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1-4 怪しい者を見た、2人も・・・

 男が橋の上を歩いている。40代半ば、中肉中背で黒のスーツを身にまとっている。くわえているのはタバコ・・・いや、葉巻だ・・・。


 とある会社の社長をやっていて、そういう風格も漂ってくる。時間帯は深夜0時をほんの少しすぎた頃だ。男の向かっている先・・・それは自分の家ではなく、愛人をかくまっているマンションだった。しかも、そこらへんにある安物のマンションではない。オートロック管理で、家賃は月何十万。一人暮らしには必要以上に広いマンションだ。


 だんだんとそれらしいマノンションが見えてきた。かなり高い。10階、いや20階はある。

 マンション付近の自動販売機に通りかかって男・・・。そういえば、数日前にここを通ったときに寝間着でうろついている高校生ぐらいの少年がいたのを思いだした。

 たしか、愛人の隣の部屋に住んでいたはずだ。若い男が住んでいるというのを聞いたことがあるし、部屋に出入りしているところを見られた覚えもある。

 短い回想から我に返り、再びマンションに向かおうとすると、向こうから歩いてくる人影が見えた。


(誰だ・・まさかまたあの少年か・・・)


 そのまさかである。数日前の少年が格好もあの時と同様に歩いてきているのだ。何やら手に持っている。男の方に近寄って来るに連れ、その手に持っているものがはっきりとわかるようになる。


(ピ、ピストル・・・・!!)


男の背中を悪寒が走った。まさか、殺されようとしているのか・・・・


しかし、少年は男を相手にするわけでもなく、まるで、彼が見えないかのように横を通り過ぎて行くだけだった。しかし、少年が来た方向からは、もうひとつの別の影が闇からせり上がってきているではないか。


タッタッタッ


年は30歳くらいだろうか。紺の背広を着て、小走りでやってくる。そして、自動販売機に立っている中年男性を見ると、驚きを露わにする。怪しい・・・そのまま自動販売機を通り過ぎた紺の


背広の男は、少年を追っているようにも見えた。

人がいるとわかったとき、何かを隠したような気がした。

黒の背広の男は、少年とそれを追っている男の不審さに冷や汗を流しながら、これ以上関わろうとせずにマンションの方へ向かおうとする。その時、


パン!


乾いた音が一つ、男の耳をつんざいた。びっくりして音の方を振り向く。音の場所はわからなかったのだが、あの少年が拳銃を持っているのをはっきりと見てしまったのだ。少年が通った方を見て間違いはないだろう。


パン!


また一発。そしてそのあとには・・・・


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


若々しい悲鳴が聞こえた。


(な、なんなんだ。何が起きてるんだ・・・)


男はマンションの入り口で足を止め、耳を澄ませて状況をうかがっていた。幸いにも悲鳴のあとには何も聞こえてこず、夜の闇にも再び静寂が戻る。そして、男の心も周りの静けさと合わせるようにして、落ち着きを取り戻していった、が---------


タッタッタッ


足音が聞こえる。どうやら、こちらに向かっているらしい。足音は激しい息づかいとともに鮮明になっている。

夜の闇にボーっと1人の少年が姿を現す。手には拳銃が、ない。少年はひどく取り乱している。男は少年の姿に身を硬直させた。


「ひ、ひひ、人を殺した・・・担任の先生を・・・」

「・・・・・?」


(殺した?当然じゃないか。ん? なんだって!? それじゃアイツは教師か。いや、それよりピストルは・・・)


少年は完全な錯乱状態に陥り、中年男は少年の言葉にいろいろな疑問符を浮かび上がらせている。


「と、とにかく警察に行こう、それが先決だ。両親は?」


 少年は答えない。答えられないと言った方が正しいか。地面にひざまづいて、体を大きく震わせている。人を撃ったのだ。当然だろう。

 結局、この中年男性が少年を警察に連れていき、とりあえずのところ事件はおさまった。拳銃の入手経路もあっさりと判明し、多少ショッキングであったものの、事件は何の新鮮味もない、生徒が教師を殺害したという巷でありふれた事件ということで落ち着いた。ただ、警察を疑問を持っていることが一つ・・・


 少年の所持していた拳銃の行方は・・・いまだ知れずである。

 なくなった拳銃を使った犯行が行われなければいいのだが・・・

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