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青い閃光

 ルイとボウスは魔物から逃れるために走っていた。

「ボ、ボウス、待ってくれ、戻ってきてくれ」

 ルイがだいぶ距離の開いてしまったボウスを呼ぶと、ボウスは素早くUターンしてルイの方へ走ってきた。

「戻ってきた、ボ、ボウス、やっぱり俺たちは、友達……」

 しかしボウスの表情はルイ以上に焦っていた。

「こっちはだめだぁ! 魔物の巣だった」

 ボウスの後ろから何匹もの怪物たちが追いかけてきていた。

「わ、こ、こっちくるなぁ!」

 ルイはボウスを待たずに走り出した。

「ルイ、待ってくれ!」

「くんなぁ!」

 一方レピスははぐれてしまったテイを探していた。

「テイ君! どこなの(そうだ、聴覚鋭敏化で……どこ?)」

 レピスは聴感覚を研ぎ澄ました。

 するとどこからともなくテイともう一人、女だと思われる声のやり取りが聞こえてきた。

「うふ、楽しみましょう。ふ、た、り、で」

「や、やめてください、なんなんですか」

「あなたの元気な力が、欲しいの」

「ちょ、だめ、だめって!」

 レピスはやり取りを聞いて頭に血が上っていくのを感じた。

「なに、この声は? (テイ君、一体、何を!)」

 更に二人のやり取りは続いていった。

「ちょっとだけ、ね?」

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけですよ」

「いいわ、きて」

「あ、は、はい」

 レピスの目が釣りあがり、怒りから顔色が急速に赤くなっていった。

「な、な、な、なにしているのよ!」

 突然レピスの体が青白く光り、その光が真っ直ぐに上って天を突き上げた。

 次の瞬間、無数の青い稲妻が、まるで雨のように迷路の上に次々と降り注いだ。

「な、なんだぁ?」

 稲妻は轟音を発しながら迷路の壁をことごとく破壊していった。

 閃光と爆音が続き、石が砕け、飛び散り、転がる音が続いた。

 しばらくして音と光が止んだ時には、迷路は瓦礫と化していた。

「あ、レピスさん!」

 ルイとボウスは見通しがよくなった迷路の残骸の上を歩きながらレピスに声をかけた。

「意外と近くにいたんだなぁ」

 そう言ったルイにレピスはまるで反応なく、目を血走らせながら、何かを探すように周囲を見回していた。

「どこ、どこよ?」

「レピスさん?」

 レピスはルイとボウスの姿が目に入っていないかのようにテイを探していた。

「ゴホ、い、一体何が起こったんだ」

 数メートル先の瓦礫の隅からテイが這って出てきたのを見て、レピスの表情がほころんだ。

「テイ君!」

 レピスがテイに駆け寄ろうとした時、テイの後ろからエルージェと名乗っていた女性が瓦礫の中から出てきた。

「もう、これからってところで……」

 エルージェは文句を言いながらドレスの土埃をはたいた。

 先ほどテイを見つけてほころんでいたレピスが無表情に変わって二人に歩み寄ってきた。

「……なにをしていたの、ふたりで」

 テイは顔を上げてレピスを見た。

「レピスさん、無事でしたか?」

 エルージェもドレスをはたきながら顔を上げてレピスを見た。

「なに? お友達ぃ?」

 なんだこの小娘は、といった表情でレピスを見たエルージェであったが、レピスの顔をマジマジと見ているうちに、顔が硬直し始めて行った。

「あ、う、嘘、(なんで、レピス様が……)」

 もともと色白のエルージェの顔色が更に青白くなっていった。

(エルージェ、まさかテイ君に)

 冷たく無表情なレピスに射抜かれるように見つめられながら、頭の中にはドスの効いたような言葉を投げかけられたエルージェは、慌てて手を振って弁解を始めた。

「わ、わたし、は、な、なにもまだ」

 エルージェは何か言いかけたが、次の瞬間レピスが大きく目を見開いたかと思うと急に鋭くエルージェを睨みつけた。

「う、やぁ」

 エルージェが小さく声を発した時だった。

 突然見えない力でエルージェの首が切断されたかと思うと、その頭部はものすごいスピードではるか先の森の奥へ飛ばされて行った。

「う、うわぁ、なに?」

 テイが驚いて後ろに飛びのいた。

 するとエルージェの残された体は急速に灰のようになってドレスを残して崩れ去った。

「だいじょうぶ?」

 いつもの表情に戻っていたレピスがテイに手を差しのべて立ち上がらせた。

「なんだったんですか、一体」

「彼女はヴァンピールよ。人間の生命力を吸って生きるもの」

「じゃあ、俺、危うく吸われちゃうところだったのか」

「そうよ、気をつけないと」

「すみません。あ、あの、今の、レピスさんが倒してくれたんですか?」

 レピスは慌てて首を横に振って否定した。

「え、あ、違うのよ。あれは、その、勝手に逃げて行ったの」

「逃げて?」

「そう。彼らは頭さえ無事ならいくらでも体は再生できるのよ。だから頭だけ逃げて行ったってわけ」

 そう言いながらも実際はレピスの一睨みで首切って森に飛ばしてしまったのであるが。

「なんだ、てっきりレピスさんがやったのかと」

「ま、まさか」

「そうですよね。睨んだだけで相手の首を吹き飛ばすなんて」

「ない、ない。あるわけないじゃない」

「ははは」

 テイとレピスは顔を見合わせて笑っているとルイが声をかけてきた。

「おい、お前ら、なにじゃれているんだよ」

 声のする方を振りかってテイはルイとボウスに手を振った。

「あ、ルイ。ボウスも。いたんだ」

「ずっとここにいたよ! まったくよお」

 存在を無視されていたルイは文句を言ったが、ボウスは冷静に瓦礫の山に登って周囲を見渡していた。

「それより、なんか壁が全部消えちまったぞ。怪物たちもみんな森に逃げて行ったようだし……あ、一匹だけなんか正座してるぞ」

「ほっといてもいいんじゃないか。これならあっさり塔までいけるな」

 ルイが指差した先に塔が見えていた。

 四人は瓦礫を乗り越えながら塔に向かって歩きだした。

「しかしなんだったんだ、さっきの青い稲妻は」

「俺たちはおかげで助かったけど、神の怒りってイメージじゃなかったよな」

「うん、なんていうか、暗いようなイメージだったな」

 ボウス、ルイ、テイの会話を聞いて、レピスがそっと後ろから反論してきた。

「そ、そうかなぁ? 『爽やかな青』って感じじゃなかった?」

 レピスの言葉に対して三人は同じように首を横に振った。

「いや、冷たくて、暗い、底のないような青だったな」

「ああ、そんな感じだ。あえて言えば……」

「うーん、『嫉妬心』みたいな?」

「あ、そんな感じした、した」

 会話で盛り上がる賢者たちとは対照的に、レピスは大きく肩を落として歩いていた。

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