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3-2 拾われた銃

 男は、駅の敷地に設置されているコインロッカーから荷物を取り出した。

 荷物を取り出したところで。何気なく周りを見る。午後二時。この駅は、朝夕ともなると学生、社会人を含めてかなりの人間が利用する。

 昼ともあって、コインロッカー付近を始め、駅構内から外にいたるまで、人の姿がほとんどない。

 無人−−−−−−

 男は何気なくあたりに視線を配った後、人のいないことを確認しある動作に移った。

 わずかなきしむ音を鳴らしゆっくりと開くコインロッカー。もちろん鍵がかかっているものには手をつけない。鍵師でもあるまいし。この男に開錠術があるわけもない。ようするに、空きロッカーに何か入っていないかを探っているのだ。男にはそういう捜索癖があった。本人の思いとはうらはらにおどおどしすぎる態度があまりにも気になるが。

「・・・・・・」

 自分の視界の範囲内で人の有無を確認しながらいくつかのロッカーを開け終えた。収穫は当然なし。しかし、ある1つを開けたところで男の目が大きく見開かれた。中に入っていたものは、男の驚愕という心理に影響を与えてもなお飽き足りないらしく、思わず数歩後退りさせてしまうほどだった。

 男とほぼ同じ視点の高さで開かれたロッカーの中にあるものは、

 一丁の拳銃。

 現実はともかく、一般的には銃と無縁なこの国。少なくともここは銃の氾濫していい国ではない・・・どうやらこの国は想像以上に危険らしい。

 だが、ここには現実に一丁の拳銃がひっそりと、法に怯えながら、あるいは法を嘲笑いながら、影に半身を隠してたたずんでいる。

「あ、あ・・・」

 男は更に驚愕の吐息をもらした。ゆっくりとそれに手が伸びる。一丁の拳銃と一人の男。

(おもちゃ・・か?)

 ふと冷静になって考えてみる。もちろん、男は銃を持ったことがない。当然のようにテレビで見る程度の知識すらない。そうだ、本物であるはずが、

「ねぇ、聞いた。また死んだんだって」

「ああ、この辺だろ。事件があったのって」

 コインロッカーに近付いてきた男女の話し声に、ビクリとする。割と近くで男がコインロッカーから何か取り出している。瞬間的に女性と目が合うが、こちらが目をそらすより早く、相手の方が先に視線をそらした。

(とりあえずこれは・・・)

 男は、手に持っていた荷物を重そうにコインロッカーに詰める、フリをする。

 全てカモフラージュのためだ。ある場所がわかっているのに探す財布、そしてそのあとはゆっくりと小銭を鳴らせばいい。

「ねぇ、どこ?」

「ん? ・・・まあ、な」

 恋人らしき二人は用事を済ませると、男の前から、コインロッカーから去っていく。何かを取り出した様子も預けていった様子もない、いったいなんだったんだろう。

 再び一人になった男は、ふぅと一つため息をついたあと、さっきの男女が言っていた会話を思い出す。

(このへんだろ、事件があったのって)

 そうだ。この街は現在謎の銃器殺人で揺れているのだ。事件のたびに犯人は逮捕されるが、銃だけはいまだ発見されていない。犯人が捨てた後、警察よりも早く誰かが拾うのだ。

 銃の出所はわかっているのだが、行方は知れずである。

(まさか、これが?)

 荷物を出して、しばらくそのロッカーの、本物ともおもちゃともわからない銃を見つめているが、そんなにここに長居するわけにもいかない。すでにここから見える範囲内で人の行き来が増えている。

 男はカモフラージュ用の荷物のファスナーを開け、そのいわくつきとも知れない銃を中に押し込んだ。

 こういうときというのはいつもどおりの行動がとれないものだ。神経質になる。

 周りをチラチラと見つつ、すれ違う人すれ違う人に不審な目でみられる。見た目二十歳過ぎの割に妙に落ち着きのない大人だ。最悪、警察に職務質問をかけられるかもしれない。

 様々な人に様々な視線を向けられ、家まで徒歩数分というわずかな距離を、冷や汗を流しながらなんとか帰り着いた男は、自室に閉じこもる。両親は外出中、弟はまだ学校から帰ってきていない。家に一人の彼は、突然の身内の帰宅や来訪者に怯えながら、最近の銃器殺人事件の新聞記事や週刊記事を片っ端から集めて、自分の手にある拳銃の詳細を調べる。

「事件で発布された銃は三発。残り三発が拳銃の中に入っていると思われる・・・」

 今日の朝刊の記事だ。一番最近の殺人は、一昨日の深夜男女間のもつれから起きたとか。

 あと三発・・・。

 男はこの銃が一連の銃器殺人の主であるかどうかを調べるために、床に無造作に置かれてあるそれに、慎重に手を伸ばした。

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