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93.ショタワンコの出番だ

第6章完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 固有魔法【チェンジ】によって、ノーモーションで瞬間移動するように見せるキーファの魔法。

 会場の砂埃が舞い上がり、光が剣の刃を反射する中、観客たちはその速さを目で追うことすら困難だった。


 カラクリを見抜いたところで対処は難しいはずだが、テンテンはコツを掴んだという。


「コツを掴んだとは驚きだ!まぐれじゃないこと証明してみせろ!」


「望むところアル」


 シュン!


 次の瞬間、テンテンの背後にキーファが現れ、剣を振り下ろす。


 ゲシ!!


「がほっ!?」


 頬を軽く斬られるも、テンテンは剣を紙一重で避け、後ろ蹴りがキーファの顔面を直撃。砂煙と歓声が舞う中、キーファが一瞬ひるむ。


 だが、シュン!


 今度はテンテンの前に現れ、体勢を整え剣を振り下ろすキーファ。


「八極気功拳【川掌(せんしょう)】!!」


 ズドーン!!


 テンテンの掌底がキーファの腹に直撃する。大地が揺れ、砂埃が渦を巻く。


「がは!!!」


 固有魔法【チェンジ】の移動位置を完全に捉えたテンテン。観客は二人の高速攻防に目を奪われ、息を呑む。


 キーファは距離を取り、笑いながらも動揺を隠せない。


「おいおい! いったいどうなってんだ!?」


「お前の魔法の仕組みはわからないアルが、【気】を追えば現れる場所が何となくわかるアル」


 全ての生物に存在する生体エネルギー──【気】を感知することで、目に見えない敵や遠距離の敵を察知できる。テンテンは自身の【気】を練り上げ、防御と攻撃に利用する。


「消える直前に一瞬だけ【気】の流れがこちらに向かっていくのがわかったアル! 何度かやればだいたいわかるようになったネ!」


 わずか数回のやり取りで、固有魔法【チェンジ】への対抗策を編み出したテンテン。砂塵舞う会場にその存在感が際立つ。


「はーーはっはっは!!それでこそ共にジェネラルベヒーモスを倒した強者だ!!それなら一気に攻め立ててやるぞ!!」


 剣一本で構えるキーファ。


「さぁ! かかって来るアル!!」


 ズガガガガガガガガ!!!!!!!!


 再び激しい攻防戦が繰り広げられる。砂煙が渦巻き、衝撃で会場の床が微かにひび割れる。


 キーファは【チェンジ】で翻弄しようとするが、テンテンは鋭く攻撃を読み切る。剣を振り下ろすも、テンテンの巧みな回避と反撃が続く。


「八極気功拳【鉄山靠(てつざんこう)】」


 ズドン!!!


 テンテンは膝を軽く曲げ並足を揃え、地面を破壊するほどの踏み込みで背中に力を乗せ、下方向に体当たりを繰り出す。


「ぐほあ!!!」


 キーファは耐えるも、反撃のエルボーでテンテンに応戦。


「ぐ!?」


 ヒザをつくテンテン。しかし次の瞬間、踏み込みによって会場の床にヒビが入り、砂塵が舞い上がる。


「八極気功拳【超発勁(ちょうはっけい)】!!」


 ズドン!!!!!!!


 練り上げた【気】を掌底に込め、キーファの顎を直撃。観客の歓声が会場に響き渡る。


「が…」


 キーファは白目を向き宙に舞う。誰もが倒れると思ったその瞬間、身体をひねり剣で反撃し、テンテンに致命傷を与える。


「な…!?」


 ドサッ


 ドサッ


 二人は同時に倒れ込み、会場は驚愕の声に包まれた。



「なーーーーんと!?!?!?ダブルノックアウト!!!」


 二人は転送され、会場外に追い出される。体力や魔力、【気】の消耗はあるが無傷だ。


 「く~悔しいアル!」


 あと一歩で勝てそうだったのに、思わぬ反撃を受けて悔しがるテンテン。


「はーっはっはっは!! まさか俺の固有魔法の対策をこんな短時間で思いつくとはな!!」


 ブレイブハート側のキーファは、勝利を逃した悔しさを露わにせず、冷静な表情を見せる。


「よくやったよ。素晴らしい戦いだった」


 ブレイブハート主将【レオン・スティーブ】はキーファを称賛する。


「次はうちの副将の出番だ」


 黒い鎧に包まれた大柄な男。顔は鎧で隠れ、武器は巨大な斧。


 黒騎士【マート・フォーガス】。無口で、その声を聞いたことがあるのはレオンとギルドマスター【デューイ・スターク】のみ。


 ジェネラルベヒーモス戦の際は別の任務で不在だったが、その実力は確かだ。パワーとスピード、驚異的な身体能力を誇る。


「マートは次のS級冒険者試験を突破するほど期待されている。つまり、現時点でもS級に匹敵する力を持っているということだ」


 次の試合が始まる。


 ブレイブハート副将:黒騎士【マート・フォーガス】

 VS

 ルミネスゲート大将:ショタワンコ【ウェル・ベルク】


 A+2の冒険者同士の戦いだ。会場は息を呑み、砂煙が舞い、観客席からの歓声が渦巻く。


「はーっはっはっは!!A+2の冒険者同士ならいい勝負!いや、S級冒険者に近いマートの勝利か!?」


 キーファはマートの勝利を確信しているようだ。


「……そうだといいね…」


 意味深に呟くレオン。


「さぁ! まもなく試合が始まります!もう後がないルミネスゲート!大将ウェル・ベルクはどのような戦いを見せてくれるのか!?」


「うぉぉぉぉおおおおお!!!!!」


 会場全体が歓声の渦に包まれる。


「始め!!!!!!!!」


 ズシン!!!!


 ビュン!!


 マートは身長250cm、黒い鎧に包まれ、巨大な斧を振るう。図体に反して動きは俊敏で、あっという間に距離を詰める。


「は、速いアル!!」


 巨大な斧が振り下ろされる。


「はっ!!」


 カキン!!!


 俺は斧を受け流し、同時に


「ラーニング3つ同時発動!!」


 マートの懐に入り触れる。


「【炎雷発勁】!!!」


 ズドーーーン!!!


 炎と雷が鎧を貫通し、背中まで到達。衝撃で闘技場の外壁の一部が微かに揺れる。


 一瞬で決着がつき、マートは倒れ込んだ。


 砂塵舞う闘技場に、静寂と歓声が混じり合う光景が広がった。

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