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74.ブレイブハートのギルドマスター

第5章完結まで連続投稿します!

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

「ちょちょちょちょちょ!?!?!?!?」


 驚きすぎて言葉が出ない受付嬢のお姉さん。

 ギルドの喧騒が一瞬にして静まり返る。

 目の前に並ぶのは、危険度Sランクの魔物【ジェネラルベヒーモス】の巨大な亡骸。その圧倒的な存在感は、まるで小山が広間に現れたかのようだった。

 しかも、それを少年が希少な魔法【アイテムボックス】から取り出したというのだから、冒険者たちも受付嬢も目を疑うしかない。


「まだまだたくさんありますのでもっと大きい広場に案内してください!」


 ジェネラルベヒーモス三体だけで、ギルドの大広間はほとんど埋め尽くされていた。


「ま…まだあるの…?」


 震える声で呟く受付嬢アリエル。目は泳ぎ、耳の長いエルフ特有の白い頬が青ざめていく。



 すると——



「ただいまー!」

「クエスト完了だ!」

「っておいおい! こんなとこに魔物の死体を出すなって!」


 タイミング悪く、ブレイブハートの冒険者たちが帰還してきた。扉が開くたび、冷たい風とともに新たな視線が注がれる。


「すみません! 面識がない上に子供だから信じてもらえなくて…」


 俺は信じてもらうために説明する。魔法【アイテムボックス】からジェネラルベヒーモスを取り出したことを。


「アリエル…この子の言っていることは本当だ。だからもっと広い場所に案内してくれ」


 低く落ち着いた声が場の空気を変えた。

 S級冒険者でブレイブハートのエース、氷剣の貴公子【レオン・スティーブ】が、受付嬢アリエルにそう言ったのだ。


「わ、分かりましたー!」


 さすがS級冒険者。言葉ひとつで周囲が動く。

 そして俺は、ギルド最大の訓練場へと案内された。




「【アイテムボックス】!」


 俺は異空間を開き、次々と魔物の死体を解き放つ。

 300を超える魔物が轟音とともに地面を揺らし、砂煙が立ちこめる。

 その光景に、冒険者たちは言葉を失った。


「これで全部です!」


 アリエルさんは完全に固まっていた。唖然としたまま、目だけが動いている。


「これはこれは…すごいものを見せてもらいました」


 背後から落ち着いた声が聞こえた。振り返ると、細身で上品な中年の男が立っていた。

 その目は笑っていないが、どこか知的な光を宿している。


「あなたは?」


 俺は男に問いかける。


「おっと、これは失礼。私はブレイブハートのギルドマスター【デューイ・スターク】と申します」


 なんと、ギルドマスター本人!


「お初にお目にかかります。俺はウェル・ベルク。【ルミネスゲート】で冒険者をやっております」


 俺は深く一礼した。


「子どもながら、ここまでしっかりしている冒険者は初めて会いましたよ。そして君がウェルくんか…ウワサには聞いているよ」


 ブルガンリルム王国最大規模のギルドマスターに名前を知られているなんて、光栄というほかない。


「どうです? ウチに来ませんか?」


 まさかの勧誘!?


「い、いえ! 今の冒険者ギルドは気に入っていますので!」


 おっさんの頃は嫌な思い出しかないが、今のギルドマスター【ゲルド】さんにはお世話になっている。移籍する理由なんてない。


「そうですか…それは残念」


 デューイさんはため息をついたが、すぐに笑みを浮かべる。


「あの筋肉ダルマ…ゲルドが君のことをめちゃくちゃ自慢してきて、本当にウザったいのでぶん殴ってやりたく…おっと失礼しました」


 物騒な発言!?

 というか、俺のウワサってゲルドさん発信なのか!?

 あっ…口止めしてなかった!


 そのとき、レオンが俺の耳元に囁く。


「実はうちのギルドマスターと君のギルドマスターは昔から犬猿の仲でね。いつも張り合っているんだ」


「な、なるほど…それで」


 つまり、俺を引き抜いて自慢してやろうというわけか。


「それに、私個人としては【ルミネスゲート】で活躍してほしいと思っているんだ」


「? というと?」


「来週、ブルガンリルム王国の【ギルドバトル】があるんだ。君とも戦ってみたいんでね」


 ブルガンリルム王国の【ギルドバトル】——もうそんな時期か。

 おっさんの頃は観戦するだけで、参加するなんて思ってもいなかった。

 今の実力を試すには、ちょうどいい機会だ。



 この国には八つの冒険者ギルドが存在し、ルミネスゲートはいつも四位。ブレイブハートは常に一位の座を守っている。


「実はゲルドさん、『今年はウェルくんがいるから優勝だ!』とか言ってデューイさんに自慢していたとか…」


 とばっちりにもほどがある! それ、もはや宣戦布告じゃないか!


「というわけで、負けないよ。ウェルくん」


 S級冒険者の眼光が鋭く光る。無名の俺でも名前を覚えられていた理由がようやく分かった。


「お、お手柔らかに…!」


 S級冒険者との直接バトル。

 いくら強くなったとはいえ、対人戦経験の浅い俺には緊張が走る。


「さて、これだけ大量の魔物だ。査定には時間がかかる。君はどこかで休んで、明日また来るといい」


 気づけば、アリエルさんのほかにも数人の査定員が集まっていた。机には帳簿、天秤、魔力測定具がずらりと並ぶ。


「わかりました。ではお先失礼します」


 俺は一礼し、訓練場を後にした。

 夕暮れの風が涼しく、街の灯りが揺れ始めている。


 そして——


 俺はエリスお嬢様たちのもとへ戻るのであった。


 次の日。


 とてつもない騒動が起きるとは知らずに。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


と思ったら


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