603.異世界転生者であることを話した
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
エリスお嬢様は、わずかに視線を落とした。
その横顔は静かではあるが、何か覚悟を決めた顔をしていた。
「……そうじゃのう。もう、隠す理由はないのじゃ」
エリスお嬢様の言葉を聞いた俺は、小さく息を吸い、一歩前へ出る。
その仕草一つで、空気が張りつめた。
「俺とエリスお嬢様は……“この世界の人間”じゃないんだ」
「……っ!」
テンちゃんの耳がぴんと立ち、サヤが表情を固める。
リーズは信じられないというように口を押えた。
普段クールなココさんでさえも、驚きを隠せないでいる。
「別の世界から、呼ばれたのじゃ。この“神”と呼ばれる存在によって――」
静寂。
その言葉が、石造りの封印の間を震わせた。
「別の世界…そんなものが本当にあるでござるか!?」
サヤだけでなく、みんなが驚き疑問に思う。
「そうだな…俺とエリスお嬢様の世界は…」
俺はみんなに異世界…地球、故郷の話をした。
日本という国があり、割と平和で娯楽が豊富であること。
昔の日本は、サヤの故郷の《鎖ノ国》みたいだということ。
魔法はおとぎ話で、科学が発達しているということ。
俺は会社で働いていた36歳だったこと。
エリスお嬢様は、元の世界でもお嬢様であったこと。
リチャードも異世界転生者で、ジャックザリッパーという人間であったこと。
「ここまでにするのじゃウェル…これ以上はキリがないのじゃ」
「…そうですね」
確かに話し出したらキリがない。エリスお嬢様の言う通りここまでにしよう。
「なんだか…ウェルたちの世界は楽しそうアル!」
「そうですわね! ぜひ行ってみたいですわ!」
「日本の侍にも会ってみたいでござるな!」
いや、侍はいないから!
「とはいえ帰り方はわからないから難しいなぁ」
リーズが少しだけ俯きながら、静かに尋ねた。
「ウェル……帰れなくて、さみしくありませんの?」
その問いに、俺は少しだけ考えてから、ゆっくりと口を開く。
「うーん……両親はもうとっくに他界しているからなぁ。元の世界に帰っても、俺の居場所なんてないんだ」
みんなが驚きと心配が入り交じったような視線を俺に送る。
けれど、その目の奥にはほんの少しだけ、懐かしさが滲んでいた。
「それに――この世界には、俺を必要としてくれる仲間がいる。……だから、たとえ帰る方法が見つかったとしても、俺はここに残るよ」
その言葉に、空気が揺れた。
リーズが両手を胸に当て、唇を震わせる。
テンちゃんは目を丸くしてから、耳を垂らし、涙をこぼした。
「ウェル殿……感動したでござる!!」
サヤが小さく鼻をすすりながら、目元をぬぐった。
「うぅ……ウェル、ずるいアル……そんなの泣くに決まってるアルよ……!」
テンちゃんがぐしぐしと袖で涙を拭う。
「ふふっ……ウェル様らしいですわね」
リーズが涙をこぼしながら、微笑んだ。
エリスお嬢様も静かに目を閉じ、微笑を浮かべる。
「……妾も同じ気持ちじゃ。妾にはウェルが必要じゃ。
それに、この世界を救うためには、お主が欠かせぬ」
「……ありがとう、エリスお嬢様」
「二人とも…私はずっと傍にいますよ」
この中で1番長い付き合いのあるのはココさん。いろんな気持ちが混ざりあって出た言葉だろう。
その瞬間、封印の間を満たしていた冷たい空気が、少しだけ柔らかくなった。
元の世界に帰りたいと思ったことは最初だけ。
俺は異世界転生して3年の間に“帰る場所”ではなく、“共に生きる場所”を見つけた。
――もう、帰れなくても構わない。
俺は、この世界と、この仲間たちと、最後まで歩いていく。
封印の間に、静かな光が満ちていく。
この瞬間、俺たちは“仲間”になったのだ。
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