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鳥のタキちゃんから唄田へ
ウタタ ネタロウというのである。
玄関の扉を開ければ妻や二人の子どもたちは、すでに朝食を済ませていた。吹雪の中、ようやく哲学新聞を配り終えて、冷えきった体を暖房の前に投げ出し、北の方角にかすかに見える標高2437メートルの鷲鷲山に願いを立てる。
デカルトの呪文は…あの山の中腹に固くしまってきたはずだが…
それにしても今年は春が遅い。そろそろ渡り鳥のタキちゃんが山から下りてきて、私の庭で2日ばかり羽を休めて、水浴びなどさえ、楽しげに、わずかな名残惜しさを残して、鷲鷲山の向こうへと去ってゆくのである。
昨年の夏に私と妻の薄っぺらな同情をかった猫はまだ生きているのだ。