83.子爵の令嬢で準精霊の少女
第5章完結まで連続投稿します!
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
俺の新技【聖霊獣剛剣】によって、結界は粉々に砕け、少女の霊ごと【エビルスピリット】を真っ二つにした。
「ウェル! その子と一緒に斬ったアルか!?」
「何もそこまでしなくても…」
既に命を失っている少女。ある意味、これも【除霊】の一環だ。
【エビルスピリット】を倒すには、少女から切り離すか、少女ごと倒すかの二択しかない。
ウェルは、少女も斬ってしまったのか……。
「ああああああああぁぁぁ!!!!」
その瞬間、半身になった少女の霊は【エビルスピリット】と少女の二つに分裂した。
「ぐうううう!! くそ!!!! よくもよくもよくもよくも!!!」
完全にキレた【エビルスピリット】は再び少女を取り憑こうと暴れだす。だが、この好機を俺たちは逃さなかった。
「今ですわよ、ディアーナ! 【ホーリーアロー】!!!」
【ディアーナ】は弓を引き、光の矢を放つ。矢は宙間で輝きを放ち、【エビルスピリット】の中心を貫いた。
「ギャアアアアア!!!!!!!」
黒い霊力が光に呑まれ、【エビルスピリット】はチリとなって散っていった。
「やったアル! でもウェルは少女の霊も倒したんじゃないアルか?」
躊躇なく少女を縦に真っ二つにした俺の行動に疑問を抱くのは、テンちゃんだけではない。
エリスお嬢様も眉をひそめ、言葉を選びながら聞こうとしていた。
「実は女の子と【エビルスピリット】は、完全に同化していたわけじゃなかったのです」
「どういうことなのじゃ?」
さらに謎が深まる二人。
「わたくしも気づきましたわ! 【エビルスピリット】はその子に光属性の魔法を使わせていたため、完全に一つにはなっていませんでしたの!」
光属性の魔法を扱うことで、悪霊の禍々しい力と少女の霊が分断されていたのだ。俺はそれを見抜き、光属性の剣で両断すれば分離できると考えた。
「それができるなんて流石ですわ! わたくしでも何年もかかったと言うのに…」
ちょっと霊力が扱える程度では、この芸当は到底無理だ。
ラーニングをベースにして発動させた俺の技が、結果として繋がったのだろう。
「さて、倒れているその霊に聞いてみるかのう」
俺たちが話していると、少女は突然柔らかな光を放った。
「な、なんだ!?」
俺は思わず後ずさる。
「こ、この子は幽霊ではありません! 準精霊ですわ!」
精霊――生まれながらにして肉体を持たず、魂のみで生きる存在。
稀に、高い魔力と清らかな心、強い信念を持つ霊は準精霊として生まれ変わることがある。
少女はその段階にあった。
宙に軽く浮かび、少女――準精霊は柔らかな声で話し出す。
「皆様、助けて下さりありがとうございます」
「私はキャリー・マーロー。子爵の令嬢で【アリストクラキー】の一人でした」
「子爵!? ってことは貴族!? それにアリストクラキー!?」
俺は唐突に飛び込んでくる重要単語の連続に戸惑う。
「いや、屋敷に住んでおるなら貴族かと思っておったぞ」
確かに、納得だ。
「キャリーもエリスとリーズと同じように【アリストクラキー】を持っていたアル?」
【アリストクラキー】――七人の令嬢が持つ鍵。
七人が願えば神が現れ世界を平和に導き、七人が死すれば悪魔が現れ世界を終末へ導くという伝承がある。
その鍵を持つのはエリスお嬢様とリーズ。残る五人は不明だったが、目の前にその一人がいることになる。
「はい、持っていました。しかし、私は十年前に殺されてカギを失ったのです」
エリスお嬢様もリーズも、俺がいなければ殺されていたかもしれない。
その事実を突きつけられ、俺は歯を食いしばる。
「…一体誰に殺されたの?」
「闇ギルド【ナハト】の手の者でした」
やはり……闇ギルド【ナハト】。令嬢を狙う暗殺ギルドだ。
十年前に既に行動していたということになる。
「この事実を誰かに届けるまでは消える訳にはいません。そんな想いでこの世に留まっておりました」
「それほど強い信念と魔力を持っておったから、魔物にならずに準精霊となったわけじゃな……霊法ではなく魔法が使えたのは、この世に留まりたいという意志が反映したということかのう」
準精霊は霊であるため、通常は霊力しか扱えない。だがキャリーは特別に魔力が高く、魔法を行使できたのだ。
「はい、それで私は準精霊となって屋敷を守っていましたが、【エビルスピリット】に取り憑かれてしまいました」
強い力に惹かれる【エビルスピリット】。準精霊であるキャリーは、絶好の“ご馳走”だったのだ。
「キャリーはこれからどうするアル?」
元に戻り、想いを伝えることができたキャリーは――これからどんな道を歩むのか。
光に包まれた彼女の瞳は、希望と決意に満ちていた。
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