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第20話 サーちゃん

   ロウ  15歳

  盗賊  Lv.19

  MP   164

  力    9

  スタミナ 7

  素早さ  40

  器用さ  40

  精神   6

  運    12

  SP   ─

   スキル

    スティール Lv.6

    気配察知  Lv.7

    隠密    Lv.3


  ティア  15歳

  歌姫   Lv.19

  MP   400

  力    8

  スタミナ 21

  素早さ  16

  器用さ  7

  精神   64

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    歌唱   Lv.4


  ミミ   15歳

  炎魔術師 Lv.19

  MP   550

  力    9

  スタミナ 9

  素早さ  22

  器用さ  7

  精神   63

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    ファイヤーボール  Lv.4

    ファイヤーアロー  Lv.5

    ファイヤーストーム Lv.7


  シェーラ 15歳

  大剣士  Lv.19

  MP   168

  力    42 +5

  スタミナ 40

  素早さ  13

  器用さ  12

  精神   6

  運    ─

  SP   ─

   スキル

    強力(ごうりき)   Lv.7

    加重   Lv.3

    地裂斬  Lv.7

 

 今回の『ゾンビ討伐』でレベルは上がらなかったが、スキルはいろいろと上がった。

 俺は、とにかく上がりづらい『スティール』が、一日中使用できた事もあり、2つ上がっている。

 ティアの『歌唱』も、早い段階で1つ上がり、スキルレベル4になった。その上で、経験値バーを見ると、85%程になっているので、次のレベルアップも、そうそう遠くはないはず。

 ミミは、『火炎旋風』のための『ファイヤーストーム』を多用した事で、『ファイヤーストーム』のスキルレベルが2上がっている。それ以外のスキルは、今回はほぼ使っていないので、そのままだ。

 シェーラは、『地裂斬』のスキルレベルが2上がっている。やはり、ミミの『ファイヤーストーム』同様に、大量に使用したからだ。あと、地味に強力(ごうりき)も使っていたようで、スキルレベルが1上がっており、それに伴ってパッシブ効果も+1されて、合計+5が『力』に付与されている。

 今回上がらなかったJOBレベルだが、経験値バーを見ると、90%程になっているため、レベル20という大台にもう少しという所だ。

 ただ、これは、現在の活動場所である森にいるモンスターを狩るとなれば、一ヶ月近くは掛かる。

 『ゾンビ』は弱い割に、レベルが高く、経験値も多かったし、数も半端ではなく、効率も良かった。森のモンスターでは、あんな風には行かない。まあ、のんびり行くさ。

 

 王都に帰ってきた日、俺達は宿屋に帰る前に、トマスさんの鍛冶屋へと寄り、例の超レア品の楯を『鑑定』してもらった。

 その結果は、『バリアーシールド』という名称で、一定範囲内の任意の場所に、任意の大きさで『力場の楯』を出現させられる、と言う物だった。

 更に、この楯は、その『力場の楯』に掛かった力が、使用者には掛かってこないと言う性質を持っていた。負荷のフィードバックが無いって事だ。

 つまり、場合によっては、『力場の楯』を発生させ、それを前面に出したまま前進すれば、前に大量のモンスターがいても、それをかき分けて進む事が出来るという事になる。しかも、この楯の使用者には、楯の重さしか掛かってこない。

 今回の『ゾンビ討伐』でこの楯を使っていれば、一人で『不浄の泉』まで『ゾンビ』を押しのけながら走って行けたかもしれない。まあ、一人だけで行っても意味は無いし、前進を止めた時点で全周囲を囲まれている訳で、そのまま殺されてTHE ENDだが……。

 多分、重量(負荷)制限等があるはずなので、無制限に、とは行かないとは思う。その辺りは、要検証だな。

 あと、この楯によって発生させられる『力場の楯』の強度だが、アダマンタイトクラスと同等で、更に、魔法防御力も光と時空以外は100%近くの防御力があり、光と時空に関しても60%程の防御力を持つという。

 トマスさんいわく、「これは、国宝クラスだぞ……」との事。

 売り払う案も出たが、パーティーの防御力アップ、死亡確率の低下のために自分たちで使用する事にした。

 そして、使用者はティアに決まった。理由は、この楯で『力場の楯』を発生させるのに、1秒間に10ものMPを消費するため、現状MPが無駄に余っているティアが使うのが最適となった訳だ。

 この楯は、通常は『魔法のウエストポーチ』に入れておき、戦闘フィールドに着いた時点で取り出して使用する事にする。下手に街中で持っていて、まかり間違って『鑑定』でもされれば、ろくな事にならならいのが分かり切っているからだ。絶対にバレてはいけない。

 昨日は、そんな感じで、最後まで結構バタバタだった。

 だが、今日は休日。お休み日だ。

 ミミは、朝から例の『魔導師ギルド』へと向かった。

 シェーラは、昨日のうちに渡していた、あの大剣の事で相談があるらしく、鍛冶師のトマスさんのところへと行ったようだ。

 ティアはいつもどおり、お菓子を買って、孤児院へ、だ。無論、俺の分のお菓子代は出してある。

 孤児院へ行かない俺は、一人で『アルヌス』へと来ている。目的は指輪探しだ。

 ティアへ渡す、『婚約予約指輪(骨拾い指輪)』だな。

 勿論、『アルヌス』のような、超高級店で買うような物では無いんだが、出来るなら良い物を、と言う考えもあって、取りあえず最高峰の物を見るだけ見た上で、と言う考えでだ。

 ただの装飾品としての指輪より、出来れば低性能でも『ステータス』を上げるようなマジックアイテムの方が良いからな。まあ、買えるような値段で売っているかどうか、って問題はあるんだが……。

 と言う訳で、例のごとく執事風の店員さん改め、元伯爵様な店長さんに挨拶した上で、見たよ。見たさ……。無理……。絶対無理……。

 ハッキリ言って、値段の桁が違った。『ゾンビ』からドロップした『MP消費1/3リング』を持っているせいで、なんとなく、低性能ならそこまでの値段はしない、と思い込んでいた。でも、高かった。無茶高かった。『力』や『素早さ』に+1程度の品でも、バカみたいに高かった……。

 5万ダリだの12万ダリだの、無理。絶対、無理!。

 元伯爵様な店長さんに、その旨を言っておいとまする。

「今は無理かもしれませんが、数年後なら大丈夫かもしれませんよ」

 店長さんからは、微笑みながら、そう言ってもらえたが、まあ、社交辞令として受け取っておいたよ。だって、無理だし。……5年で買えるようになれば御の字だな。

 微笑む店長さんにお礼を言って、店をあとにした。

 そして、三段しか無い階段を下っていると、店の前で、この店の外観に圧倒されている女性がいた。思わず、この店を始めて訪れた自分や仲間達の事を思い出して苦笑してしまう。

 女性は、俺と同年代で、赤みがかった金髪を後ろに纏めており、服装から見て、完全に一般人のようだ。

 その一般人の女性が、店から出てきた俺へと視線を向けた。その視線は、俺の頭の先からつま先までを二往復する。そして、おずおずと話しかけてきた。

「あの───一般の方ですよね?」

「そうだよ」

「ですよね! あっあの、このお店、一般人が入って良いんですか?」

 やっぱり、以前の俺と同様に入るのをためらっていたらしい。

「ああ、大丈夫だよ。ただ、お客で貴族がいるから、そこら辺だけは注意かな」

「やっぱり貴族、いるんだ……」

 以前の騎士の件でも分かると思うが、貴族とは横暴で当たり前、と言うのが一般庶民での常識になっている。だから、彼女もためらったのだろう。

「店長さんは、元貴族の方だけど、良い方だよ。俺みたいな孤児院出のド庶民とも普通に話してくれるし」

「そうなんだ…… でも、やっぱり、止めとく。元々興味本位だったし」

 まあ、見る限り間違いなく、ただの興味本位だろうな。以前の俺達より遙かに良い服を着てはいるが、それでも間違いなく庶民ルックだ。この店の品が買えるような身なりでは無い。

 そんな事を考えていると、彼女が、先ほどよりも更におずおずとした態度で尋ねてきた。

「あの~、この町の方ですよね。ひょっとして、新成人の方ですか?」

「ああ、そうだけど」

 俺が答えた瞬間、彼女が一気に近寄って来て、先ほどまでとは打って変わった早口でしゃべり出す。

「丁度良かった! あの、託宣の儀で、転生者が現れましたよね! そう聞きました! 私も転生者なんですけど、友人を探してるんです! 第三王子様が転生者で、しかも、笹山北校の生徒って聞いて、探すの協力してもらおうって思ったら、取り次いでもくれないんですよ!」

 王子に、ね。まあ、普通に考えても、一般人を取り次ぐ事は無いよな。仮に取り次いだにしても、あの天川が会ってくれるとは思えない。二重の意味で無理で無駄な事だな。

 しかし、『笹山北校』って言っているって事は、この子も笹山北校生って事か? ……人捜し、か。

「一応、あの場で転生者だと手を上げたヤツは、確か100人以上はいたよ。でも、それが誰で、しかも前世が誰かなんて、誰も知らない。多分、あの第三王子ですら分からないはずだよ。誰も纏めたり、記録を取ったりしてないからね」

 ティアはともかく、ミミの所に確認に来た者がいない。つまり、あの王子ですら、自分から転生者を探したり、前世の職業を確認しようとはしなかったって事だ。多分、自分の所に尋ねてきた者だけを確認したのだろう。

 俺は、彼女の希望を打ち砕く事を言ったはずだが、彼女の顔にはなぜか満面の笑みがあった。

「大丈夫! 私の親友は超有名人だから! 絶対誰かが知ってる!!」

 彼女は、そう、強く言い切った。

 ……親友、超有名人、笹山北校……まさか!。

「おい! 名前は!?」

「えっ? カサリナだけど?」

「違う! 前世の名前だよ」

「あっ、そっち?」

 そして、彼女は前世での名前を名乗った。俺が、なぜ前世の名前を聞くのか、と言う疑問なども全く持たずに。

「私の名前は、桜場桜(さくらばさくら)。探してるのは、立花綾乃(たちばなあやの)。他の二人も綾乃の所に行くはずだから、綾乃さえ見つかればOK!」

 ……桜場か。立花は『サーちゃん』と呼んでいたから、てっきり桜場の方のサーちゃんなのだと思っていたんだが、名前が桜だとは、な。

 しかし、やっと現れた! やっとだ! だが、問題はここからだ……。

「……知ってるよ。俺のパーティーの一員だ」

「本当に!!」

「ああ、……ここで話すのは、ちょっとマズイ。少し移動しよう」

 さすがに『アルヌス』の玄関口で話すべき事じゃ無い。護衛の冒険者もいるしな。

 俺は彼女を誘って、近くの路地へと入った。余り奥へと行くと、変な誤解を与えると思い、大通りから少し入った所だ。

「まず言っとく。今の彼女は、あんたの知っている以前の彼女とは全く違うぞ」

「何言ってるの、生まれ変わってるんだから、当たり前でしょ」

「……そう言う意味じゃない。前世の彼女は、凄い美人だったんだろ? だけど、今は違うんだよ。どちらかと言えば、その反対なんだよ。顔は、な」

「本当に!」

 桜場は驚いたようで、聞き返してきた。彼女だけで無く他の転生者も、無意識の内に『アヤノ』は生まれ変わっても美人である、と思い込んでいる節がある。それが当然、と。

「本当だ。一応言っとくが、ひどいブスって分けじゃ無いぞ。普通とブスの中間ないしはブスよりって感じだ。ただ、前世の彼女を知っている者からすれば、落差から余計ブスに見えるらしい」

「そうなんだ……」

 俺の説明に、桜場もショックを隠し切れていない。

「彼女は、その顔のせいで、転生の記憶を取り戻したその場で、前世の恋人からあっさりと捨てられた」

「なによそれ!! 恋人って、天川君でしょ! どういう事!?」

 桜場は、俺が言った途端に表情を変え、俺に掴みかかってきた。

「詳しく教えなさい!!」

 襟首をガクガクと揺すられながら、俺は、あの場で起こった事を、出来るだけ詳しく説明してやる。

 そして、その全てを聞いて、彼女が発したのは、

「あのクソ天川────!!」

 だった。

 だから、以前ミミと計画した、『ロムン王子半殺し計画』を話してやると、「許可します! やっちゃって!!」と許可を出された。

 一応、今の状況からして大丈夫だとは思うが、念のため聞いておこう。

「と言う状況だけど、どうする? ティア、立花綾乃と会うか?」

「親友なめんな! 合うに決まってるでしょ!」

 彼女は鼻息荒く、断言した。

 ……良かった。本当に良かった。この時俺は、表情に出さないように必死だったが、泣きそうなくらいに嬉しかった。

 これで、ティアは救われる。ティアは、いくつかの段階を経て確実に前には進んではいたが、それでも大きな(つか)えとなっていたのが彼女たち三人の存在だった。その一人が見つかり、更に、天川と違い、以前同様の存在であると言う事は、彼女にとっては非常に大きな事だ。

 ティアは多分、彼女たち三人に会いたがってはいつつも、天川同様に拒絶される不安も抱えていたはずだ。それが、一人とは言え解消される。

 ティアにとっては、あの三人が占めるウエイトは大きい。だからこそ、その存在がマイナスの作用を及ぼすとなれば、天川の時以上に彼女は落ち込むだろう。だが、今回の桜場に関しては、間違いなくプラスの作用を及ぼす。それが分かっているから、嬉しいんだ。泣きたくなるくらいに嬉しいんだよ。

 そんな考えや、感情を表に出さないようにしながら、桜場をティアがいる南エリア孤児院へと誘っていく。そしてその間に、彼女自身の事を聞いてみた。

 彼女は王都の東側にあるカレザール領の領都に住んでいるらしい。そして彼女の家は中規模の商店で、今回は王都にいる領主に、何か許可を得る必要がある父親にひっついて来たという。

 王都で自由になるのは今日だけで、明日にはカレザール領へと帰らなければならないようだ。

 カレザール領の領都であった『託宣の儀』では、20名程の『転生者』がいたそうだ。そして彼女は、その全てに前世の名前を聞いて回ったらしい。だが、笹山北校生は3名いたが、全く知らない者ばかりだったそうだ。

 そして、それ以外は全て一般人で、中には、当時81歳の老人だった者もいたとか。まあ、新幹線だから、老若男女全てがいてもおかしくは無い。俺達修学旅行生が平均年齢を下げていたにしても、だ。

 

 彼女を案内する事40分で、目的の南エリア孤児院まで80㍍程の所まで来た。

「綾乃の歌! 声は違うけど、間違いなく綾乃の歌!!」

 孤児院から、ティアが唄う『天使の翼で抱きしめて』が聞こえてきている。

 この南エリア孤児院は、スラムに隣接する関係上、他のエリアの孤児院より収容されている者の数がかなり多い。そのため、一人当たりの食事量が若干少なくなっており、栄養状態が悪い。

 これが前世であれば、他のエリアの孤児院へと人員を割り振るなり、予算を増やすなりするのだろうが、この国では違った。人員の移動など出来ず、そのまま一律の予算で賄わせることになっている。

 だから、ティは休みの日になるたびに孤児院を訪れ、『低級回復薬』を小分けして体調の悪い子供達に飲ませるようにしていた。

 そして今回は、回復効果のある『天使の翼で抱きしめて』を『歌唱』スキルで唄うことで、『低級回復薬』の替わりとしている訳だ。

 根本的な問題は、栄養失調ではあるのだが、致命的に栄養が足らないという程でも無い。だからこそ、俺達は無事に成人できた。

 その、僅かに足らない栄養によって崩れた体調を、『低級回復薬』や『ヒールソング』によって整えるという事だ。

 そんな、『ヒールソング』の歌声に向かって、桜場が駆け出した。

 そして、孤児院の垣根越しに、歌を唄っているティアが見えたのだろう、一瞬止まってそちらを見た彼女は、再度走り出し、孤児院の正門へと向かった。

 俺は、あえて桜場を追わず、そのままゆっくりと歩いて垣根の所まで進む。

 ティアは、院内の庭で、子供達に囲まれた状態で歌を唄っている。そして、そんなティアに走り寄って抱きつく者がいた。桜場である。

 突然のことに驚くティアだったが、桜場が口を開くと共に彼女の表情は歓喜のものに変わった。そして、二人は泣きながら抱き合った。

 そんな二人を囲んでいる子供達が困惑状態になっている。さすがにこのままではまずいので、俺が行くことにする。

 垣根を回り込み、正門を通り、子供達の元へと行く。

「お姉ちゃん達は、久しぶりに会ったから、二人っきりにしてやろうな」

 そう言って、周囲の子供達を引き離す。子供達も、正確なことは分からないまでも、俺の言ったことは分かったのか、素直に付いてきた。

 ただ、

「ロウ兄! お菓子!」

 一人の子供が言い出すと、全員が合唱のように、

「お菓子! お菓子!」

 と、お菓子コールを始める。

「アホか! 俺の分もティアが持ってきただろ! ちゃんと、ティアにその分のお金を渡して頼んでたぞ!」

「あれはティア姉の!!」

「「「そーだ! そーだ!」」」

 ……結局、俺が負けて、あらためてお菓子屋でお菓子を買ってきて配ることになった。そして、その後は、「遊べ!」と言われ、付き纏われて、その日の夕方まで10歳以下の子供達の面倒を見るはめになったよ……。

 まあ、孤児院に来た時は、いつも似たようなものなんだけどさ。

 この間、ティアは桜場とずっと話をしていた。何を話していたのかは分からない。笑ったり、泣いたり、抱き合ったり、本当に長い間話し続けていた。

 そして、俺が思ったとおり、桜場と話をしてから、彼女の表情に陰が全く見られなくなっていた。多分それは俺の思い過ごしでは無いはず。そうであって欲しい。

 だが、何はともあれ、この出会いは、確実にティアにとってはプラスである事は間違いない。それだけは間違いなく。

 

 夕方になり、俺達も帰る段となり、俺は桜場を東地区の宿屋まで送って行く事になった。ティアも来たがったが、遅くなりそうだったので、ミミ達への伝言役として帰ってもらうことにする。

 南北大路と東西大路の交差点で別れる時、二人はまた抱き合っていた。そして、「じゃあね、また」「うん、また、ね」とだけ言い合って別れる。

 ティアは、俺達の姿が見えなくなるまで、交差点に立ち止まって見送っていた。

 そして、こちらからもティアの姿が人混みで見えなくなった辺りで、桜場が話しかけてくる。

「あなたが、綾乃…ティアの婚約者なんでしょ」

「骨拾いだけどな」

「うん、聞いた。指輪贈るってホント?」

「ああ、今日、その下見…の下見だったんだよ」

「ちょ!ちょっと! 下見の下見にしてもアルヌスでするものなの!?」

「ど~せ贈るなら、良い物の方が良いだろう?」

「……骨拾いね~?」

「ああ、骨拾いだ。あんな良い骨を拾って良いのか、ちょっと後ろめたいけどな」

「でしょ! 超お買い得品よ!」

「それを、買わずに、拾うんだぞ」

「拾え! 拾え!」

「分かった。有り難く拾わせてもらうよ」

「おおっ! 大事にしろよ!」

 彼女はそう言って、俺の背中を強く叩いた。

 そして、そのあと、「天川の件もよろしく」とも言っていた。当然、「任せろ」と言ったのは言うまでもない。

 彼女の宿泊している宿屋に着くと、彼女は俺に向かって頭を深々と下げた。

「ティアの事、本当によろしくね」

「ああ、任せろ。ティアとは、物心ついた時からの家族だよ。言われるまでもないさ」

 彼女の真剣な表情と物言いに、俺も今度は真面目に返した。

 彼女にも俺の気持ちは伝わったようで、微笑んで「うん」とだけ言って、宿屋へと入っていった。

 今回の出会いでティアは救われたと思う。

 だが、彼女には、まだ二人の『親友』がいる。その『親友』が桜場同様の本当の『親友』であれば良いが、天川のような『親友』であれば……。

 俺は、もし、あと二人の『親友』がエセであった場合、ティアと合わせないようにするつもりだ。

 会えない事によるマイナスと、そんなヤツと会った場合のマイナスでは、確実に後者の方が大きいだろう。しかも致命的に。だから、そんな時には、絶対に合わせない。

 勿論、そんな事が無い事が一番なんだが、それでも、そんな『もし』があった場合には、どんな手を使ってもティアと合わせなくするつもりだ。

 その事を、今日、この時に決めた。一人密かに、誓う。

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