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5-4 自殺志望は・・・・・・

 あと2話お付き合いください。週末新作もお披露目したいと思いますが、ファンタジーなので今作とはジャンルがまったく違うものであります。新作が書きかけなので、別の旧作を引っ張り出して連載することもあるかもしれませんが、そのときはまたよろしくお願いします。

 夜のマンション街にクスクスと忍び笑いで歩いている男が一人いた。時間も遅いため、人通りは少なく今に限っては、男が一人歩いているだけだ。


「アイツ、慌ててオレを探すに違いない。ククク」


 忍び笑いでは堪えきれなくなったのか、男は声を大にして笑い出す。この辺りはマンション街、付近の住人から非難の声が聞こえるだろうか・・・・・・いや、最近の若者は変人扱いしてだんまりを決め込むか。


 男がここまで不気味に笑っているには、それなりの理由があった。


 つい先日、友人が自動販売機で銃を拾ったと言う。それを男が借り受け、数分前に銃を貸してくれた友人宅へ電話をしたのだ。案の定というか、幸いにというか、電話には誰も出ず、留守番電話に切り替わる、男はここぞとばかりに、借りた銃でで死ぬのだと言うことをメッセージとして残した。


 男に死ぬ気は、ない。


「だいたい、これが本物だって証拠があるのかよ」


 ジャンパー裏のポケットに入ってある銃を触りながら、それでもにやけは止まらない。声はおさまり、あたりにはようやく夜らしい静寂が戻ってきた。


 本物を見たことがなければ、おもちゃの銃ですら触ったこともない人間なら、見分けをつけることはできないだろう。実際、この銃が本物なのにもかかわらず、ここでにやけている男はそれをわかっていない。


 マンション街から歩いて数分、オフィス街へとさしかかる。ここらで死亡演技をするのもおもしろい。予定では、留守電に入れた友人が探しに来るはずだ。しかも自分の住んでいる真上の部屋には、共通の友人もいる。その男を巻き込んで二人の捜索劇が始まっていることは間違いない。

 自分の住んでいる場所からは多少離れているが、二人がかりなら今夜中には見つかるはずだ。ただ、他の人間に見られると都合が悪い。

 男は友人のクソ真面目に探している様子を想像し、きっと自分を一番に見つけてくれるはずだ、と信じていた。


 男は足を止め、銃を夜空に向ける。近くを探しているのであれば、音で気付くかもしれない。


「よし」


 男はひとつため息をついたあと、陸上競技のスターターよろしく引き金を引いた。


 パン


 小気味のいい音が響いて余韻を残す。かなりの衝撃を男は感じたのだが、それでもおもちゃだということを信じて疑わない。同時に、男は観客のない中死体役を演じる。


「決まったな」


 オフィス街に倒れる一人の緒男。銃は力なく握られている。

 男は完全に死体を演じていた。地面に耳を澄ますように、あたりの足音に注意をはらう。倒れてから足音が聞こえてくるまで、それほどの時間はかからなかった。

 血が流れていないのは不自然だが、何せ暗い。街灯も少し離れているところにあり、出血の有無を確認することはできない。


「おい・・・・・・おい!」


 絶望的な感じの声音が耳に入る。聞き慣れた声、一階上に住んでる友人だ。思った以上に見つかるのが早かった・・・・・・演技は終わりだ。


「へへ・・・・・・」

「お、おい大丈夫か?」

「探しにきてくれたのか」

「当たり前だろ」


 どうやら駆けつけた友人はこれが演技だということに気付いていない。それは第一声から今までの声を聞いていればわかる。


「大丈夫か? すぐ病院連れてってやる・・・・・・なんだこんな物騒なもん持ちやがって・・・・・・」


 とりあえずは生きていて会話も交わせることに安心したのか、倒れている男を抱きかかえて立ち上がろうとしている友人は、涙交じりの笑みをもらしている。これ以上最悪の事態を防ぎたいのか、銃は取り上げた。しかし、肝心の銃に弾丸は、


「どこ撃ったんだ? 止血しないといけないだろ」


 男はついに演技の限界を感じたのか、上空を力を込めて指差す。


「何やってんだよ? オマエけが人だろ? 早く止血しないと・・・・・・」

「上、撃ったんだよ」


 抱き起こされていた元けが人の男は、友人の腕から跳ね起きる。


「わざわざ探しにきてくれたのか? アイツはどうした。バイクでこっち向かってる最中? その格好は寒いだろ、早く帰ろうぜ。必死に探してくれたんだ、今度飯でもおごるから、な?」


 男は呆然と座りへたっている友人に向けて好き放題言い、背を向けて帰るべき場所へ歩き出す。


「・・・・・・オイ、待てよ」

「ん? どうした。怒ってんのかよ、今度埋め合わせするから許してくれって 」


 男が振り返ったときには、眼前に友人の姿があった。表情は悪しき鬼を連想させ、両手を振りかぶっている様にも鬼気迫るものを感じる。


 ドン ドン! ドン


 男は突然のことに無防備でいるしかなかった。友人が取り上げた銃、それが凶器−−−鈍器となって頭上に降りかかる、何度も、何度も。

 男は薄れ行く意識の中で、自分は本当に死ぬかもしれないと思った。

 路上に再び、今度は本当に倒れた男が一人。

 この場を去っていく男が一人。


 遠くからはバイクの音が聞こえていた・・・・・・

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