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ノゼスト山の飛竜

 昨夜、レピスから長々と説教された三賢者(結局その後ルイとボウスもレピスに呼び出されて説教を食らった)であったが、翌朝には早々とノゼスト山へ向けて出発させられていた。

 ノゼスト山は北方にある険しい山で、頂上の方はいつも霧がかかっていた。

 一行はその霧がかかった山道をひたすら歩いていた。

「結構歩くんですね」

「頂上まだぁ?」

「お前らまだいいじゃねぇか。俺はこの大きな斧が……もうだめだ。休憩」

 ぐだぐだと三賢者たちは言いながら腰を下ろした。

「もう無理そうね。ここらで休憩にしましょう」

 リモンはそう言うと近くに倒れていた丸太に腰を下ろした。

 レピスと三賢者も霧の中で腰掛けられそうなものを見つけてそれぞれ休憩に入った。

「頂上まで、後どのくらいなんですかね?」

「そうね。もうそろそろだと思うんだけど」

 息を切らしながら質問するテイに涼しい顔でレピスが答えた。

「じゃあ、ここらでその、聖なる飛竜の居場所がわかる魔法を、やってみてくださいよ」

「いいわよ。まだ遠くて確認できないかもしれないけどね」

 面倒になってきたルイの催促に、リモンは立ち上がると指揮棒のようなものを手にして、くるくると円を描くように動かすと天に向かって棒を掲げた。

 すると青白い光を放つ玉が現れ、ふわふわと浮遊していたその玉は、急に少し先の岩陰に飛んで行って、再び空中を漂い始めた。

「あの、すぐそこで止まってますけど」

「そうね」

「まさか、そこにいるんですか?」

「いるみたいね」

 三賢者とリモンのやり取りの後、しばらくの間沈黙が流れた。

「あ、えっと、確か飛竜は山の頂にいるって」

 再びテイがリモンに話しかけた。

「そうね」

「もしかしてここ、もう、頂ですか?」

「霧が深かったからわからなかったけど、そうみたいね」

 また沈黙が流れた。皆の間に嫌な予感がこみ上げてきていた。

「リモンさん」

「なに?」

「頂には聖なる竜以外に、確か黒き竜もいるんですよね?」

「聖なる竜以外は皆黒き飛竜よ」

 その時、急速に霧が晴れ始め、周囲の視界が開けてきた。

 皆が固まった。

 皆それぞれに座っていた周囲の岩だと思っていたものは、黒き飛竜の尻尾や足であった。そう。一行は黒い飛竜に囲まれていたのだ。

「り、り、り、リモンさん、か、囲まれているんですけど」

「そうね、これはやばいわね」

 ゆっくりと飛竜たちは首を上げ、体を起こし始めた。

「く、食われちゃうぞ。いや、その前に丸焼きかも」

「どうするんですかリモンさん?」

「大丈夫。姿を見えなくする魔法をかけるわ」

 慌てふためく三賢者を尻目にリモンは落ち着いた口調で答えた。

「姿を消す? そんな魔法があるんですか?」

「ええ、これよ」

 リモンは素早く何かをつぶやくと杖を掲げて一回転した。

 すると掲げた杖の先から小さい光の粒が一瞬降り注いだ。

「こ、これで、飛竜たちに見えなくなったんですか?」

「ええ、見えないわ」

「よ、よかった」

 テイたちは胸をなでおろした。

「ただしあたしにしか効いてないけどね」

「ええ!」

 リモンの一言に再び三賢者は慌てふためき始めた。

「俺たち丸見えってことですか」

「そうよ。今も現役バリバリに見えているわ」

「だめじゃん!」

 飛竜たちが威嚇するように大きな口を開けてきた。

「に、逃げるしかないぞ」

「ど、どこに?」

「聖なる竜の方向しかないだろう!」

 黒き飛竜たちの隙をついて、三賢者たちは黒き飛竜の間を走り抜けた。

 するとゆっくりとしていた飛竜たちが滑らかに動き出し、テイたちの後を追いかけてきた。

「やばい、追いかけてくるぞ」

 テイたちは聖なる竜がいると思われる岩の向こうに向かって必死に走った。

 一方レピスは最後尾を走りながら、時折後ろを振り返って飛竜に呼びかけていた。

(ダメよ、ついてこないで!)

 飛竜たちは足を止めずに大きな口を開きながら追いかけてきた。

(レピス様がおいしいエサ持ってやってきたぞ)

(わーいわーい)

 大きく首を伸ばした飛竜をレピスが手刀で追い払った。。

(こら! その人たちはエサじゃないの!)

(え、だって、じゃあ、なんでこんなエサ連れてきているんですか?)

(食べていいですよね?)

 別の飛竜がまた大きな口を開いて首を伸ばしてきた。

「う、うわぁ! 食べられる!」

 テイとルイが必死に走るスピードをさらに上げた。

「ま、まてよ! 俺はこの斧が重くて、おーい!」

 ボウスも必死に走った。リモンは姿が見えていなかったので余裕もあったが、ほとんど足を動かしていないのに三賢者よりも早く移動していた。どうやら魔法を使っているようだった。

 レピスは皆が見ていない事を確認すると、また素早く首を伸ばしてきた飛竜を手で追い払った。

(ダメだって言ってるでしょ!)

(なんでですかぁ?)

(こ、このひとたちはね……えっと)

(は?)

(わ、わたしのエサだからよ!)

 急に飛竜たちの足が止まった。

(……あ、ああ! なるほど)

(レピス様のエサだったんですね。納得しました)

(それじゃ、食べちゃダメだな)

 黒き飛竜が追いかけてこなくなったことに気付いたルイが皆に声をかけた。

「な、なんか、竜たちが追いかけてこなくなったぞ」

 皆が息をつきながら走るのをやめて後ろを確認した。

「ど、どうなっているんだ? あきらめたのかなぁ?」

「お、おい、あれを見ろよ」

 ボウスが指差した岩陰に、黄金色をした大型の生き物の姿が見えていた。

 皆は静かに岩陰へと近づいて行くと、そこには全身黄金色の鱗に覆われた一匹の竜が寝そべっていた。

「こ、これが、まさか聖なる飛竜?」

「目だけじゃなくて、体も金ぴかじゃん」

 こんなに派手な飛竜ならリモンの魔法はなくても見つけられたのではないか、という大いなる疑問は、三賢者それぞれが口に出さずに飲み込んだ。

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