少年
少年が窓の奥から出てくる
え、窓って割れるんだ
初めて知った
あ、でもこの音は聞き覚えがある
確か由紀さんが花瓶を割ったときにこんな音がした気がする。
あんときは大変だったなぁ…
そんなことを考えているうちに視界の右側にガラスの破片が入った
ガラスの破片は私の頬の皮を切りながら落ちていった。
痛い。
少年は自分がガラスを割ってしまったという事に気が付いていなかったようで、あわあわとしていた。
そこは普通気が付くと思うが、私は怒られないので何とも思わない。
が、ここは自分が暮らす病院で、幼いころからここにいた私は、ここで働いている人を家族として、そしてここを家だと思っている。
「そこの君。このガラスはどうしてくれるのかな?」
少年は付近に散らばった破片などを見渡した。
「親父に謝りに行く」
「親父~?」
いみがわからない
「ここの院長、俺のオヤジ」
「まじか、ぜんっぜん似てない」
「母親がイギリスの人なんだ」
なるほど、ハーフか
道理でキレイな金髪だ
それに顔も整ってい…
「けが、見せろ」
そうだった
葵の顔に少年の顔が近づいてきた
よく見たらこの人、かなり顔が整っている
心臓の鼓動の速さが少し早くなった気がしたのは、気のせいだろう
「このくらいなら、傷跡は残らない。消毒して、バンソーコでもはれば痛みはすぐ引く。傷跡は残らないはずだ。」
「すごいね」
「ま…まぁ親父の下で少しだけ学んだからな。これくらいできて当たり前だ」
「じゃあ行くか」
少年は不思議そうな顔をした
「なにをだ?」
「私たちの足元に広がっている破片の事だよ」
少年は一人で行こうとしたが、傷を見てもらったので、ついていくことにした
「なんでついてきた」
「共犯だし~それに院長さんにお願いがあったからね」
少年が重々しい扉のドアノブを持った
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「祭り」