えられた。

「昨日、帰ってきたばっかりじゃん!!」

 そう言うミミに、今回ばかりはロミナスさんも申し訳なさげにしている。

「すまないが、頼めないかい?」

 俺達は引き受けた。ミミに至っては、『スキルの実』の事を思い出して、嬉々として、だ。更には、そのまま夕方の時間から出発しようとする有様だった。さすがにそれは止めたが。

「祭りじゃ~!!」

 不謹慎な事を言うミミの両頬を、思いっきりつねってやったのは言うまでもない。

 だが、ミミの言い方はともかく、ある意味現状の異常さを良く表している言い方な気もする。

 その日、また、準備を行い、翌朝には南門から出発した。

 今回のアンデッドは『スケルトン』だ。前回の『ゾンビ』よりレベルが高いため、『スピーカー』付き『般若心経』でも消滅までの時間が遅くなるかもしれない。更に、消滅距離も短くなると思った方がいい。

 ただ、『ゾンビ戦』で『スピーカー』のスキルレベルが1上がっているので、その分のプラスがあると考えれば、大きな差は無いと思っている。

 この馬車移動中、いつもの、うんこたれ蔵な『競馬ソング』や『ヒールソング』だけで無く、ミミ推奨によって加速装置で有名なアニメのテーマソングを歌わせたのだが、速すぎた。馬や馬車はともかく、乗っている俺達が揺れに保たなかった。更に、馬達のスタミナ問題もあって、使用は直ぐにやめる事になってしまった。ただ、その後、何度も馬達がその曲を求める場面があり、ティアが苦労していたりする。馬達にとって、あの速度は嬉しいものだったようだ。

 途中の宿泊地で、俺も『スピーカー』付きで『加速装置』を試したのだが、コントロールが出来なかった。『器用さ』補正値で何とかなるレベルではなかった。『素早さ』に+24の付与はヤバい。


 目的地に着いたのは、王都を出発して一日半が経過した頃だった。

 そこは、南の主要街道で、村と町のほぼ中央に位置す場所だ。そのため、道以外には何もなく、周囲には森と川と山しか無い。今までであれば、ミミの炎魔法は使いづらいところだが、『エレメント』を得たミミには全く問題ない。

 『エレメント』はMPは消耗するものの、火を消す事も可能だ。対象の一部だけを燃やし、それ以外は燃やさないようにするなどと言う事も出来る。故に、燃焼物が大量に存在しいる森においても、問題なく使用が可能なのだ。

 俺達が着いた時点で、『スケルトン』発見から既に四日が経過している。そのため、周囲には大量の『スケルトン』が溢れかえっていた。

 一応、周辺の村や町から冒険者達が集って、ある程度は削ってはいたようだが、絶対数が少なすぎるため、焼け石に水状態だったようだ。

 今回は、俺達が連戦のように、王都から来る応援の冒険者達も連戦な訳だ。そのため、前回と同数の応援は来ないだろう。

 いくらアンデッドの討伐が事実上の義務とは言え、自分たちの生活が出来なくては話にならない。この辺りはアンデッド討伐戦の報酬が少なすぎるせいだ。

 通常は、この安い報酬でも大丈夫なのだが、これが、今回のように僅かな日時で連続となると話は変わってくる。それを理解している冒険者ギルド側も、強くは言えない。だから、多分、今回王都から応援で来る冒険者は、それ程多くない事に成る。

 だからこそ、一日でも早く『不浄の泉』を消滅させ、湧き出す『スケルトン』の数を少しでも少なくする必要がある訳だ。故に、到着した時間が昼近い時間だったにも係わらず、その時間から『不浄の泉』探索に出かける事になった。

 探索に出る前に地元の冒険者達から、『スケルトン』の当初の発見場所、移動してくる元の方向などを聞いてあったので、おおよその当たりを付けてそちらへと向かって進んで行く。

 20分程進んだ辺りで、木の枝をへし折るような音が聞こえてきた。

「気をつけろ! 大物がいるぞ!」

 シェーラが注意を促してくる。

「大スケ来たか!!」

 ミミは歓喜の声を上げていた。

「巨大スケルトンだと言うなら、ティアの歌唱は関係ないって事だな」

 俺がそう言うと、『般若心経』を唄っているティアの顔が緩む。やっぱり気にしていたようだ。

 周囲の『スケルトン』を消滅させながら、音のする方向へと進んでいくと、(じき)に木々の間に巨大な骨の一部が見えてきた。

「大スケ来た────!! ロウ! スティールでGO!!」

 ミミがそう言って来る前には、俺は前方の通常サイズの『スケルトン』が消滅したエリアへと向かって走り出していた。一応『隠密』も起動している。

 『巨大スケルトン』へと向かって走る俺は、違和感を感じていた。その違和感の正体に気付いたのは、『巨大スケルトン』の足下に達した時だ。

 周囲の木々のせいで、俺が見えない 『巨大スケルトン』はともかく、周囲の一般サイズの『スケルトン』も俺を全く見ようとしていない。認識していないようだ。

 俺の『隠密』の現在のスキルレベルは14。視覚情報まで完全に影響を与えられるレベルでは無い。実際、森でのモンスター達で確認している。だが、周囲の『スケルトン』達の様子を見ると、俺の存在を全く認識していないように見える。

 もしかしたらスケルトンは、外観どおり目が無い事から、視覚情報は元々得られておらず、気配などの他の情報を元に、敵を認識しているのかもしれない。そして、その気配などは、現時点の『隠密』でも、十分に隠蔽が可能だという事。だから、ヤツらは俺を認識できていない。そう言う事か?。

 俺は、そんな考察をしながら、『巨大スケルトン』の足へとタッチして『スティール』を実行する。そして、今回も放たれた出現光は『超レア光』で、現れたのは『実』。外観的にも、『スキルの実』だと思われる。

 後方から、ミミの声と思われる歓喜の叫び声が聞こえてくる。その声を聞きながら、彼女たちの元へと駆け戻って行く。その間、やはり『スケルトン』は俺の存在を認識できていなかった。

 そして、『巨大スケルトン』に対する攻撃が開始される。

 基本的には、前回の『巨大ゾンビ』の時と同じだ。シェーラの『地裂斬』で足を切断して行動阻害、ミミとティアの『火炎旋風』と『般若心経』でダメージを与えつつ周囲の一般サイズの『スケルトン』を消滅させ、修復をさせないようにする。

 今回の場合、森という環境故に、ミミのヤツのMP消耗率が高い。その辺りは俺がフォローするしか無い。俺は、全体のフォローのために走り回る。直接攻撃なんて出来ないからな。手裏剣なんて投げても全く無駄だし。一応、メインの仕事は『バリアーシールド』を使う事だ。だが、シェーラが上手くやっているので、今のところ出番は無い。

 この場に至るまでの間、『低級MP回復薬』は、更に確保してあるので、バンバン使う。遠慮はしない。全体の状況を確認しながらも、両手に持った『低級MP回復薬』を皆に掛けまくる。気がつけば、全員ポーションまみれだ。

 今回の『巨体スケルトン』だが、ミミの『火炎旋風』によって周囲の木々が完全に焼かれたため、やっと全身が見えるようになった。その姿は、片手剣とスモールシールドを持ったタイプだ。

 今回の『巨大スケルトン』も魔法やスキルを使う様子は無い。あの『修復』がスキルなのかもしれないが、攻撃系のものは無いようだ。

 俺達は、失敗しない事に注意して、戦闘を続けた。そして、その甲斐あってか、俺が『バリアーシールド』を使うケースも1回しか無く、そのまま『巨大スケルトン』を消滅まで至らす事が出来た。

 今回の『巨大スケルトン』のレベルも27。俺達のJOBレベルも1上がった。

 ミミに促される形で『スキルの実』を食べたシェーラは、『マジックブレード』と言うスキルを手に入れていた。それは、MPを消費して、自身の持つ武器の刃の部分に魔法の刃を発生させる事が出来る。そして、その刃は、刀身以上の長さにすることも可能だと言う。更に、その刃を顕現させた状態での切れ味は、『闇の双剣』の『斬』値すら上回る。

 スキルレベルが上がれば、ただでさえリーチの長いシェーラの大剣が、この『マジックブレード』で延長されることで、更なる長大な攻撃範囲を得ることになる。そして、今まで、切れ味に期待できなかったこの大剣だが、その切れ味も格段のものになる訳だ。う~ん、チート。

「やはり、ロウが食べるべきだったな。このスケルトン戦には役立たない」

 シェーラはそんな事を言っているが、俺が食べたにせよ、攻撃系のスキルを入手出来た可能性は少い。シェーラの『マジックブレード』以上に、この戦いでは役に立たなかったと思う。

「次はロウ! んで、その次は私!! 最終的には、一人二個ずつ!!」

 更なる欲にまみれた事を(のたま)うミミ。そんなミミの両頬は、今回はティアが引っ張って罰を与えていた。

 今回の事で連続三回。どうやら、以前考えたように、巨大アンデッドは『超レア品』しか持たない、と言う事が確定のようだ。であれば、現在のアンデッド出現率が今後も続くなら、あと五個の『スキルの実』は問題なく手に入りそうだ。それを喜んでいいのかどうか微妙な所ではあるのだが……。

 その後、『不浄の泉』探索には、思った以上の時間を要した。やはり、森という事で、視界が悪く遠方の泉が見えない事が大きく影響している。

 泉発見後の事も考え、一旦引き返す事も考えたのだが、ティアが強固に反対した。『般若心経』を唄っている関係上喋る事が出来ないので、『低級回復薬』を両手で持って、これがあるから大丈夫、とアピールだ。

 ティアの状況を見ると、スタミナ的にも精神的にも大丈夫そうではある。あと、喉の方もだ。そして、ティアの熱意に押される形で、そのまま探索は続けられた。

 そして、『不浄の泉』が発見できたのは、それから1時間半近く経った時だった。

「また大スケが出てくる前提で行くかんね!!」

 『不浄の泉』を目前に、ミミが宣言する。ミミの声には、出てこい!と言う欲望がダダ漏れだ。まあ、その辺りはともかく、注意するに越した事は無い。

 『不浄の泉』が『般若心経』によって明滅を繰り返し始めて15分程経った時、急にその明滅速度が上がった。ひょっとして、思いティアに声を掛ける。

「ティア、歌唱スキルのレベルが上がったのか?」

 ティアは頷いていた。やっぱりか。これで、『歌唱』スキルのスキルレベルはやっと8だ。俺やシェーラの一部のスキルが20になってカンストしている事を考えると、圧倒的に遅い。

 だが、『歌唱』スキルだけで無く、JOBレベルも上がっておりそれに伴って『精神』も上がっている。SPまで『精神』に振り込んでいるので尚更だ。だから、前回の『ゾンビ戦』の時と比べれば、『般若心経』の威力はかなり上がっている事になる。当然 『不浄の泉』消滅までの時間も短くなるはず。

 現在の、泉の明滅速度から想定すると、あと10分から15分程度ではないかと思っている。

 そして、それから更に7分程が経過した時、やはりそれは現れた。

「来た────!!」

 森にミミの歓喜の叫びが響き渡る。

 ミミは、叫びながらも小型の『火炎旋風』を放っている。シェーラは、全身が『不浄の泉』から現れるまでは待機だ。なにせ、いくら切っても効果は無いからな。

 俺も、上半身が現れるまでは待機。上半身が出てからは、腕や剣を状況次第では『バリアーシールド』を展開してブロックする事に成る。それまでは、ミミとティアに任すしか無い。

 『スティール』に関しては、『巨大スケルトン』が『不浄の泉』内にいる限りは手出しが出来ない。なぜなら、『不浄の泉』に接触するだけでも火傷のようなダメージを受けてしまうからだ。『スティール』するなら、泉の外におびき出した上でする必要があるが、泉の消滅や、泉から湧く一般サイズの『スケルトン』の始末のことも考えると、位置取り的に良い手ではない。だから、後回しだ。

 『巨大スケルトン』が浮かび上がってくる速度も、『巨大ゾンビ』の時と比べて確実に遅くなっていた。多分『般若心経』の効果が上がっている事が影響しているのだろう。

「全身が出切るまでに、出来るだけ削るかんね!!」

 なぜか、『巨大スケルトン』は一般サイズの『スケルトン』と違って、頭部を破壊しても消滅してくれない。表面を炎や『般若心経』で削っていって体躯を小さくするしか現状では対処方法がない。

 俺とシェーラは、ミミとティアに『低級MP回復薬』を掛け、MPを補充しながら周囲の状況を確認している。無いとは思うが、アンデッド以外のモンスターが乱入する可能性も有るからだ。こう言った局面では、一つのイレギュラーが致命的な状況へと招く事は良くある。用心に超した事はない。命を大事に。

 その『巨大スケルトン』は、出現から3分程して上半身が露わとなった。

 当初、通常の腕が現れた状態では、両手に反りの有る剣を持つ双剣タイプと思ったのだが、そうでは無かった。なぜなら、更にその下から、もう一対の腕が現れたのだから。そして、その両手にも、それぞれ反りの有る剣が握られている。

「カーリー!?」

「別種か!!」

「シェーラ! 左側の腕を頼む! 右側は俺が押さえる!」

 俺はシェーラに指示を出すと、即座に右側、つまり『巨大四本腕スケルトン』の左腕による攻撃を『バリアーシールド』でブロックする。

 この『巨大スケルトン』は、二対四腕を持つ。しかも、その手には全て反りの有る剣を持っていた。その点に関しては、ミミ言う所の『カーリー』ではない。カーリー神が持つ剣は一つのみでも他は生首などを持っていたはず。うろ覚えだが……。

 取りあえず、この『巨大四腕スケルトン』を仮に『カーリースケルトン』と言う事にする。

 その『カーリースケルトン』が『不浄の泉』から姿を現して行くにしたがって、ミミやティアによるダメージを受ける面積は確実に増えて行く。結果として、体躯は小さくなっていた。

 このまま、完全に姿が現れるまでに、どれだけ削れるか、身体を小さく出来るか、が勝負だ。無論、消滅できるのが最適なのだろうが、間違い無く無理だ。

 今回の『カーリースケルトン』は、四腕に剣を持つだけ有って、その攻撃の手数が多い。そのためブロックするために『バリアーシールド』を多用する事になる。俺のMP消費が多い。『MP』をもっと増やしておくべきだったか? いや、俺の成長タイプでは、SPを振り込んでもたかがしれてる。無い物ねだりに過ぎない。自分の特性を利用して戦う以外ない。

 俺は『低級MP回復薬』を頭から被りながら『バリアーシールド』を使い続けた。シェーラも同様に『低級MP回復薬』を被りながら『地裂斬』で反対側の腕を切断している。

 それが効果を発揮したのか、『カーリースケルトン』が『不浄の泉』から完全に出てくるまでに、攻撃が俺達に届く事はなかった。

「残り5㍍!! シェーラ! 足止めよろ!! ロウ! 泉消えたらスティール!!」

 ミミのやつが作戦を再確認するように、声を掛けて来た。俺とシェーラは、それまでの腕から、全身の行動阻害に目標を変更する。シェーラは足の切断だ。

 『地裂斬』によって両足を破壊された『カーリースケルトン』が泉の面に倒れ伏す。そのまま這いずって来ようとするのを『バリアーシールド』でブロック。今まで三回成功した方法だった。だからこそ、油断が有った。

 倒れたまま、ミミの青い炎の『火炎旋風』に焼かれた『カーリースケルトン』の手から、その巨大な曲刀が投げられたのだ。ティアに向かって。

 その瞬間、予想外の出来事に反応できずに、次の行動が遅れてしまった。ティアに向かって回転しながら飛ぶ曲刀、それを目にしたまま微動だにせず『般若心経』を歌い続けるティア。擬似的に引き延ばされた時間の中で、その全てが見えていた。

 絶望とも言えるタイミングではあったが、それでもなお間に合ったのは、国宝級とトマスさんが言った『バリアーシールド』の反応速度と、意識する事で発動可能であるマジックアイテムの特性故だった。

 ギリギリで顕現された『バリアーシールド』は、ティアの目前2㍍で『カーリースケルトン』の投げた曲刀を受け止めていた。

 横にいたシェーラから、長く大きな息を吐く音が聞こえてくる。そして、俺の背中には大量の冷や汗が今更ながらにあふれ出している。

 完全に油断だった。一般サイズの『スケルトン』の投剣を考えれば予測できたはずの事だ。俺はバカだ。

 大量の汗と、悪寒と後悔を無理矢理振り払いながら、俺は『カーリースケルトン』の動きに集中する。もう、絶対に油断はしない。

 そんな決意のもと、ティアの方をチラッと見ると、彼女は笑顔で手を振っていた。彼女は、あの時、一瞬たりとも『般若心経』を途切らす事はなかった。自身に向かって、巨大な曲刀が飛んできている時にでさえだ。俺がブロックしてくれる事を当然のように信じていたのだろう。その事を理解して、再度、二度と油断をしない事を心に誓う。

 その思いは、シェーラも同じだったようで、より集中して攻撃を行っているのが、俺から見ても分かった。

 そして、その甲斐あってか、その後は、特に問題も発生せずに泉消滅、『スティール』、『カーリースケルトン』消滅まで行けた。

 『スティール』は例のごとく『スキルの実』だ。順番どおり俺が食べたのだが、やはり攻撃系スキルではなく、『サーチ』と言う探索系スキルが身についた。このスキルは、前もって記憶させた物体と同じ物が、範囲内にあるとその場所が分かるというものだ。ターゲットの登録には、現物が必要で、同時に記憶できるターゲットは16個だ。

「採取無双じゃん!!」

 俺からスキルの説明を聞いたミミが声を上げた。

「スキルレベル1だと、その範囲が半径10㍍だから、最低でも50㍍位にならないと役に立たないぞ。目視の方が早いしな」

 一応、ミミに釘は刺しておいたのだが、

「スキルレベルを上げればすむ事!!」

 と、あっさりと返された。実際のところは使ってみないと分からないが、無双かどうかはともかく、植物や鉱物の採取はかなり楽になりそうではある。捜し物にも役立ちそう……。

「あ──!!」

 思わず声を上げてしまった俺に、全員の視線が集中する。ティアなどは、『般若心経』を一瞬途切らせたぐらいだ。あの巨大曲刀が目前に迫った時でも途切らせなかったのに。

「どった!? 何!?」

「敵か!?」

 シェーラは、新たな巨大アンデッドの襲来だと思ったようで、周囲を必死で見渡している。

 ミミはともかく、シェーラとティアには謝っておこう。

「悪い、このスキルの事で思いついた事があってさ」

 それだけ言って、ティアが『スピーカー』付き『般若心経』で消滅させた『スケルトン』がドロップした『魔石』を拾う。そして、それを『サーチ』に登録する。

 登録を確認した上で、『スキャン』を実行すると、ステータスボードに似た感じで、脳内に範囲内の3Dマップが浮かび、その中に30を越える小さな光点が見えた。どうやら、その光点が対象物、つまりは『魔石』であるという事のようだ。

 直ぐ横にいるミミには『魔石』の反応はない。どうやら『魔法のウエストポーチ』内の物は探知できないらしい。

 俺は、その脳内マップに輝く光点を認識したまま、意識を腰の『魔法のウエストポーチ』に向ける。そして、『スモールテール』産の『袋』に付随する『一定範囲内の認識した物体を手を触れずに収納できる』と言う機能を実行する。この『認識』が目視だけでなく『サーチ』の結果も入るのではないか、と思った訳だ。このアイテムの説明も『神言』なので、絶対だ。であれば、『目視した』ではなく『認識した』と書かれているのであれば、幅がある事に成る。だから試した。

 結果、俺の脳内3Dマップ内から、全ての光点が消えていた。そして、『魔法のウエストポーチ』に手を入れると、その消えた分の『魔石』が入っている。成功だ。

 一人でガッツポーズをする俺を見て、全く状況が理解できていない皆に説明をした。全員が驚きの声を上げる。当然ミミの声が一番大きい。

 そして、ミミから新たな指示が発せられる。

「ロウ! 回収~! ぜ~んぶ、取れ!! 一個も残すな!!」

 その上で、何やら、変な唄を歌い始める。

「ヒャッハー! 小金持ち~♪ 小金持ち~♪」

 全くもって意味不明だ。ティアまでなぜか参加したそうにしている。さすがに『般若心経』を唄っているから出来ないが。……お~い、戻ってこ~い。

 溜息を一つ吐いた上で、ミミの頭をペチッーと叩いて、正気に戻しておく。若干完全に正気に戻っていない気はするが、まあ、通常どおりではあるだろう。

「あのな、まだ、普通のスケルトンが大量にいるんだぞ! 油断すんな!」

 そんな俺の、有り難い(?)言葉はミミには通じなかったようだ。

「消滅させて、全部回収! 全部独り占め!! うっしゃ~! ティア!やっておしまいなさい!!」

 お前は黄門様か。

 

 俺達は、森の中を道の有る方へと向かって移動しながら、消滅させた『スケルトン』の『魔石』をもれなく回収して行った。

 ティアの喉も今のところ問題はないようだ。

 道に達してからも、殲滅と『魔石』回収を行っている。その上で、更に『低級MP回復薬』の『スティール』もやらされた。……ちょっと忙しすぎないか?。

 ミミのヤツは、先ほどの変な唄を口ずさみながら『火炎旋風』を放っている。『スケルトン』殲滅もだが、『エレメント』のスキルレベル上げも目的のようだ。

 ミミの『エレメント』は、他のスキル、実質的には『ファイーストーム』を変化させる事で実行しているため、同時に『ファイヤーストーム』にも経験値が入っている。うらやましい話だ。

 シェーラも『地裂斬』で殲滅を続けていた。今は、先ほどまでと違って、『低級MP回復薬』を使う事なく、『ブラッディーソード』でMP吸収を行いながらだ。

 今までは、シェーラが『地裂斬』で殲滅した後や、ミミのヤツが『火炎旋風』で殲滅した後も『魔石』は回収しにくかったのだが、『サーチ』と『魔法のウエストポーチ』のコンボで回収できている。ミミの『火炎旋風』跡に関しては、熱気のため、奥までいけないので、全てを回収とまでは行かないが、今までと比べれば十分だろう。

 未回収分に関しては、全ての殲滅が終了したあとに、あらためて回収するという手もある。

 ミミから、『魔石』の回収と『低級MP回復薬』の『スティール』をせっつかれて、

「両方一緒に出来るか!!」

「そこを何とかする!!」

 などと言う会話があったが、それはともかく、俺達は地元冒険者達に合流し、『不浄の泉』消滅の報で彼らを沸かせるのだった。

 その後、夕方ギリギリまで彼らと共に殲滅作業を行った。その際は、自分たちが消滅させた分の『魔石』だけを回収し、他の冒険者の分は放置した。後日までに回収されていない分は、有り難く貰うつもり。ミミには遙かに及ばないが、俺も貧乏性だからな。有る物は回収するさ、当然の事だろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ