幼馴染
母も父と過ごした記憶はない。
だが、一人だけいた。
だぶんその人が私にとっての家族なんだろう。
1
あの日からなぜか蓮がキラキラしている。
特殊フィルターかな?
いたって普通の蓮
でもなぜか、蓮に対しての「気持ち」?「認識」?は前とは違うものだと分かった。
「俺、出かけてくる」
「…いってらっしゃい」
蓮は「ここはアンタの家じゃない」と言われると思っていたのだろう。
少し驚いたような顔をした。
「珍しく素直だな」
「…別に」
愛想が悪いように聞こえただろうか。
なぜ私はこんなことを気にしているのか。
わからない
「すぐ帰ってくるから、待ってろよ」
蓮は青年らしい笑顔で出て行った。
おかしい
おかしい
こんなんでドキドキすることなんて
「葵ちゃーん、お客さんよ!」
由紀さんの明るいな声が聞こえる。
いつもはけだるげそうなのに、なぜだろうか。
「やあ、久しぶりだね」
そこには、身長が高く、端正な顔立ちをした青年が立っていた。
「陽兄?」
2
「久しぶりだねー!」
この青年は、青山 陽という。
私にとっての「兄」である。
この明るいところは昔から変わらないな。
「お母さんは?」
「いつも通りだよ。そっちは?」
「いい事がいっぱいあったよ、この前、お母さんとお父さんと行った祭りに行ったんだ」
「一人で行ったの?」
「いや、友達と一緒に」
陽兄の顔が少し曇ったように見えた。
「もしかして、さっきすれ違った男の子?金髪だったみたいだけど」
陽兄は不安げに言った。
「そうかもね」
「あの子、不良かもしれないよ?かかわるのはやめておいた方がー…」
「やだね、あいつ、凄い良いやつだもん。それに、院長さんの子供だよ」
「…そうなの?」
陽兄は驚いていた。
その気持ちは分かる。
あんなに厳しそうな顔の人なのに。
似ていなさすぎる。いや似てるけど
「でも、ここでは安全に暮らしておいて欲しいんだ」
「うん、ありがとう。陽兄は心配性だね。」
陽兄は一緒にいてほっとする。
「俺は葵のことを大切な人だと思ってるよ。」
「私もだよ」
陽兄は私の頭をなでて、用事があるらしく、病院から出て行った。
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3
「あの人って誰?」
あの人?
ああ、陽兄か。
なぜか蓮が少し不機嫌だ
「陽兄?ああ、お隣に住んでた年上の人だけど」
「大切な人って、本当か?」
蓮の顔が曇っていく。
なぜかどんどん不機嫌になっているような…
「まあ。」
「俺は?」
「大切だけど」
「陽って奴と俺、どっちが大切?」
「どっちも」
蓮は少し不機嫌なようだった。
意味が分からない。
「私のことは?」
蓮は暗かった顔を赤く染めた。
「…すき」
「…ん?」
「な、なんでもない!今日はもう帰る!!」
蓮は赤い顔をさらに赤くして出て行った。
『すき』って言ってなかった?
「うそでしょ…」
葵は耳が熱くなっているような気がした。
次回予告↓
二人はあのことがあり、距離が遠くなってしまう。
だが、あることで蓮が葵の病室に泊まることになり…?
陽の気持ちとは!?