606.この悪魔は人間だった
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
ルシファーはゆっくりと頷き、暗い影が差す。その視線は、遠く過去を見据えているかのようだ。
「その後、ラルスとラプラスは、しばらく悪魔の制作を中止した。しかし――最初の例外が現れた」
ルシファーの声が、封印の間に低く響く。
俺たちは息を呑んだ。
「ラプラスに救いを求めた最初の人間――自ら人体実験を申し出た者がいたのだ」
「ラプラスに救い? 《最初の》ってことは、もしかしてその人間が、宗教団体の第一人者ってことか?」
「そうだ。その人間が《ピエール》だ」
「な、なんだって!?」
俺たちは驚いた。
「ピエールって元々人間だったアルか!?」
「それなら人間が魔物になったということでござるか!?」
「人間は死ぬとアンデッドになることもありますが、生きたまま魔物になることは初めて聞きましたわ」
「あ、あたしは精霊になったけどね~」
テンちゃん、サヤ、リーズが驚愕する。レナは、気の抜けた語尾であるが驚いている様子だ。
すると、後を追うように驚きと恐怖が混ざった瞳でココさんが答える。
「…元々人間であったのに、あの人間への見下しよう。それほどまでに、人間に対して絶望していたのかもしれません」
初めて会った時のピエールは、人間を殺すことをまったく躊躇うことがない。
そんなピエールが人間であり、悪魔になった経緯を考えると、どんな過去があったのか気になった。
「そうじゃとしても、殺戮は許されるものじゃないのじゃ!」
エリスお嬢様が拳を握り、強い声をあげる。
「話を続けるぞ」
ルシファーは静かに頷き、言葉を紡ぐ。
「ピエールへのDNA埋め込み実験は成功した。彼は驚異的な力を得て、第一級使徒となったのだ」
ルシファーの言葉で、俺たちの目の前の現実が、信じがたいほど重く圧し掛かる。
「そして、この成功例を基に、ラルスとラプラスは次々と、生物を媒介せずに《無から》悪魔を作り出した」
ラプラスの悪魔――今まで戦ってきたあの凶悪な魔物たち。
その起源に、こんな真実があったなんて。
そして思い返す。最初に俺たちが遭遇した、あの冷徹なラプラスの悪魔第一級使徒――ピエール。
まさかあいつが、かつて血の通った人間だったなんて……。
空気が凍りつく。封印の間に、古の魔法の気配と、過去の罪の影が混ざり合う。
俺たちはただ立ち尽くし、その重みを噛み締めるしかなかった。
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