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車の中より私へのメッセージ

作者: 明日朝明日
掲載日:2025/11/04

夢を見た。

家族とドライブに行く夢だ。遊園地に行く夢だ。


私は目を覚ました。

隣で妻と娘が眠っている。とても夢とは思えないほどに、鮮明だった。

二人の寝息、カーテン越しの朝日、すべてが現実そのものに思えた。


――まあ、とにかく仕事へ行こう。

二人を起こさぬように支度をし、家を出る。


電車に乗り、会社に着く。仕事をこなす。

そして帰る。家に着く。

二人が私を出迎えてくれる。


一緒にご飯を食べ、風呂に入り、寝る。

いつも通りだ。いつもと同じ日常だ。

二人は幸せそうに眠っている。私も幸せだ。

結婚してからというもの、私は人生で最も幸せを感じていた。


……そしてまた、夢を見た。


車の中。

後部座席に二人が座っている。ナビを見ると、もうすぐ着くらしい。

遊園地まで、あと少し。


目が覚めた。

二日も続けて同じ夢を見るなんて、不思議なこともあるものだ。


朝食を食べながらテレビを見ると、交通事故のニュースが流れていた。

車は大破し、乗っていた人は全員死亡。

「痛ましい事故ですね」とアナウンサーが言う。


心が痛んだ。

昔はこういうニュースを見ても、何も思わなかったのに。

今は違う。家族の話題になると、胸が締めつけられる。

私は年を取ったのだろう。


……しかし、年を取るのも悪くない。

眠る娘を見ながら、そう思った。


そしてまた、夢を見た。

今度は、前よりも遊園地が近い。

ナビの表示には、日付が出ていた。――一週間後。


さすがに三日も同じ夢を見ると、気味が悪い。

妻に話すと、「疲れてるのかもね。気分転換に、遊園地でも行こうか」と言った。


その提案を聞いた瞬間、背筋が冷たくなった。

夢と、同じ言葉だったからだ。


けれど、はしゃぐ娘を見てしまうと、断れなかった。

私たちは行くことにした。


そして、夢を見た。

遊園地が見えてきた。観覧車が、陽光を受けてゆっくり回っている。


――あれ、まさか、これは正夢なのか?


そんなことを考えていると、視界の右端で何かが光った。

トラックだった。


衝撃。

黒い闇。


……目が覚めた。


なんて恐ろしい夢だ。

これは警告かもしれない。

もし本当に正夢なら、遊園地には行かないほうがいい。


そう思ったが、楽しそうに準備をする娘を見て、言えなかった。


そして、当日。

妻と娘が車の前で待っていた。笑っていた。

私も笑い返した。

夢のことは、もう思い出さないようにしよう。


エンジンがかかる音。

車が走り出す。

陽射しが眩しい。


……意識が途切れた。


――目が覚めた。


熱い。

息ができない。

焦げた匂い。


周囲を見渡すと、車が横転していた。

フロントガラスが割れ、火が上がっている。

道路の真ん中で、金属が軋む音。


思い出した。遊園地へ行く途中だった。

そうだ、妻と娘は?


見回すと、炎の中に人影が見えた。

女と、小さな子供。


……もう、動かない。


私は叫んだ。喉が裂けるほど叫んだ。

でも、その声は誰にも届かない。


炎の向こうで、妻が微笑んでいた気がした。

あの夢のときと同じ笑顔で。


そうだ。

そうだった。


夢ではなかった。

夢では、なかったのだ。


こちらが現実だ。

そして――

あの穏やかな日常こそが、私が見ていた夢だったのだ。

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