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テイの姉、シュレイ

ルイとレピスはシュレイに促されて家の中に入った。

「おお、結構居心地よさそうな家じゃないか、テイ」

「そ、そうかなぁ?」

「うん、なんか、テイ君が育った家って感じがします」

レピスもルイに同調するように頷いた。

「そんな……レピスさん」

シュレイが台所に立って、やかんを火にかけると棚からカップを取り出し始めた。

「テイ、お茶持って行くからあんたの部屋でくつろいでいれば。中はそのままにしてあるから」

レピスとルイはテイに促されて2階へ上がっていった。階段を上がりながらテイが立ち止まってシュレイに声をかけた。

「ありがとう、姉さん。ところで姉さん」

「なに?」

「いつの間にか、その、家具とか、見たことない新しいものになっているんだけど」

シュレイはテイの問いかけには応えずに茶葉をポットに入れた。

「……お城からの給金、届いているわよ」

「え? もう?」

「来月分だけど」

テイは上りかけた階段を降りて、シュレイの指差すチェストの中からお金の入った袋を取り出して中を見た。

「なんで? あれ、また少なくないか?」

「……ったのよ」

「はい?」

「前借したの」

「ま、まさか、姉さん」

「ローン組んじゃったらね」

「おい! なにしてるんだよ!」

「大丈夫よ、もう支払い済んだから」

 再度給金を数えなおし始めたテイのことなど気にかけることもなく、シュレイは手際よくお茶を入れていた。

「思いっきり減っているじゃないか。このお金は俺だけのものじゃないんだからさ」

「わかっているわよ! わかってる……ほんの出来心よ」

 シュレイが瞳を伏せながら小さく後悔のため息を吐いた。しかしテイにとってはその仕草が演技がかってうそ臭く感じていた。

「ルイになんて言うんだよ」

「あたしから言うわ……ルイ君、呼んで来てくれる?」

「まったく……ルイ、ちょっと」

テイに呼ばれてルイが面倒くさそうに二階から下りてきた。

「なんだよ?」

「姉さんがさ、話したいことが」

「シュレンさんが俺に?」

「謝りたい事があるんだよ」

「なんですか、いったい?」

 問いかけるルイの前に申し訳なさそうな表情をしながらシュレイが歩いてきた。

「あのね、ルイ君、お城からの給金をあたしが少し使い込んじゃったんだよね、ローンの返済の関係で」

「えぇ!」

「でもね、払わなきゃ、体で支払うしかなかったの」

「え……?」

 とてもそんなことなど思想もない事はテイは十分知っていた。いや、むしろ盗賊になりかねないような人だと。

「って、姉さん!」

 たしなめるテイのことなど見向きもせずにシュレイは顔を上げてルイの目を見つめた。

「だから、狗肉の策で使い込みました……さてルイ君、ここで問題です」

「はい?」

 急に先ほどの申し訳なさそうな表情から一転、シュレイがにこやかに手を挙げながらルイに話しかけてきたので、ルイもテイも何事が始まるのかと身構えた。

「追い詰められたわたしが給金使い込んだ事は、あなたにとって許せないことでしょうか?」

「当然給金の使い込みは……」

「ルイ君!」

「はい?」

「よく考えてから話そうね」

「い、いや、考えるも何も」

 シュレイはにこやかに話すも、ルイはシュレイが自分に対して強い圧迫感を放ち始めていた事を感じ始めていた。。

「わかったわ、ルイ君。ちょっと突然の話で冷静にいられないようだから、まずは冷静になろう」

「俺はいたって冷静で」

「とりあえず、ほら、かかってきなさい」

シュレンはエプロンをはずして靴を脱いだ。

「は、はい?」

「……ルイ君とやるのは久しぶりね」

「え……」

シュレンが右手を前に出してルイに手招きした。

「頭冷やしてあげるから、かかって来い、って言ってるのよ……」

「ね、姉さん」

テイがふとルイの方を見ると、ルイの顔色が白くなっており、表情がこわばっていた。するとルイが急にシュレンに震えながら頭を下げた。

「あ、あの、よく考えたら、止むを得ないかなって」

テイが驚いてルイを見た

「る、ルイ!」

ルイは頭を下げたまま、焦った顔でテイを横目で見ながら、手を挙げてテイを抑えた。

「テイ、いいから……だから、問題ないと、思います!」

テイが再び深々と頭を下げるルイの肩に手をかけて諭すように話しかけた。

「ルイ、これはよくないだろ……」

しかしルイは激しくテイの手を振り払って叫んだ。

「お前黙ってろよ! これは俺の問題なんだよ! 俺の、命が、かかってるかもしれない問題なんだよ!」

「お、おい」

シュレンは構えを解いて、ニッコリとルイにほほ笑んだ。

「ルイ君はテイと違って冷静な判断ができるのね。ありがとうルイ君」

「あ、はい、もう、行って、いいですか?」

「いいわよ……でも、テイ! あんたは残るの」

「え? なんで」

シュレンは微笑みながら、ゆっくりとテイに歩み寄ってきた。

「あなたは冷静さが足りないわ。それともうひとつ」

「え?」

「あなたにはクンフーが足りないわ」

そう言うとシュレンは素早くテイの後ろ襟首をつかんだ。

「な、なんだそれ」

「久々に修行つけようか? ね」

「やめてよ! 姉さんの修行って、昔からただのいじめじゃないか!」

「なに言ってるのよ。『かわいがり』ってやつじゃない」

「それ、悪い意味だから!」

ルイはシュレンに捕えられた哀れなテイから素早く距離をとり、階段を上っていった。

階段の途中にレピスがいて階下を覗いていた。

「ちょっと、痛い、ごめんなさい、ごめんなさい!」

テイがシュレンに稽古(?)をつけられているのを見てルイが震えながらつぶやいた。

「テイのお姉さん、きれいになったけど、相変わらず技の切れがすげえな」

ルイの言葉を聞いてレピスが尋ねた。

「テイ君のお姉さんって、武術やっているの?」

「子供の頃から東洋武術が得意で、風の噂では確か一昨年頃、この国一番の師範に……」

「え? 師範になったの?」

「いや、国一番の師範にセクハラされて、ボッコボコにして追放したとか」

「じゃあ、テイ君も練習つけてもらって、強くなりそうね?」

「い、いや、アイツあんまりクンフーの素質なかったし、なによりまず……」

「なに?」

「体持つかどうか」

「そうなんだ。がんばって、テイ君」

「いや、そうじゃなくて。レピスさん、正確な状況把握しています?」

「はい?」

「ま、いいです。二階のテイの部屋で待っていましょう」

ルイとレピスは階段を上ってテイの部屋に入った。

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