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君と僕の距離を測ろうか  作者: 青ジャージのコーンフレーク
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恋の距離

これは自論だが、恋というものには距離があると思う。

恋をした時からその子と自分の間の距離ができて、仲良くなることでどんどん距離が短くなって、いわゆる0距離になった時はハッピーエンドなんだと思う。

高校デビューするつもりで、友達のいない学校に入学したけれど、結局何も変わっていない。

いつものように同じ毎日をただ繰り返している。

君と私の距離はまだ…


教室の隅でひとりぼっちで咲いている花ような瀬雄也(せのゆうや)を横目に私は教室を出た。


5月の半ば。気付けば初夏と言うにはまだ早いような気もするが蒸し暑い空気が既に写真部の部室に漂っていた。


いつものように部長のモジャはぐーたらと机に突っ伏している。


「印刷今日もしないの?」

「撮ってないんでーこのあとバイトあるし帰っていい?」

「良くない!」


私はいつもどうりパソコンを開いてSDカードを差し込む。

このノートパソコンは顧問の物で結構古い。しかも使い方があまり今でもわかっていない。

印刷の段取りに手間取っていると後から来たのりりⓒが手伝ってくれた。


「ここをクリックしたら…できたよ」

「ありがとう!いつもごめんね、」

「そろそろ使い方覚えろよ」

「モジャは印刷してから言ってくださいー」


モジャは携帯ゲームをやり出し印刷する様子は見受けられない。それでも部長か!っていつもツッコミたくなる…。

心を少し落ち着かせて印刷される写真をプリンターの隙間から眺めていた。

印刷は順番なので次にのりりⓒが携帯から伸びたコードをパソコンに差し込む。


プリンターも古いのですぐにインクも無くなるし、めっちゃ印刷するのが遅い。とてつもなく遅い。


「ねぇモジャ、みんなは来ないの?」

「知らない」

「ですよね…」


素っ気ない言葉にそれ以上の言葉は出なく、汗ばむシャツをパタパタして私も机に突っ伏す。


最近知った青空廊下と言われる校舎と校舎を繋ぐ橋に流れる人と雲と時間。

ぼーっとしてると扉が開いた音がして驚いて起き上がるとメガネが来た。


珍しい。そう思うと辺りを見渡してモジャに何かを話した。

その話は別に自分に関係ない話だったのであまり気にしなかったが、それより付いてきたと思われるもう1人のお友達は「こんな部室あったのか」と今にも言いそうな顔をしていた。


私は印刷し終わった写真を額に入れる作業を行う。その間メガネはのりりⓒ同様携帯のコードをパソコンに繋げる。


のりりⓒは迷いなく題名を記入しているが、私は結構悩んでいた。

のりりⓒの写真はだいたい花が写っていて、色んな表情を魅せるその写真は個人的に好きだ。


そして、今日もやっぱり鉄ちゃんは来なかった。これで何ヶ月経つだろうか鉄ちゃんが来ない部活をするのは。


最終下校のチャイムが鳴り下駄箱に向かうとあたりはもう薄暗くなっていて他の部活の人も自転車を漕いだり恋人らしき人と二人で帰っていたりしていた。

私は「流石、高校生だなー」と第三者目線を送った。



家に帰ると親は共働きなので1人で夕飯を作り食べ始めるのがルーティーン化していた。

ゴールデンタイムのテレビを見るが好きなのがやっておらずテレビを消した。1人でのご飯は個人的に寂しい。

一人っ子ということもあるのかもしれないが、誰もいないんだなと感じるとリビングも広く感じるのはいつものことになっていた。


ピンポーン


親が帰ってきた。

ここからの時間は自分にとって拷問のような時間になってしまったのはルーティーン化された日常のひとつでしか無かった。


「ただいまー」

「ご飯食べた?」

「うん…食べたよ!」


空っぽの心で仮面の様にいつもどうりの笑顔を見せて安心させる。本当は冷蔵庫の中に食べていいものがどれかなんて分からなくてカップ麺の棚からいつも取り出してしまうのは私の胃だけが知っているだけでいいと思っていた。


そして私は今日も恋の距離を見てしまった。

表情を変えたらまた親になんか言われるのではないかと思うとビクビクしながら自室に戻った。



恋の距離。

それはある日突然私の中で見え始めた糸である。

私のお母さんはシングルーマザーで小さい時から色んな男の人と私は合わせられてきた。

その時から糸は見えていたと思う。

初めはその糸が何を指しているのかわからなかったけれど、小学5、6年になってだんだん分かってきた。


2人の恋の距離だと。


そして今日見てしまったお母さんと彼氏さんの恋の距離は後10cm位で昨日より数センチ近づいていた。


私とお母さんの間に糸が見えないのは恋ではなく愛だと思ってはいるが、少し複雑な家庭で育ってきたからか自分は愛されていないんだと心のどこかでは思っている。

みんなは違うって言っているけれど、本当に個人の見解に過ぎないので真に受けないで欲しい。


電気もつけないで自室に体育座りをするのもルーティーンになっているようだった。

暗い部屋にいれば全てが当たり前のように思えるからだ。

母さんが愛しているのは彼氏さんだけであり、いつも目の先には私より関係の時間が少ない彼氏さんが写っていていつもニコニコしている。

私にはいつも精神的な言葉をぶつけてくる。

いっそ自分がいなくなればお母さんの笑顔がどのぐらい増えるのかを考えたこともある。

それぐらい私はこの家族といるのが本当に苦手だった。




自分でも病んでいることに薄々気づいていたけれど。






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