同居開始。
「あの、泣いてますよね。」
奏多の単刀直入な発言にも、お姫様はビクともしなかった。
「泣くも何も、あなたには関係ない。」
お姫様は真っ赤なドレスのすそで涙を拭いた。
「で?家ないんでしょ。」
「え。」
「図星だった? なんとなく分かったのよ。話し方とかで。」
お姫様は信号で停止すると、奏多のほうを見た。
お姫様はズボラそうに見えて、意外と勘が鋭いと奏多は思って苦笑いした。
「世の中大変よね。さ、しばらくかかるから寝てたら?」
「あ、はい」
なんか、逆らったら怖い目に会いそうだ。と奏多は思い、まぶたを閉じた。
二時間経った。
日が登り、真夏の太陽がギラギラと輝き始めた時だった。
「おはよう。」
しばらく寝ていなかった奏多は、久しぶりに寝れたことの嬉しさで、頭がいっぱいだった。
奏多は、嬉しさを顔全面に表し、頷いた。
「これ。」
お姫様は真っ赤なドレスの小さいポケットから鍵を取り出した。
「5年前から計画してたの。狂わせるようなこと、しないでよ?
これは私の秘密基地の合鍵。
あなたはこれから、私の執事代理として働いてもらうわ。
そうね、時給2000円。」
驚愕の数値に奏多は、目を見開いた。
「心配しないで。お金はいくらでもあるの。
あと、秘密を守ってほしいの。
私のことを誰にも一切、話さないで。」
お姫様の圧力に、奏多は頷くしかなかった。
早いスピードで進んでく展開に目配せしながら耳をすませた。
「到着。」
お姫様がリムジンを止めた先には、大きな豪邸。
二人で住むには大きすぎる。
マンション一個分は余裕である土地に、足を踏み入れた。
お姫様はリムジンを颯爽とおりて、髪を風になびかせた。
「あなた、名前は?」
「空打…奏多です。」
「じゃ、奏多。私は、金成紅葉よ。」
紅葉はお姫様らしく体を折った。
奏多も、慌てて体を折る。
紅葉は奏多に、人差し指をちょっと曲げて、ついて来い。と合図した。
紅葉は豪邸の本の一部にしかすぎない、(実際は大きいが、豪邸に比べればかなり)小さい扉に、鍵を差し込んだ。
慣れた手付きで扉を開けて、中へ入った。
真っ赤な絨毯とドレスは、紅葉の美しさに、さらに花を添えた。
しばらく歩くと、大広間が顔をのぞかせた。鮮やかな色の絨毯に足をのせると、ふあっと足が帰って来そうだ。
「ここは食事の時使うわ。風呂はここの隣の扉。」
紅葉が大まかに、説明しているが、サッパリ奏多には理解できない。
そもそも、ここが何処かさえ、わからないのだ。