2-2 花壇の中には
「今日は料理でも作って待ってよっと」
コンビニの散財しているこの辺りでは珍しい、夜十時まで開いているスーパーマーケットから1人の女性が出てきた。
すでに閉店間際。女性が提げている買い物袋には料理をするために必要な材料が入っている。
この辺りは学生や会社員の集まるマンション街だ。最近では、不名誉にも、2度の銃器殺人事件が起きた場所として全国的に知名度が高い。
だが、この女性はこの辺りのマンション街に住んでいる女性ではない。これから向かおうとしているのは、半月ほど前に大学時代の同級生から紹介された男の住む部屋だ。
その彼自身、彼女がいるらしいのだがそんなことは関係ない。しかも、彼からは合い鍵までもらった。浮気相手と周りは言うが、正規な彼女よりもよっぽど彼女らしいのではないだろうかと思える。
「フフンフン」
人通りのない道を鼻歌混じりに軽やかな足取りで歩く。一流大学卒のコンピュータープログラマーとしては説得力に欠けるものがあるが、それもしかたないだろう。
彼女が今歩いている通りは、この時間ともなると人通りが少なくなる。一歩入れば表通りで、コンビニなどがあるのだが、ここは表とは全く違った空気を醸し出している。
しかし、そんな夜と同一色で存在するこの暗い道を通る女性の心境は、ずいぶん上機嫌なようだ。
数える気にもならないほどの高さを誇る高級マンションを抜けた先に、彼のマンションはある。高級マンションと比べると見劣りはするものの、建てられて半年も経ってないということで新しさは感じられる。
彼のマンションにオートロックは備えられていない。それぞれの階につながっている階段と、個人の部屋を結ぶ各階一本の廊下だけ。エレベーターもついていない5階建ての小さなマンションだ。
彼の部屋は3階。
「フフンフ・・・・?」
階段を上っている途中、彼女の足がふと止まる。
足下、とはいってもかなり下の辺り、おそらくは1階だろう。そこの花壇の辺りから夜にも関わらず光る何かを視認した、ような気がしたからだ。しかし、それを自ら下まで降りていって確かめようとはせずに、そのまま上へと上がっていく。特に急ぐこともないのだが、その程度のことで1階まで降りる気にもならない。
女性はそのまま男性の部屋へと向かった。
バタン
女性が外の風景から消え、全ての音がなくなる。
花壇の中で闇にきらめく何かが、その鋭い光を一段と増した。




