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4-3 学生は見た(後)

 ジュースを飲みながら煙草を吸って時機を待つ。手元口元で、ありふれた行為をしているだけに、変質者扱いだけはすんでのところで避けられるだろう。ただ、警官にでも見られればただで済むはずはない。年齢が年齢だけに未成年喫煙による補導もありえる。


 三分、五分、人通りのない道を長く見ていると、いい加減に飽きてくる。煙草は地面だ。もう一本吸う気はない。これは長期戦覚悟で臨むしかないと思っていたところで、目の前を自転車に乗って男が通り過ぎた。どうやら相手は急いでいるらしく、こちらに気付くことはなかった。


 しかしその男もまたゴミ捨て場を無関心に通り過ぎていく。


(オレって怖がりなのか・・・・・・)


 ふとそんなことを思ってしまうほど、今までの二人は男が驚いた場所を無関心に通り過ぎていった。

 これ以上同じことが続くと、自分の気の小ささが見えてしまいそうだったので、逃げるようにこの場をあとにしようとしたのだが、


「止まれっ! おい! そこのお前だよ」


 一瞬、自分に声がかけられたのかと思い、ビクッとして振り向く。しかし、その方向には誰もいない。


(ひょっとして・・・・・・)


 男は曲がり角の影から、ゴミ捨て場の更に先に声の主を確認した。ニット帽の男と自転車に乗った無感動男二人が対峙している。

 ニット帽の方は闇にうっすら見える程度で、こちらに背を向けている男の姿しか、残念ながら確認できない。

(何話してやがる、聞こえねぇじゃねぇか)

 男は、何となくしか聞こえない声にいらだちをかんじているものの、会話自体は短かったらしく自転車の乗った男が、降りる。同時に、ニット帽の男の姿が近付いてくるように闇の中からボーっと浮き上がり、その姿がはっきりと確認できた。片手には・・・・・・


(ピストルか?)


 事実を目の当たりにしてもなお疑りの目を向けていたが、それは

 

 パン


 あまりにも突然起きて、あっという間に終わった。男は無感動にそれを見ていた。それこそゴミ置き場を無感動に通り過ぎた先にいる男二人に劣らないように。マネキンを本物と間違え怯えていた男とは別人のようだ。


 撃たれた男は自転車とともに道に倒れこむ。頭が一瞬揺れたような感じに見えたのは、その箇所を撃たれたからだろうか。それなら即死だろう。


 男は存分に殺人現場を見た後、発砲の瞬間から変わらぬ無感動のままその場を後にする。ニット帽の男がゆっくりとこちらに向かって歩き出したからだ。

 男は一度大通りに出た後、そのまま家には帰らず、不謹慎にも死体のある場所へ行こうと考えた。警察に通報し、目撃者として証言するのも悪くない。

 表の大通りは、殺人事件がすぐ隣の筋で起きているにもかかわらず、コンビニ帰りの学生や会社帰りの会社員などでにぎわっていた。

 男は、回りまわって殺人現場付近に差し掛かろうとしていた。そこで、


 ガシャン


 大きな音が聞こえた。男は少し急ぎ足になって、その通りに出た。そこには自転車を派手に転倒させ、死体とともに転がる人の姿があった。


 死体ぐらいで・・・・・・男はそんなことを思い、むしろゴミ置き場のマネキンに驚いた人間に会えなかったことを残念に感じながら、帰宅した。


 次の日、昨夜の事件の被害者は同じ学校の生徒だということを知った。

 やはり男には、街が物騒になろうと、同級生が殺されその現場を見ていようと、何の関心も持たなかった。

 

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