クリスマスはもともとイエス・キリストの誕生日では無くサタンとか異端の神々を祝うお祭りが起源と言う説があるなんてトリビアとは全く関係ない冬童話2016のために書いたチビで泣き虫のサンタさんが頑張る童話
12月と言う事で、クリスマスな童話を。
なんて思っていたんですが、冬童話2016の企画自体は2月までやってるんですね。
かんぜんにみすった。
あるクリスマスの夜の事です。
今年で10歳になる“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、初めてのサンタさんのお仕事に胸をドキドキさせていました。
「今日はよろしくな、新米サンタさん」
魔法の袋は言いました。
「こちらこそよろしくね、魔法の袋さん!」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは元気いっぱいに返事をしました。
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るんるん、らんらん、とんとん、ぷんぷん。
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスが最初に向かったのは東の国でした。
ニコラウスは東の国に住む女の子に話しかけます。
「こんばんは、僕は“ちび”で“泣き虫”のニコラウス。
サンタさんだよ」
「こんばんは、小さなサンタさん」
「僕はサンタさんだから、みんなの欲しいものが分かるんだ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは得意げに、魔法の袋に手を入れます。
取り出したのは……1日分の、赤ちゃん用のミルクでした。
「ありがとうサンタさん。
これで、お家の赤ちゃんが1日飢えなくて済むわ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、意味が分からなくて理由を聞きました。
「この国の土は工場のはい液やほうしゃ能や敵国の化学兵器で汚れているわ。
お母さんも私たちも、その土からできたものを食べている。
だから、赤ちゃんは、お母さんのおっぱいを飲まないわ」
“ちび”で“泣き虫“のニコラウスは、大泣きに泣きました。
「魔法の袋さん。
この国の土を、全部きれいな土に変える事はできないかな」
魔法の袋は、驚いて答えます。
「この国の土を、全部きれいな土に変えるだって?
そんなことは無理だよ。
1つの国に住む子供たち全員分の願いと、誰かさんの20年分のじゅみょうが必要になる」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、構わず魔法の袋に手を入れます。
中からは、ぴかぴかに光る茶色い玉が出てきました。
ニコラウスがそれを地面に置くと。
汚れて腐った臭いのする国中の土は、あっという間にみみずやもぐらの住む、ほくほくした土に変わりました。
「わあ、土がきれいになった!」
「やった、果物や穀物もきれいになったぞ!」
「赤ちゃんが私のおっぱいを飲んでくれたわ!」
あちらこちらから、声が聞こえてきます。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、嬉しそうにうなずくと、次の国へ向かいました。
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すいすい、ほいほい、わいわい、むいむい。
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスが次に向かったのは北の国でした。
ニコラウスは北の国に住む男の子に話しかけます。
「こんばんは、僕は“ちび”で“泣き虫”のニコラウス。
サンタさんだよ」
「こんばんは、小さなサンタさん」
「僕はサンタさんだから、みんなの欲しいものが分かるんだ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは得意げに、魔法の袋に手を入れます。
取り出したのは……痛み止めのお薬でした。
「ありがとうサンタさん。
これで、病気のお母さんが痛みで苦しまずにすみそうだ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、意味が分からなくて理由を聞きました。
「この国の偉い人たちは談合や汚職や横領で汚れているんだ。
僕たちには病院へ行く権利も無くて。
だから病気になったら、もがき苦しんで死ぬしかないんだ」
“ちび”で“泣き虫“のニコラウスは、大泣きに泣きました。
「魔法の袋さん。
この国の偉い人たちに、純粋な心を取り戻す事はできないかな」
魔法の袋は、驚いて答えます。
「この国の偉い人たちに、純粋な心を取り戻させるだって?
そんなことは無理だよ。
1つの国に住む子供たち全員分の願いと、誰かさんの30年分のじゅみょうが必要になる」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、構わず魔法の袋に手を入れます。
中からは、ぴかぴかに光る白い玉が出てきました。
ニコラウスがそれを空に投げると。
玉は眩しい光を出して、国中に拡がりました。
「ああ、私たちはなんておろかな事をしていたんだろう!」
「お金を貧しい人たちに渡してあげなくては!」
「学校も、警察も、病院も、貧しい人たちが使えるようにしよう!」
あちらこちらから、声が聞こえてきます。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、嬉しそうにうなずくと、次の国へ向かいました。
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ろうろう、ぴゅうぴゅう、すうすう、もうもう。
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスがその次に向かったのは西の国でした。
ニコラウスは西の国に住む女の子に話しかけます。
「こんばんは、僕は“ちび”で“泣き虫”のニコラウス。
サンタさんだよ」
「こんばんは、小さなサンタさん」
「僕はサンタさんだから、みんなの欲しいものが分かるんだ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは得意げに、魔法の袋に手を入れます。
取り出したのは……りっぱなけん銃と、だんがんでした。
「ありがとうサンタさん。
これで、家族を守れるの」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、意味が分からなくて理由を聞きました。
「この国は紛争やゲリラや虐殺で荒れているの。
私達みたいに弱い人たちは、みんな死んでいく。
だから、身を守る武器が必要なの」
“ちび”で“泣き虫“のニコラウスは、大泣きに泣きました。
「魔法の袋さん。
この国の争いのたねを、全部なくすことはできないかな」
魔法の袋は、驚いて答えます。
「この国の争いのたねを、全部なくすだって?
そんなことは無理だよ。
1つの国に住む子供たち全員分の願いと、誰かさんの40年分のじゅみょうが必要になる」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、構わず魔法の袋に手を入れます。
中からは、ぴかぴかに光る黄色い玉が出てきました。
ニコラウスがそれをたまごのようにぱかりと割ると。
中からさわやかな風が吹き出して、国中に吹きわたりました。
「あれ、俺たちはなんで戦争なんてしていたんだろう」
「なんだか、馬鹿らしくなってきたぞ、もう戦いなんてやめだやめ!」
「敵の大将と、なかなおりのお祝いをしよう!」
あちらこちらから、声が聞こえてきます。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、嬉しそうにうなずくと、次の国へ向かいました。
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よたよた、がたがた、どたどた、ずたずた。
“ちび” で“泣き虫”のニコラウスがさいごに向かったのは南の国でした。
ニコラウスは南の国に住む男の子に話しかけます。
「こんばんは、僕は“ちび”で“泣き虫”のニコラウス。
サンタさんだよ」
「こんばんは、小さなサンタさん」
「僕はサンタさんだから、みんなの欲しいものが分かるんだ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは得意げに、魔法の袋に手を入れます。
取り出したのは……ビンいっぱいにつまった、水でした。
「ありがとうサンタさん。
これで、私たちはしばらく生きて行くことができるよ」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、意味が分からなくて理由を聞きました。
「この国は日照りや干ばつや災害で、飲み水が無いんだよ。
この砂漠にあった小さな池も、干上がってしまった。
だから、私たちは死ぬしかないんだよ」
“ちび”で“泣き虫“のニコラウスは、大泣きに泣きました。
「魔法の袋さん。
この国に大きな湖を作ることはできないかな」
魔法の袋は、驚いて答えます。
「この国に大きな湖を作るだって?
そんなことは無理だよ。
1つの国に住む子供たち全員分の願いと、誰かさんの50年分のじゅみょうが必要になる。
だいいちニコラウス、君にはもう、残りのじゅみょうがほとんどないじゃないか」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、構わず魔法の袋に手を入れます。
中からは、小さな水色の玉が出てきました。
玉はぴちゃんとはじけて、ニコラウスの周りに小さな水たまりを作ったのです。
「とても小さいけど、水たまりができた!」
「これで何日かは、死なないですむぞ!」
「ありがとう、小さいサンタさん!」
あちらこちらから、声が聞こえてきます。
けれど“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、ぽろぽろと涙をこぼしました。
「大きな湖を作ってあげられなくてごめんね。
僕が力不足のサンタさんで、ごめんね」
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスは、ぺこぺことあやまりながら。
そこでじゅみょうがきてしまい。
そのまま、死んでしまいました。
「わあ、小さなサンタさんが死んでしまった!」
「僕たちの恩人が、死んでしまった!」
「魔法の袋さん、小さくて優しいサンタさんを生きかえらせて!」
魔法の袋は、悲しそうに答えます。
「人を生きかえらせるだって?
そんなことは無理だよ。
世界中に住む子供たち全員分の願いが必要になる」
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南の国の人たちは、ニコラウスを囲んでわんわんと泣き続けました。
泣いて泣いて泣いて。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスの周りにあった小さな水たまりは、みんなの涙が溜まって小さな池になりました。
3か月が過ぎました。
「どくの土をきれいにしてくれた小さくて優しいサンタさんが、死んだみたいだぞ」
東の国の人たちも、ニコラウスのところにやってきて、おんおんと泣き続けました。
泣いて泣いて泣いて。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスの周りにあった小さな池は、みんなの涙が溜まって小さな湖になりました。
また3か月が過ぎました。
「病院や学校にかよったりできるようにしてくれた小さくて優しいサンタさんが、死んだみたいだぞ」
北の国の人たちも、ニコラウスのところにやってきて、えんえんと泣き続けました。
泣いて泣いて泣いて。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスの周りにあった小さな湖は、みんなの涙が溜まって大きな湖になりました。
さらに3か月が過ぎました。
「戦争をなくしてくれた小さくて優しいサンタさんが、死んだみたいだぞ」
西の国の人たちも、ニコラウスのところにやってきて、しんしんと泣き続けました。
泣いて泣いて泣いて。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスの周りにあった大きな湖はみんなの涙が溜まって溢れ出すと、干ばつの激しい南の国中を流れる、大きな川になりました。
そして、さらに3か月が過ぎました。
“ちび”で“泣き虫”のニコラウスがサンタのお仕事をしてから、ちょうど1年がたったのです。
世界中の子供たちは。
おいしいごはんを食べて。
病気になったら病院にいけて。
戦争もなくて。
おいしいお水が飲めて。
とてもしあわせな日々を過ごしていました。
だけど、どうしてもかなえてほしい願い事が、1つだけ。
だから、世界中の子供たちは。
本当にたまたま、全員で同じことをお願いしたのです。
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「人を生きかえらせるだって?
そんなことは無理だよ。
世界中に住む子供たち全員分の願いが必要になる」
魔法の袋は、ぶつぶつと文句を言いながら。
だけれど、なぜだかとてもうれしそうに。
ぽろりと、ハートの描かれた玉を取り出しました。
とんとんの小さく脈打つそれは。
しずかに。
空中ではじけて……。
童話書くの、めっちゃ難しかったです……。
あ、普段は全然関係ない話書いています。
宜しかったら、是非。
『豚公爵と猛毒姫』
http://ncode.syosetu.com/n8014ci/