復活の魔王と三賢者の末裔
復活の魔王と三賢者の末裔
【とりあえず始めに】
今とは別の時間、別の世界でのこと。
かつて世界は魔王ラアピスによって未曾有の危機に晒されたが、三賢者の活躍により魔王は倒され封印された。しかし封印の効果は三百年しかもたず、封印が解ける時、魔王は再び蘇ると伝えられていた。
そのちょうど三百年後。人々は恐怖の年を迎えることとなった。
【そんなわけで復活の年】
薄暗い部屋の中。2人の男が深刻な面持ちで言葉を交えていた。
石で積まれた柱と壁。その壁には大きく立派なタペストリーが何枚も飾られ、赤い絨毯が敷かれた床にはステンドグラスから差し込む、ほのかな彩の光が照らしていた。
豊かな白い髭をたくわえた初老の男は深々と玉座に座って口を開いた。
「我々はいよいよこの年を迎えることになった」
「魔王の復活。それは止める事は誰にもできませぬ」
玉座の傍らで白いローブを着た男が答えた。白いローブを着た男は、玉座に座る威厳のある男と同じ歳くらいだったが、穏やかに言葉を選びながら話す様は対照的であった。
「再び魔王を封印するしかないのだ。我が国を、そしてこの世界の平和を守り続けるために」
「かつて魔王を封印した三賢者。その子孫の家には今でも魔王封印の役を担うことを、密かに伝承させてまいりました」
「ああ、いよいよその時が来たのだ」
「三賢者の血を受け継ぎし者たちは、セントガルド、イストガルド、エストガルドでそれぞれ居を構えてこの時を待っております」
話し込んでいた二人の前に、一人の兵士が部屋の入り口から続く赤い絨毯の上を歩いてきて跪いた。
「失礼いたします。セントガルドの三賢者が子孫、ただ今参上いたしました」
兵の後ろから一人の男が入ってきた。男は十代後半の少年であった。しかしその身なりには普通のものからは感じられない風格が漂っていた。
「失礼いたします」
深く玉座に座っていた男は身を乗り出して手を挙げた。
「おお、来たか、三賢者の末裔の一人よ。名前はなんという」
「テイ。テイ・ポットワイト」
賢者の末裔である少年は、力強く名乗った。