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4-3 学生は見た(前)

寝てしまっていて、5日分の更新をすっ飛ばしてしまいました。元々、ちょっと長めの今回の小題。前後編にわかれていて、後編は今夜中にも更新します<(_ _)>

 最近、男の通っている私立高校のクラスメートが事件を起こした。このあたりで起きている銃器殺人の発端とも言える事件だ。

 男にとってはそんな事件が起きようとも、どうということはない。ただ、今回はそうも行かない。殺人を犯した男は最近入ってきた帰国子女の編入生で、編入一日目にちょっとした、いやかなりの印象的なやりとりをしたのだ。


「イギリスの正式名称か・・・」


 編入生の質問がかなり高レベルだったらしく、担任が問題に答えられなかったので男が代弁した。結局、編入生に馬鹿にされたと思って逆上した担任が、殺そうとして逆に殺されたらしい。男としてはその殺人劇と自分との関連性を否定できずに、普段なら気にしないであろうことを考え込んでいるのだ。


 まあ、男にとって街が物騒になろうと毎夜日課の散歩は欠かさない。このところ毎回家を出る際に親から止められるのだが気にしない。


 散歩の目的には親にも内緒にしてあるある行為をするためだ。


「・・・フゥ・・・」


 喫煙----


 途中自動販売機でジュースを一本買う。煙草の匂いもそうだが、飲み物なしで煙草を吸うことが彼には出来ないらしい。

 散歩の距離は日によって異なるが、今日は二キロほど先のマンション街まで繰り出すことにした。


 目的地付近には公園があり、たまに同じ学校の生徒と思しき二人組みが話しているのを見かけるが、この時間となってはそれ以外に人の姿はない。人通りの多いメインストリートは一本隣の筋だが、なぜか通りを一つ移しただけで人の行き来がなくなる。いかにも殺人事件が起こりそうな場所だ。


 男は人気のないその筋を歩く。普段なら特に意識しない箇所を通り過ぎようとしたのだが、ふとした違和感を覚え、チラとその方向へ視線を送った・


 すると、


「・・・・・・!」


 その先にあったものを見て、思わず足を止める。声にこそ出さなかったものの、息を止めて驚愕の表情で違和感の正体と対峙する。


(死体・・・・・・!)


 怖いもの見たさで、距離を縮める。手が突き出るようにして真上を向いている。何かを求めているような、そんな感じすらする、生への執着か。

 春先の夜の冷え込みと合わせて、自分の背筋が凍りつくよな感じがした。

 男は更に距離を詰め、よく見るとその手が不自然なことに気付く。みょうに月に反射して光っているし、だらり、というような死体にありがちな力弱さがそこにはない、これはおかしい。

 男はその手を覆ってあるゴミ袋を思い切って払いのける。


「なんだ・・・・・・」


 ここでやっと声に出して安堵する。手から下は何もない、しかも関節のあたりで切れている。そう、これはマネキンだ。どこかのいたずら好きが驚かせるために仕掛けたのだろうか。

 趣味の悪い悪戯に苛立ちを覚えはしたが、男にもそのいたずら心が芽生えたのか、払いのけたゴミ袋を再び元の場に戻した。人通りが極端に少ないが、それでもまったくゼロというわけではないだろう、自分同様の間違いを起こす人間が必ず現れるはずだ。


 自分が驚いたのを誰に見られたわけでもないが、実際に誰かが驚いているところを見て、腹を抱えて笑ってやりたい。そう思い、男は来た道を引き返した。そしてゴミ置き場が見える範囲で曲がり角に入り、警官の張り込みよろしく隠れた。


 壁にもたれかかって、ゴミ置き場の位置が確認できるように陣取る。隠れて見ていたのでは、その背後から来た人間からすれば不審者にしか見えないだろうことを考えて、きわめて自然に。


 しかし男はすぐに気付く。なぜここまでしなければならないのだ。一箇所に足を止める必要はない、この通りを行き来していればいいんではないか。


(バカバカしい・・・・・・)


 男は曲がり角から出ようとして足を止めた。

 少し離れた、大通りにつながる曲がり角からニット帽をかぶった一人の男が現れたのだ。男はそこでニット帽の動向を見張ることにした。ゴミ捨て場を通り男の隠れている方向へと向かってくる。しかし、


 ニット帽は無関心にもそこを通り過ぎたのだ。しかも、そのまま男の方には向かってこず、元来た道を引き返し始めた。二度も同じ場所を通ったのにもかかわらず、あの腕を見たのかどうかもわからない。


(なんで驚かないんだ・・・・・・)


 ニット帽に期待を裏切られ、熱くなっていた気持ちを冷まされたが、男は根強くマネキンに驚く滑稽な人間を待つことにした。

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