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2-3 拾われた光物


カツカツカツ


 深夜の闇を引き裂く、ハイヒールの音が高らかに聞こえる。

 アスファルトを踏みつける足音が、力強く感じられるものの、この辺りを歩いているのはその音をたてている本人のみ。そんな力強い足音に気付く人など存在していない。


「今日という今日は・・・」


 思わず口に出してしまうほど、この女性は憤っていたこれで、足音にかなりの苛立ちが感じられることにも説明がつく。


 一人暮らしをしているマンションから徒歩15分足らずのところにある彼氏のマンション。彼女はそこに向かっているのだ。


 これから会おうとしている彼氏とは、付き合ってもう3年。

 大学3年の頃から始まり、卒業まではなんの問題もなく付き合ってきたはずだった。

 しかしお互いに大学を卒業し、社会人になった1ヶ月ほど前から状況は徐々に翳りを見せ始めていた。


 家は近いもののお互い仕事をしているため、以前と比べて合うことが格段に減った。彼氏は大学時代にはなかった、仕事の付き合いで深夜まで飲みに行くことも多くなった。

真実はどうであれ、その仕事仲間との濃密な付き合いが浮気を呼んだのではないかと彼女は考えている。


 今日は、その浮気を突き詰めるために怒鳴り込みに向かっているのだ。普段、驚かせようと思い、好意で突然に押し掛けるのとは理由も意気込みも違う。

家を出たときの勢いをそのままに歩き続ける。眼前には推定20階の高級マンションが夜の闇にそびえ立っている。このマンションが眼前に迫ると、目的地はすぐそこだ。


 高級マンションを横目に見やりながら、彼氏にあったときの第一声を考える。浮気の証拠はないものの、執拗な追求はできるつもりだ。もしかすると、その浮気相手がいるかもしれない。そうなればここぞとばかりに言ってやる。


 そんなことを考えているうちに、彼氏のマンションが見えてきた。


 駐車場に彼氏の車があることを確認しつつ、螺旋状の階段へ・・・。


 いや、まだだ。彼女は足を止めた。

 階段のすぐ隣にある、長々と伸びている花壇が気になったのだ。


「・・・?」


 苛立ちが一瞬とぶかのような感覚に陥り、花壇のすぐそばまで近寄る。階段を上ろうとしたまさにその時、花壇の中で何かが光ったような気がしたのだ。

 よく手入れされた少しかための、名も知らないありふれた植物群の中に手を突っ込む。


 ザザッ


 砂を微妙に掴んだあと、手にひんやりとしたものが触れる。

手を突っ込んだまま、そこでそれを掴んでみる。どうやら光ったような気がした、と感じたとおり金属であることがなんとなくわかる。おそらく、街灯かこのマンションの明かりで反射でもしたのだろう。


ゆっくりと金属物を掴んだ手が引かれていく・・・日付が変わろうとしているこの時刻、この辺りを通る人の気配はない。彼女の行動を見て怪しむものなどいないだろう。

引かれた手に掴んだものを驚愕の表情で見つめるが・・・その表情はやがて狂ったような笑みに変わる。


苛立ちをさらに悪化させ、拾ったものを片手に螺旋階段をゆっくりと、1段1段確実に上がる女性が1人・・・。苛立ちのこもっていた力強い足音は、上機嫌ともとれるような狂気の音へと変貌を遂げた。


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