1-3 夢遊病
男は15の春、つまり中学を卒業と同時に親の都合と合わせてイギリスに渡った。そして2年たった現在、日本へと帰国した。日本の大学に進学するには日本の高校に入っていた方がいいだろう、とかいうわけのわからない説得のせいだ。特にイギリスへの思い入れもなかった男は、あっさりと親の言い分に納得して単身日本に帰ってきた。
学校から歩いて20分ほどのところにあるマンションで一人暮らしをしている。オートロックも完備され、周りに住んでいる人間は金持ちそうだ。しかも、隣には何やらいわくつきの、ブランドものに身を固めた20代半ばの女性が住んでいる。どこかの会社に勤める重役の愛人といった想像をしたが間違いない。部屋に入っていく中肉中背の男を見かけたことがある。親子ではないだろう。
しかし、男にとって久しぶりの日本はどうも住み心地が悪いらしく、靴を脱ぐ行為や生まれながらの洋食好きなどがたたり、日常生活に不慣れさを否めないでいた。
おそらくそれがストレスとなったのだろう。ある夜、たしかに眠りについたはずなのにもかかわらず、気が付くとマンション下のそばにある自動販売機の光で目を覚ましたのだ。
寝間着を着たまま学校の制靴を履いて、だ。買う意図もなくこの場へ直行したため、当然金の持ち合わせもなく、わけのわからないままマンションへ戻った。幸いなことに帰り際には誰にも見られてない。眠っている最中に見られている可能性はあるが・・・。
それからは気付くと外にいたという極端なことはないのだが、一昨日などは冷蔵庫の光で目を覚ました。
いわゆる夢遊病にかかってしまったのだろう。男は無難な想像をし、連絡した親からも同じような答えが返ってきた。海外にいた頃はそんなことなかったのだ。そして、転入初日に学校に行ったその日の夜にそれはおとずれた。男は確か0時頃、無意識下に潜り込んだはずだったのだが・・・。




