人騒がせなはみ出し者たち
人騒がせなはみ出し者たち
「・・・見付けました。」
深夜の家電量販店の裏口。
怪しげなタイツを着た男達が倉庫から荷物を運び出していた。
その足下には警備員数名が倒れていた。
「わっ!」
「きゃ・・・うぐ・・・はあ、はあ、」
暗がりに潜むものの背後から大きな声が上がった。
息を詰まらせて倒れるのはまだ幼さを残す少女。
「きゃはは、こんな時間に出歩いてのぞき見なんてしてるくせに意外と臆病なのね。」
胸を押さえ動けなくなった地味な服の少女を男達の前に引きずり出す年齢不詳のツインテールのゴスロリ少女(?)。
「みんな~面白いもの見付けた。これでリアルにエロゲーをやってみようよ。おもしろそだよ、きゃはは。」
「・・・あなたたちがそこにあるゲームを改造してゲーマーの魂を取り込んで仲間を増やしているのは分かって、うぐっ!ごほ、ごほっ、はあ、はあ」
「お、おい大丈夫か?」「本気で具合悪そうだぞ?」
「だ、大丈夫です。息継ぎのタイミングを間違えただけです。長くしゃべるのは久しぶりだから、はあはあ。」
「リアルでorz見るのなんて初めてだぜ、おれ。」
「あんたもしかしてあたしなんかよりもっとすごいヒッキーだったんじゃね?」
「・・・起動。」
「は?」
(システム起動開始します)
(~ディスク読み込み中~)
(起動します)
「・・・変身・・・」
突然あたりを白い光が包み込む。
「ちぃ!こっちも起動だ!」
白い光に続き様々な光が舞い散る。
瞬きが収まった時そこは異世界と化していた。
もちろん背景こそ倉庫の前の広めの駐車場ではある。警備員の死体付だが。
まず最初の少女の居た場所には、ポニーテイルを模したレーダーアンテナと青い頭部装甲とゴーグル型のモノアイ、白を基調とした放熱板を兼ねたコート型の外部装甲を備えたロボット。ちなみに下はスパッツぽい黒です。
対するゴスロリはツインテール、胸にハートの飾りの付いたノースリーブに超ミニスカートにロングブーツ姿を模したロボット。下は白い見せパン。
さらに周りにいた男達はぶっちゃけいろいろなゲームに出てきたロボやモブにそっくりな姿をしている。もちろんあの有名格ゲーキャラ達も勢揃い。国籍不明の外人やタイツのプロレスラーっぽいのやら。
「取りあえずこれ以上人が死ぬのは困ります。即刻元の世界にもどって二度と出てこないでください。」
「だ~め。せっかくこっちに来たんだからあんたもそんな堅いこと言わずにみんなでたのしもうよぉ。」
「・・・お話ししてもダメなのね。」
「うん、邪魔するならあんたも消すよ?」
ポニテが魔法使いのような杖を実体化する。ツインテはハート型の頭部のメイスを取り出す。
それを見た取り巻きが爪やミサイルポットやブレスの準備、手持ちの武器を構えて攻撃準備をする。
それぞれ背中にある某ゲーム機そっくりのランドセル型魔力動力炉のアクセスランプをきらめかせる。
「流石ね魔法使いの人工精霊!でも雑魚を全滅させたぐらいでエネルギーを使い果たしていたんじゃあまだまだね。」
「・・・まだ使い果たした、訳じゃない。・・・」
「でもあなたの動き見切らせてもらっちゃった。きゃはは、じゃあこっちからいくよ~」
ボール状の光球が数個まき散らされる。
対抗に雪の手裏剣で迎撃する。さらに氷塊を上空に作り出し真上から落とす。
真上からの攻撃を三日月型のカッターで切り崩し、移動しつつ胸のレーザーで追尾攻撃を放つ。
ギリギリまで引きつけ避けつつ使い魔型の疑似精霊に攻撃させ対消滅させる。
さらに近づいてメイスで攻撃してきたところを目の前に氷壁を作り離れるための時間稼ぎに使う。
が、ジャンプして氷壁の上からビームが襲いかかる。
回避失敗!ダメージが・・・こない?が体が硬直する。
パラライズ攻撃で完全に足が止まってしまった!
いつの間にか正面に回り込んだツインテが主砲のチャージのモーションに入っている。
うごけわたしのからだ!
胸のハートからはじき出された巨大な光球が迫る。
「きゃはは、ほらやっぱりあたしが勝っちゃった。じゃああなたのディスクいただいちゃうね。」
必殺攻撃をまともに食らい吹き飛んだわたしの心臓は止まってしまった。
(心臓の停止を確認)
(AED起動)
(モードアンデット起動)
(心臓の再起動を確認)
「・・・変身・・・くくく」
そのつぶやきを聞いて飛び退るツインテ。
「バカな死んでないの?なんで?」
わたしの生身の心臓はすぐに麻痺を起こしてしまう難病にかかっておりそれに対応するため、AEDを手術で埋め込んであった。
そして電子の精霊と一体化したわたしの中のAEDは更に別の機能を持つに至った。
黒き光があたりを包み込む。
ツインテは反射的にそれに全力の攻撃を仕掛けるが、まったく効いた様子が無い。
光がやんだ時そこには黒衣の死天使が佇んで居た。
「あらあら、とうとう私を殺してしまったのね。ククク、可愛そうだわ・・・今からあなたも死んでしまうのねえ、クククどんな断末魔を聞かせて貰えるかしら、さあ、早くわたしに命の最後のきらめきを見せてよ。」
「ひ!」
「ククク・・・」
「く、来るな!なんなんだよあんた!!」
「そうねえ、最初のひとだと緊張しちゃうか・・・そうだ、先にそっちの狸寝入りの子に手本を見せてもらおっか。」
「な、・・・うがー!ひぎい!」
足下で様子をうかがっていた獣人が突然悶え苦しみ出す。
黒い光に包まれみるみる体が萎んでいき地面を転がる度に体毛が抜け落ち肌がはがれていく、だが血は流れる前に茶色い塵となり飛び去っていく。
カタカタカタ
最後には骨となって転がっていき動きが止まった時点でそれすらも塵となって消え去った。
「ピー!ガガが!ガリッ・・・」
「い、いやだ、しにt・・・が!」
ツインテが慌てて見回す中取り巻きだったモノが枯れ果てあるいはさび付いて塵となって消えていく。
その跡には傷だらけのゲームのディスクが転がっていた。
「後はあなただけね。ククク・・・」
慌てて逃げようとするがすでに両足が氷に囚われて動かない。
・・・いや、捉えているのは白くて黒い燐光を放つ髑髏。
それがいくつも足に噛みつき動きを止めている。
「さあ最後のきらめきを見せて。クククククク・・・・」
全身に髑髏にまといつかれ声を枯らし泣き叫び続けるツインテールのロボットは少しずつ削られるように噛み砕かれていった・・・・
地味な服を着た少女は幾つかのディスクを見ながら悲しそうな顔をする。
「・・・どれも時間が経ちすぎて生き返ることが出来ないのね・・・・」
胸の中から出てきた、少女にしか見えず触れない白い機械仕掛けの妖精が励ますように声を掛ける。
『でも無駄じゃあ無いんだよ!!あなたが頑張ってるから彼等も眠れるようになったんだよ!』
「・・・うん分かってる。だからもっと頑張らなくちゃ。わたしの代わりに死んだ人たちのためにも・・・じゃあみんなお休みなさい。」
バキン!
手にしたディスクがへし折られ、全てが光となって消えていく・・・・・
このキャラはガープス妖魔夜行用に考えたキャラです。
当時、AEDもバーチャルリアリティも一般的ではなかったので入院中にしていたゲームの精として臨死の時に融合して半妖となる設定でした。
もう十年以上の付き合いですが残念なことに彼女の名前を忘れてしまいました。なのであえて名前をつけませんでした。
彼女を形に出来たことである意味満足している部分もあります。
では後編もよろしくお願いします。