596.空の島には闇ギルドも来ていた
追放ざまぁが読めるのは10.11話と20〜30話です!
恐らく、こういう時に一番年上の俺が出るべきなんだろう。
俺は、しゅんと肩を落として座り込むテンちゃんとサヤの肩を、軽くポンと叩いた。
「なぁ、二人とも。そんな暗くなるなって。戦いってのは、負けることだってあるんだぞ?」
テンちゃんは半ば泣きそうな顔で、潤んだ目をギロッと向けてくる。
「……でも、ウェル! アタシたち、あんな簡単に瞬殺されるなんて…!」
「わかるわかる。でもな、あんなバケモノ相手に真正面から立ち向かえただけで、もう十分すごいんだって。それに、まだ生きているんだから、それでいいじゃないか!」
サヤは俯いたまま、小さく鼻をすすった。
やがて顔を上げると、まだ少し赤い目で俺を見つめる。
「……ウェル殿……確かに、いつまでも俯いてはいられぬでござるな!」
その目には、さっきまでなかった光が宿っていた。
「ふふっ……ウェルに慰められるって、なんか変な気分アルな」
テンちゃんの口元にも、わずかな笑みが戻る。
そういや俺が女の子を励ますなんて、これが初めてかもしれない。
……この世界に来てから、だいぶ女の子と話すことが増えたから慣れてきたみたいだな。
「次は負けないように、もっと修行だな!」
俺が軽く笑って言うと、二人の表情はようやくほぐれ、部屋の隅で冷え切っていた空気が、少しずつ温もりを取り戻していった。
「……ウェル殿、礼を言うでござる…」
「……ちょっと元気出てきたアル…」
その言葉に、俺は心の中でほっと息をつく。
これでまた前に進める。
次は負けないぞ!
そんな俺たちのやり取りを見ていたリュシエルが、一歩前に出た。
部屋の空気が、再びぴんと張りつめる。
「さて……皆さんも落ち着いたようなので、お話いたしますね」
彼女の澄んだ声が響く。
「私も……アリストクラキーの令嬢なんです」
その瞬間、全員の視線が一斉にリュシエルへ向いた。
エリスお嬢様も、ココさんも、リーズも、レナも、テンちゃんも、サヤも――
まるで時間が止まったかのように、目を大きく見開いている。
「……え、ええっ!?」
「な、なんだって……!?」
驚きに息を呑む俺たちを前に、リュシエルは静かに微笑む。
そのまま視線を窓の外――空の海に浮かぶ雲の流れへと向けた。
背中からは、淡い哀愁が滲み出ている。
「私は、この空の島の近くにある街を統治する家に生まれました。
と言っても街はひとつだけですので、爵位はありませんが……」
その言葉に、空気がわずかに重く震える。
そして、リュシエルは淡々と続けた。
「……実は、この島には闇ギルド《ナハト》も来ていました」
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