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長月 コスモス




 小さな立ち耳で巻き尾、二重構造になっている短毛で短足、四足歩行の愛くるしく小さな動物である犬。

 どうも、きなこもちみたいな豆柴でっす。


 彼女を笑顔にできるような花の手渡し方をすればこの輪廻転生から解かれるのでは。

 と、気づいた俺は早速生まれ変わると同時に。

 となればいいのだが、ある程度成長しないと思い出せない仕組みになっているようなので、思い出したら即、花を捕獲して、彼女を探す一歩を踏み出そうとした。

 ら。

 大きな邸で飼われていた俺は、そこの主らしき彼女に即遭遇。


 さすがは花を手渡し、手渡される運命にある俺たち。

 思い出してからの出会いは速攻です。


 大きな邸の庭に咲いている桃色のコスモスを根元から掘っては横に咥えた俺は、一人で車椅子に座って庭を散策している彼女の周りをくるくる走りながら、時に愛嬌よく転がって、真正面に座り、コスモスを受け取ってくださいなと言わんばかりに、首を傾げた。

 全身真っ白だった彼女は上半身を少し乗り出して俺からすんなりとコスモスを受け取った。


 よっしゃあ!

 これにてお役御免だ。

 俺のことも彼女のことも何一つ思い出せていないので、寂しいと言えば寂しいが、前回前々回と、ろくでもない死に方ばっかりだったからな。

 もういいや!


 俺は爛々とした瞳でせめて彼女の笑顔を焼きつけようとしたの、だが。


 まあ。なんてことでしょう。

 晴天に似つかわしくないどんよりとした表情で、恋占いよろしく、はなびらを千切っているではないですか。

 まあ微笑ましい。

 いくつになっても恋は陥ってしまうものなのですね。


 なんて、ほっかり胸が温かくなればいいのですが。


 彼女が口から呪詛のように発するのは二言。

 柔らかくておいしいものか、硬くてまずいものか。


 うーん、なんでしょう。

 ご飯占いでしょうか。


 そんなに怖い顔をして。

 そんなにこの邸のご飯に不満があるのでしょうか。


「硬くてまずい、か」


 最後のはなびらを持って意気消沈した彼女の姿を目に焼きついては死にたくない。

 衝動的に思った俺は駆け走って前脚で掘って咥えてコスモスを彼女に渡せば、彼女はまたご飯占いをすべくはなびらを千切ります。


 何度も何度も、何度も何度も。

 俺は必死になって彼女にコスモスを渡し続けて。


 気がつけば寿命を迎えていました。




 彼女の笑顔はついぞ拝めませんでした。









(2021.12.7)




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