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606/620

606.この悪魔は人間だった

追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!

 ルシファーはゆっくりと頷き、暗い影が差す。その視線は、遠く過去を見据えているかのようだ。


「その後、ラルスとラプラスは、しばらく悪魔の制作を中止した。しかし――最初の例外が現れた」


 ルシファーの声が、封印の間に低く響く。

 俺たちは息を呑んだ。


「ラプラスに救いを求めた最初の人間――自ら人体実験を申し出た者がいたのだ」


「ラプラスに救い? 《最初の》ってことは、もしかしてその人間が、宗教団体の第一人者ってことか?」


「そうだ。その人間が《ピエール》だ」


「な、なんだって!?」


 俺たちは驚いた。


「ピエールって元々人間だったアルか!?」


「それなら人間が魔物になったということでござるか!?」


「人間は死ぬとアンデッドになることもありますが、生きたまま魔物になることは初めて聞きましたわ」


「あ、あたしは精霊になったけどね~」


 テンちゃん、サヤ、リーズが驚愕する。レナは、気の抜けた語尾であるが驚いている様子だ。

 すると、後を追うように驚きと恐怖が混ざった瞳でココさんが答える。


「…元々人間であったのに、あの人間への見下しよう。それほどまでに、人間に対して絶望していたのかもしれません」


 初めて会った時のピエールは、人間を殺すことをまったく躊躇うことがない。


 そんなピエールが人間であり、悪魔になった経緯を考えると、どんな過去があったのか気になった。


「そうじゃとしても、殺戮は許されるものじゃないのじゃ!」


 エリスお嬢様が拳を握り、強い声をあげる。


「話を続けるぞ」


 ルシファーは静かに頷き、言葉を紡ぐ。


「ピエールへのDNA埋め込み実験は成功した。彼は驚異的な力を得て、第一級使徒となったのだ」


 ルシファーの言葉で、俺たちの目の前の現実が、信じがたいほど重く圧し掛かる。


「そして、この成功例を基に、ラルスとラプラスは次々と、生物を媒介せずに《無から》悪魔を作り出した」


 ラプラスの悪魔――今まで戦ってきたあの凶悪な魔物たち。

 その起源に、こんな真実があったなんて。


 そして思い返す。最初に俺たちが遭遇した、あの冷徹なラプラスの悪魔第一級使徒――ピエール。

 まさかあいつが、かつて血の通った人間だったなんて……。


 空気が凍りつく。封印の間に、古の魔法の気配と、過去の罪の影が混ざり合う。

 俺たちはただ立ち尽くし、その重みを噛み締めるしかなかった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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