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第一章 暴力学園篇


むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。


おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。


おばあさんが川で洗濯をしていると大きな桃が流れてきました。




不穏な雷雲に覆われた空。時折、稲妻が生じている。


荒れ狂う海の中に浮かぶ孤島には、石で切り出された要塞のような建物が見える。

このおどろおどろしい島には、古くから凶暴な鬼たちが住んでおり、人間の村を襲ったり、家畜や若い娘を攫ったり、暴挙の限りを尽くしていた。


人間たちは、そんな鬼たちの恐怖に怯え、夜も眠れない日々を暮らしていたのだ。


鬼の一派を束ねる赤鬼は、その名の通り朱色の身体に大木のような筋骨隆々の体をしており、3mは優に超えるその巨体をしならせ振り下ろすこん棒は、大地を割り、大火をもたらすとも言われていた。残虐非道で傍若無人。


赤鬼と共に一派の首領を務める青鬼は、頭が切れ、冷淡で卑怯者。体長2m弱と赤鬼には体格で劣るが、その藍色の身体は、闇に良くまぎれ、俊敏さを生かした闇討ちを得意としていた。愛用する薙刀による斬撃は、鎌鼬のように鋭利で、切られたことにすら気づかないと言う。



そんな巨悪が巣食うこの世界。


時代の統治者たちは、幾多の討伐隊を編成し鬼退治を試みるが、そのいずれもが帰ってはこなかった。


人では無理だ。鬼が覇権を握る時代に終わりは見えない。誰もがそう思っていた。



()()()()()()()()()()|・・・。



「鬼はいね“えが~」



鬼が寝床にしていた広大な洞窟。


歌舞伎の“にらみ”ような顔つきの漢が、娘を両脇にはべらせ、片膝をつきながらひょうたん酒を豪快に呑んでいる。


漢の結った髪はほどけて肩に垂れ、纏った着物ははだけ、そこから逞しい角ばった筋骨を覗かせる。

身体は汗ばんでおり、所々に血痕のようなものが付着しているなど、戦闘の跡を感じさせる。


漢の周辺は瓦礫にまみれ、無数の鬼の亡骸が転がっていた。

その中には、鬼一派の首領であった青鬼が大の字で岩壁にめり込んでいるのも見える。

もう一人の首領・赤鬼は酒を煽る漢の下で、息絶えていた。


この日、鬼一派は攫った娘に紛れてやってきた、たった一人の漢によって殲滅された。


孤島にそびえる要塞は、無残にも崩れ、その激しい戦闘の規模がうかがい知れる。


命が助かった安堵により涙を流し、漢の肩にもたれる娘たち。

漢は小脇に携えた巾着袋から、白くて丸いものを取り出すと娘たちに向かって、こう言った。


「おめえら、きび団子喰うかあ?」


彼が娘たちの心情をおもんばかって言ったのかどうかは、分からない。


なぜなら、漢は“逆鬼ごっこ”が得意な戦闘狂だからである。



()()退()()()()()()





舞台は【現代・日本】へと移る。



むかし、むかし、ある所に不良と不良が住んでいました。


不良は学校へ喧嘩に、もう一人の不良も学校へ喧嘩に行きました。


不良達が校内で派閥争いをしていると、大きな桃が運動場に落ちてきました。




ここは不良達が日夜、派閥争いを繰り返す童蘭高校。


校則も規律も、もはや形骸と化し、強さこそが偏差値。近年では、その悪名が広く轟き、他校との勢力抗争も激化。暴力団や半グレとの繋がりも噂されるなど、悪事に関しては全国屈指の強豪校。

”童蘭を制する者は、裏社会を背負って立つ”とも言われている。


突如、グラウンドに出現した桃の登場により、それまで校内覇権争いを繰り返していた不良達の動きが止まった。

静けさと無縁のこの学園を、静寂が包む。ほとんどの不良の視線はグラウンドにくぎ付けだ。


屋上で桃を見下ろすのは、不良の幹部グループたち。

学ランの下に黒パーカーを着込み、フードを深く被った男がつぶやく。


「もも?」


グラウンドに隣接する体育館。その入り口階段に座る大柄の男が桃を見つめている。

長髪にパーマを当て、緩やかにカールするその前髪は男の目を隠し、白Yシャツをまくった両腕は、およそ高校生には見えないほど太い。


来た来た来たあーー!!と言って教室を飛び出して行ったのは、童蘭高校2年・犬堂。



異物排除に特化する不良達のセンサーは、桃をすぐに異物とみなした。

ぞろぞろと金属バットや木刀を携え、グラウンドに現れる不良達。

なぜか桃に対しても、がんをつけているのは、喧嘩馴れした彼らの本能によるものか?


その時、桃の中心を縦に走る柔和な窪みに亀裂が入った。

ミリミリミリ、と果実の繊維質がゆっくりと裂けていく。


刹那。


グラウンドに大きなつむじ風が発生し、不良が巻き起こった砂埃によりたじろいだ瞬間、桃の果肉が一気に真っ二つに割れた。

急激な裂傷に耐えられなかった果汁が、激しく吹き出し砂嵐と入り交じって霧になり、桃を隠した。


「え、甘っ」


桃の果汁を顔に受けた不良が言った。桃を隠していた果汁の水蒸気と砂埃が少しずつ晴れていく。


徐々に露わになる桃の中身。


うっすら見えて来たのは、180㎝強ほどの筋骨隆々の上半身。

顔には、狂気を孕んだような表情を張り付けている。恐らく笑っている。

黒い長髪をまげの様に頭部のてっぺんで結んでいるのが分かる。下半身は・・・。


霧が晴れる。


・・・ふ、ふんどし!!?。そして、仁王立ちである!!


そう、現れたのはふんどし一丁姿でニヤつく、もも太郎であった。

その異様な光景に不良は、硬直と戦慄に支配された。


「へ、変態だ・・・」


この場に立ち会った誰もが、そう思った。


()()退()()()()()()



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